WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 追悼武春師匠 浪曲師国本武春と大衆演劇コラボ公演の思い出
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追悼武春師匠 浪曲師国本武春と大衆演劇コラボ公演の思い出

追悼武春師匠 浪曲師国本武春と大衆演劇コラボ公演の思い出

2015年12月24日、「うなるカリスマ」こと浪曲界のスーパースター国本武春師匠がお亡くなりになりました。55才という若さでした。
浪曲ファンのショックはとても大きく、誰もが浪曲界に大きな穴がぽっかり空いたような心地だったと思います。

実は武春師匠は、お亡くなりになる直前に大衆演劇公演に出演していました。
武春師匠をゲストに招いたのは橘菊太郎劇団の橘大五郎座長です。
2014年9月25日に篠原演芸場で、2015年8月18日に浅草木馬館で、浪曲師国本武春師匠と橘菊太郎劇団のコラボ公演が行われました。私はどちらの公演も仕事を休んで観に行き、写真とメモを記録に残しましたが、これらの公演をブログで紹介するつもりはありませんでした。この先も武春師匠と大衆演劇のコラボ公演が続くことを期待し、ネタばれになるブログ記事の掲載を避けようと思ったのです。

コラボ公演から数か月後、突然の訃報に接しました。あまりの驚きと無念さで茫然としました。
それから月日が流れ、武春師匠亡き後の浪曲界は盛り上がりをみせはじめています。天国にいる武春師匠もこの状況を喜んでいることでしょう。浪曲ファンは浪曲の将来に期待を寄せつつも、今もなお、ふとした刹那に武春師匠の喪失感が胸に去来することに抗えないでしょう。そして思い出というものが時間とともに遠ざかって薄らいでゆくという宿命にさみしさを覚えるでしょう。武春師匠が亡くなって5年。私はあの大衆演劇とのコラボ公演の思い出をブログに残し、浪曲ファン、大衆演劇ファンの皆様と共有したいという思いに駆られました。

* * *

浪曲師国本武春と大衆演劇コラボ公演の思い出

1.2014年9月25日 国本武春師匠×橘菊太郎劇団 於:篠原演芸場

第一部 お芝居
第二部 舞踊ショー
第三部 「忠臣蔵」 殿中・刃傷~田村邸の別れ~吉良邸討ち入り

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篠原演芸場の屋外に掲示されている演目表

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演芸場内部 ゲスト予告掲示

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第一部お芝居、第二部舞踊ショーが終わり、第三部「忠臣蔵」までの休憩時間。舞台下手、花道の近くに武春師匠の演奏場所が設けられます。

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国本武春師匠のCD「大忠臣蔵」
三味線演奏と唄と語りで忠臣蔵の物語を楽しく、哀しく演じている武春師匠の傑作。
浪曲ではなく、語り入りの三味線ロック、三味線バラードという感じです。
大衆演劇コラボ舞台「忠臣蔵」は、このCDの構成をベースにアレンジを加え、武春師匠の演奏・唄・語りに合わせて、橘劇団の劇団員が演じるという、節劇スタイルの内容でした。

-武春師匠登場-

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篠原演芸場に武春師匠登場!

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お客さんに語りかける武春師匠

まずおなじみの掛け声講座から入ります。
まあ篠原演芸場のお客さんのノリの良いこと。師匠の指導のとおりに「待ってました~!」「たっぷり~!」「名調子!」と掛け声をかける客さん。
あっという間に会場が暖まり、舞台と客席が一体となりました。さすが武春師匠。

以下、表情豊かな武春師匠の思い出の写真を何枚か。

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-殿中・刃傷-

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ドラムの音(録音)に合わせて武春師匠の三味線と唄。

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饗応使 浅野内匠頭(橘大五郎座長) 登城

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浅野内匠頭と吉良上野介

吉良上野介が浅野内匠頭を罵る場面は、演奏が一時止まり劇団員による台詞芝居。
上野介が「鮒じゃ、鮒じゃ、鮒侍じゃ」と内匠頭を罵倒します。

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そこに武春師匠が割ってはいる。
ちょっとちょっとそんなんじゃだめだよ。

