ひとりぼっちの不思議な夢 「乃利武」
岡山県にある老舗旅館、苫田温泉乃利武(とまだおんせんのりたけ)を探訪しました。

岡山駅から送迎バスに乗り込みます。
バスの側面には「お芝居と舞踊ショー」「ノリタケハワイアンプール」などの宣伝文句。
この日は7月初旬の平日でした。
送迎バスに乗ったのは私一人。この時期はお客さんが少ないのだろうかと運転手さんに訊ねると、農繁期にもあたるのでお客さんは少ないとの答え。

自家用車もなく送迎バスも利用しないのであれば路線バスに頼ることになります。ここが最寄のバス停「二軒茶屋」
ご覧のとおり市街から離れだいぶのどかな場所です。
目的地へはここからしばらく山道を歩くことになります。

着きました。ここが乃利武。でも老舗旅館と聞いて予想していた風情と違います。旅館というより「科学特捜隊本部」といったものを連想させる建物のつくり。

これとか

これとか

この施設の全貌を知りたくなった私は、近くの高台に上がりました。
右下の家屋は民家で、その奥の緑豊かな山の懐に抱かれた建造物群すべてが乃利武です。こんなに大きな施設だったとは。特撮映画に使われる巨大な科学基地のジオラマセットを見ているかのようだ。

施設外観からは「近未来的」な印象を受けました。といってもそれは「平成的」ではなく「昭和の人が見た近未来」です。そのイメージを助長する、なんとも昭和的な「右から左に読む」広告をつけた車が駐車していました。
「ーョシ」って読みにくいですね。

玄関を入ってすぐ右がフロント。誰もいないので呼び出すと支配人風の方が奥から現れました。演劇グラフについているクーポン券を使って200円安く入館。
観劇チケットを受け取りました。

館内図。
複雑な構造の大きい建物であることがわかります。

広いロビー。でも誰もいない。まだ私以外のお客さんを見かけていません。

館内を散歩。適当に歩いていたらすぐ迷子になってしまいそう。人気はなし。

廊下の窓から見えたあずまや。そこかしこに秘密めいた雰囲気が。

通路に沿って並んでいるお土産屋さん。でも誰もいない。
進んでも進んでも誰にも会わない迷宮。
銀河鉄道999で、建造物は巨大なのに誰もいないという惑星に降り立つことがあるけれど、そんな空想的な旅をしているかのようだ。惑星『昭和の未来』とでも名付けたい。
始めに外観を見たときから気になっていた右の方の高くなっているエリアに行ってみることにしました。
宿泊室が並ぶ薄暗い廊下をひとり進みます。廊下の壁にぼうっと灯る案内板がまた寂しさを誘う。

エレベータ横の案内

ここがハワイアンプール。訪れたのは7月初旬。ちょうどプール開きした直後のようです。ハワイアンミュージックが流れています。でも誰もいません。
↑の写真は↓の空中通路から撮ったもの。

プールのほとりにて。ハワイアンミュージックが空に吸い込まれてゆきます。

乃利武の奥地に巨大なお風呂がありました。
ジャングル?を模したつくり。まるでテーマパークのようです。

滝もあります。
探訪前の自分の予想を超えた施設のスペクタクル。そして予想だにしなかったこの寂しさ。
大衆演劇を観に来たということをつい忘れそうになります。
本当にこれから大衆演劇が始まるのか?という疑念が開演時間が近づくにつれて強くなってきます。
大衆演劇場を下見することにしました。

「お芝居と舞踊ショー」と案内された扉を入ります。

テーブルクロスに椅子。大衆演劇場としては「お行儀がよい」体裁の客席です。

「祭 MATSURI」の緞帳。和でも舶来でもどんなイベントにもマッチしそうなレトロモダンな意匠。

会場後方のお酒とおつまみコーナー。あの緞帳やテーブル席との調和がまったく見られない、しかしいかにも大衆演劇場的な赤いのれん。
今日の公演予定は中野弘次郎座長率いる劇団蝶々。久々の観劇で楽しみにしていました。私はこの劇団の中野孔明という役者が好きなのです。
しかし劇団員が存在する気配はまったく察知できません。
そろそろ開場してもいい時間です。不安をかかえたままロビーに座っていると、最初フロントで会った支配人風の方がやって来て、お客さんが1名だけなので本日の公演は中止になったと私に告げました。その場で入場料の返金を受け、岡山駅まで送迎してもらいました。
大衆演劇公演が「お客さんが少ないので中止」になったという話は噂で聞いたことはありましたが、ついに自分がそれを経験することとなりました。でも全くがっかりした気分はなく不思議な夢を見ていた心地。
旅人特有の甘美な寂寥感を抱きながら、惑星を旅する者の心持ちで、私は次の大衆演劇場を目指したのでした。
(202年探訪)

岡山駅から送迎バスに乗り込みます。
バスの側面には「お芝居と舞踊ショー」「ノリタケハワイアンプール」などの宣伝文句。
この日は7月初旬の平日でした。
送迎バスに乗ったのは私一人。この時期はお客さんが少ないのだろうかと運転手さんに訊ねると、農繁期にもあたるのでお客さんは少ないとの答え。

自家用車もなく送迎バスも利用しないのであれば路線バスに頼ることになります。ここが最寄のバス停「二軒茶屋」
ご覧のとおり市街から離れだいぶのどかな場所です。
目的地へはここからしばらく山道を歩くことになります。

着きました。ここが乃利武。でも老舗旅館と聞いて予想していた風情と違います。旅館というより「科学特捜隊本部」といったものを連想させる建物のつくり。

これとか

これとか

この施設の全貌を知りたくなった私は、近くの高台に上がりました。
右下の家屋は民家で、その奥の緑豊かな山の懐に抱かれた建造物群すべてが乃利武です。こんなに大きな施設だったとは。特撮映画に使われる巨大な科学基地のジオラマセットを見ているかのようだ。

施設外観からは「近未来的」な印象を受けました。といってもそれは「平成的」ではなく「昭和の人が見た近未来」です。そのイメージを助長する、なんとも昭和的な「右から左に読む」広告をつけた車が駐車していました。
「ーョシ」って読みにくいですね。

玄関を入ってすぐ右がフロント。誰もいないので呼び出すと支配人風の方が奥から現れました。演劇グラフについているクーポン券を使って200円安く入館。
観劇チケットを受け取りました。

館内図。
複雑な構造の大きい建物であることがわかります。

広いロビー。でも誰もいない。まだ私以外のお客さんを見かけていません。

館内を散歩。適当に歩いていたらすぐ迷子になってしまいそう。人気はなし。

廊下の窓から見えたあずまや。そこかしこに秘密めいた雰囲気が。

通路に沿って並んでいるお土産屋さん。でも誰もいない。
進んでも進んでも誰にも会わない迷宮。
銀河鉄道999で、建造物は巨大なのに誰もいないという惑星に降り立つことがあるけれど、そんな空想的な旅をしているかのようだ。惑星『昭和の未来』とでも名付けたい。
始めに外観を見たときから気になっていた右の方の高くなっているエリアに行ってみることにしました。
宿泊室が並ぶ薄暗い廊下をひとり進みます。廊下の壁にぼうっと灯る案内板がまた寂しさを誘う。

エレベータ横の案内

ここがハワイアンプール。訪れたのは7月初旬。ちょうどプール開きした直後のようです。ハワイアンミュージックが流れています。でも誰もいません。
↑の写真は↓の空中通路から撮ったもの。

プールのほとりにて。ハワイアンミュージックが空に吸い込まれてゆきます。

乃利武の奥地に巨大なお風呂がありました。
ジャングル?を模したつくり。まるでテーマパークのようです。

滝もあります。
探訪前の自分の予想を超えた施設のスペクタクル。そして予想だにしなかったこの寂しさ。
大衆演劇を観に来たということをつい忘れそうになります。
本当にこれから大衆演劇が始まるのか?という疑念が開演時間が近づくにつれて強くなってきます。
大衆演劇場を下見することにしました。

「お芝居と舞踊ショー」と案内された扉を入ります。

テーブルクロスに椅子。大衆演劇場としては「お行儀がよい」体裁の客席です。

「祭 MATSURI」の緞帳。和でも舶来でもどんなイベントにもマッチしそうなレトロモダンな意匠。

会場後方のお酒とおつまみコーナー。あの緞帳やテーブル席との調和がまったく見られない、しかしいかにも大衆演劇場的な赤いのれん。
今日の公演予定は中野弘次郎座長率いる劇団蝶々。久々の観劇で楽しみにしていました。私はこの劇団の中野孔明という役者が好きなのです。
しかし劇団員が存在する気配はまったく察知できません。
そろそろ開場してもいい時間です。不安をかかえたままロビーに座っていると、最初フロントで会った支配人風の方がやって来て、お客さんが1名だけなので本日の公演は中止になったと私に告げました。その場で入場料の返金を受け、岡山駅まで送迎してもらいました。
大衆演劇公演が「お客さんが少ないので中止」になったという話は噂で聞いたことはありましたが、ついに自分がそれを経験することとなりました。でも全くがっかりした気分はなく不思議な夢を見ていた心地。
旅人特有の甘美な寂寥感を抱きながら、惑星を旅する者の心持ちで、私は次の大衆演劇場を目指したのでした。
(202年探訪)