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もっとにくたらしくやらないと。声はこう、表情はこう。

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お手本を見せる武春師匠。
会場大爆笑。

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刃傷に及んだ浅野内匠頭。

-田村邸の別れ-

舞台は田村邸に早変わり。
田村右京太夫の屋敷での浅野内匠頭の切腹は間近。

武春師匠の演奏・唄はうってかわってバラードに。

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田村邸の庭先で片岡源吾右衛門(橘大五郎座長)が待っているところに、

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浅野内匠頭(橘良二)が現れる。

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殿との最後の面会にうちふるえる片岡源五右衛門

このシーンの曲には、「語り」の部分があります。その部分をCDの歌詞カードから抜粋します。

「殿!」
「そちゃ そちゃ源吾 誰が許しでこの庭先へ・・・おぬしの来る所ではない!退がれ、行け!退がりおろうぞ!!」
「アー、いや浅野殿 これは拙者主君 田村右京太夫格別の計らい・・・ 人目に掛からぬうちにせめてこの世のお名残を・・・」
かたじけないと内匠頭
「源吾・・・そちゃ、よく来たのう・・・」
「殿・・・ご胸中お察し申し上げます・・・」
胸に迫りて言葉なく
「殿、何か何かご遺言あられますれば、この源吾右衛門しかと承るでござります」
「いや、余はこの期に望み残しはさらになし・・・が、しかし国に帰れば・・・国に帰れば内蔵助に、・・・余は無念じゃと伝えておけ・・・」


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「源吾・・・もうこの世では会えぬぞよ さらば・・・さらばじゃ!!」
行かんとすれば 今しばらくと立ち上がり長矩の袴の裾を源吾右衛門、取りすがろうとするならば、
「え~い源吾、離せ!!離さんか!!この未練者めが!!」

涙、涙。とても胸にせまる場面でした。

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殿の無念を晴らさんと誓う片岡源吾右衛門

-吉良邸討ち入り-

田村邸の別れから1年9か月後。元禄15年12月14日。次はいよいよ討ち入りの場面です。
四十七士の討ち入りにお客さんも参加してほしいとのこと。唄の中の「アコーロウシ」の歌詞に合わせて手を動かします。
場面転換の時間を使って、武春師匠指導による振り付けの練習がありました。やはりお客さんノリノリ。

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劇団員が舞台でお手本を見せる。

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CD「忠臣蔵」の歌詞カード掲載の振り付け。

武春師匠のラップ調のロック三味線が鳴り響きます。
「あこ~~ろぅし」のところではお客さんが唱和&振り付け。

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大石内蔵助(橘大五郎座長)をリーダーとする赤穂浪士
「討ち入りだ~!オー!」

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吉良上野介を探す赤穂浪士

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納屋に隠れていた上野介を発見し引きずりだす

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吉良を打ち取り、君主の無念を晴らす

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ラストシーン
殿長矩が眠る泉岳寺に集う赤穂浪士

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終演後の口上挨拶

大五郎座長は、古いものを大事にしながら新しいことに挑戦する武春師匠をテレビで見て、何年も前から共演したいと思っていたそうです。9月初めに大五郎座長が木馬亭で武春師匠に声をかけて共演をお願いしたら、快く承諾してくれて、武春師匠の予定が空いている25日にコラボ公演を行うことになったとのこと。
稽古をしたのは、この前の日の夜と当日のたった2回だそうです。
それだけでこのように完成された舞台を仕上げてしまう橘劇団・武春師匠・篠原演芸場スタッフのプロフェッショナルさに感嘆しました。
お芝居・舞踊ショー・「忠臣蔵」の三部構成。これで木戸銭1,600円なのが大衆演劇のすごいところです。


2.2015年8月18日 国本武春師匠×橘菊太郎劇団 於:浅草木馬館

演目
第一部 お芝居
第二部 浪曲「紺屋高尾」
第三部 舞踊ショー
第四部 「忠臣蔵」 殿中・刃傷~田村邸の別れ~吉良邸討ち入り


武春師匠と橘劇団の2回目のコラボ公演。
今回は前回の「忠臣蔵」に加え、浪曲「紺屋高尾」もあります。

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木馬館内の予告掲示
「18日 特別出演 国本武春 大衆演劇×浪曲・特別狂言 忠臣蔵」

浪曲「紺屋高尾」

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テーブル掛けも用意した生粋の浪曲口演

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木馬館に沢村豊子師匠登場!
浪曲を知らない方のために一応記しておきますと豊子師匠はその技量の高さで浪曲界ではレジェンド的な存在の方です(ふだんはおちゃめです)。
豊子師匠は木馬館の客席でもお見かけしたことあります。たまにお客さんとしても来ているようです。
木馬館の階下は言わずもがな、浪曲定席の木馬亭。

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浪曲口演中の武春師匠

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浪曲の中で高尾太夫が登場すると、木馬館の下手からも・・・

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紺屋の職人の久蔵の前に現れた花魁高尾太夫(橘大五郎座長座長)

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舞台上手が高尾の部屋

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高尾太夫は久蔵に来年3月に嫁ぐことを約束し、大五郎座長の花魁は舞台から退場。もう大五郎座長の出番はないと思われましたが、

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浪曲の終盤、高尾も仕事に精を出し久蔵の店が大繁盛となったところで、すっかり紺屋の姿になった高尾が登場

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浪曲終演

「忠臣蔵」

構成は前年の篠原演芸場での「忠臣蔵」と同じでしたが、舞台セットは大きく変わっていました。

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さすが木馬館と思わせる大襖
中が涙した
当の忠義
士達の
に散った主君の仇討

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大襖から武春師匠登場

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舞台上手に着席

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おなじみ掛け声講座
武春師匠「もういっかい出ますのでよろしくお願いします」
お客さん「待ってました~!」

-殿中・刃傷-

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松の廊下の背景が見事

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浅野内匠頭長矩(橘大五郎座長)登場

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浅野内匠頭と吉良上野介

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武春師匠の演技指導

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殿中で刃傷

-田村邸の別れ-

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花が咲き乱れる田村邸

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片岡源吾右衛門(橘大五郎座長)が田村邸へ

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浅野内匠頭登場

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「殿!」「そちゃ源吾!」

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切腹の覚悟をきめている内匠頭は取りすがる源吾右衛門を振り切って去ってゆく。

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殿~

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吉良上野介への恨み、はらさでおくべきか

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-吉良邸討ち入り-

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四十七士の名を連ねた幕!

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「アコーロウシ」の振り付け練習

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「アコーロウシ」の「シ」のポーズ。指は4本。

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山鹿流陣太鼓を手に大石内蔵助(橘大五郎座長)登場

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吉良の屋敷に押し入った赤穂浪士
暗闇の中探し回る
何処だ 吉良は何処だ いない 見つからない
武春師匠を見つけたある浪士「いたぞ!」 武春「違う!」
ついにピーという笛の音
居たぞ 吉良を見つけたぞー

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吉良殿、お覚悟!

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吉良を討ち取った内蔵助

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吉良の首を抱く内蔵助
赤穂浪士一行は殿が待つ泉岳寺へ

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襖の後ろに去ってゆく内蔵助

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ラストシーン

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終演後の舞台挨拶

大五郎座長が呼んで豊子師匠も舞台に出てきました
大五郎座長「顔を出すのも嫌だと言ってたのですが出ていただきました」
武春師匠「話し出すと長いんですけどね」

木馬館公演は四部構成でした。
篠原演芸場も良かったですが、木馬館の舞台セットもまた素晴らしかった。
木馬館は特別公演であっても木戸銭は変わりません。これだけ充実した内容で1600円です。

* * *

大大成功だった武春師匠と橘菊太郎劇団とのコラボ公演。
浪曲、大衆演劇双方の新しい未来が見えた素晴らしい内容でした。
武春師匠はお亡くなりになってしまったけれどとても貴重な思い出を残してくださいました。
そして「伝統を大事にしながら新しいことに挑戦する」精神はしっかりと橘大五郎座長に引き継がれていることと思います。

武春師匠、楽しい思い出をありがとうございました。

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Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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