WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 大衆演劇の秘境 玄界灘に臨む旅館で半世紀続く旅芝居 「初潮旅館」
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大衆演劇の秘境 玄界灘に臨む旅館で半世紀続く旅芝居 「初潮旅館」

大衆演劇の秘境 玄界灘に臨む旅館で半世紀続く旅芝居 「初潮旅館」

今回は福岡県糸島市を旅します。
糸島市HPにはこう書かれています。
「中国の歴史書『魏志倭人伝』に記されている『伊都国』があった地です。大陸との玄関口として古くから文化が栄え、農耕が営まれ、さまざまな史跡・遺跡などが今なお各所に残されています。」

糸島市は、東に福岡市、北から西にかけて玄界灘、南から西にかけては佐賀県に接しているという立地にあります。
糸島市には163の行政区があり、その最西端、佐賀県唐津市に隣接しているのが鹿家(しかか)行政区。
その鹿家の海岸沿いに1956年に開業した老舗の旅館があります。
それが今回訪ねる「初潮旅館(はつしおりょかん)」です。

私は過去に初潮旅館探訪を試みたことがあります。
九州旅行の何日か前に電話で旅館に「○月○日に大衆演劇公演はありますか」と訪ねたところ、「わからない」という回答。団体予約が入らないと公演開催が確定しないという事情だったのでしょうけれども、私は公演を断念することとなりました。
初潮旅館はホームページもなく、ネット上にほとんど情報があがっておらず、私にとっては強く探訪欲をかきたてられる謎の大衆演劇場でした。
ところが近年、情報満載の初潮旅館ホームページが開設されました。
(さらに2019年1月から初潮旅館の女将がツイッターを初めて公演情報をこまめに更新してくれています)
今回私は、あるお客さんが旅館に掲出されている「公演スケジュール」の写真をツイッターにアップしているのを確認して探訪日を決めました。公演予定となっている日でも団体予約がゼロだったら中止になるかも知れないので、念のため前日に旅館に確認の電話を入れました。

東京から空路で福岡へ。ここから初潮旅館の最寄駅、筑肥線鹿家駅を目指します。福岡空港駅を起点とする地下鉄空港線は、福岡と佐賀を結ぶJR筑肥線と直通運転をしています。福岡空港駅から約1時間20分、1回の乗り換えだけで鹿家駅に到着しました。

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鹿家駅。
スタジオジブリのアニメにでてきそうな緑に囲まれた無人駅。

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この上なく簡素な駅舎

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辺りには何もお店がない、と思いきや駅前にある家の1階が、何の看板も出ていないけれども商店となっているようでした。

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地域のコミュニティバスのバス停。
1日2便でています。でも来るのは毎週火曜日のみ・・・。

想像以上に田舎だな・・・と思いつつ旅館を目指して歩き出す。

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鹿家駅から歩いて10分弱、初潮旅館が見えてきました。

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別のアングルから
「只今劇団公演中」の赤いのぼりが見えます。

だいぶ早く着きましたので、旅館に入る前に散策します。
国道を東へ、海がよく見える場所まで歩きました。

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山と海にはさまれた鹿家の集落が見えます。
写真中央のオレンジっぽい色の屋根の横長の建物が初潮旅館

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初潮旅館近くの砂浜から。
ご覧のとおり初潮旅館は海水浴場に隣接しています。
7月・8月は多くの海水浴客で賑わうことでしょう。
ですから、大衆演劇公演は海水浴シーズンを除く、春(2~6月)と秋(9~11月)の2シーズン、年に8ヶ月間行われます。

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旅館入口
まだ開演時間の2時間半前でした。
ここでふと浮かんだ疑問。
劇場の場合は開場時間になれば中に入ることができる。
健康ランドのようなセンターの場合はその施設の利用客として営業開始時間以降に入場すればよい。
旅館での公演の場合、何時から受付してくれるのか?
とりあえず中に入ってみます。

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旅館のロビー
数人のお客さんがくつろいでいました。
フロントと思われる場所にスタッフらしき方はいない。
とりあえずロビーで待っていようとソファに身を沈めました。

やがて地元のおばあちゃんが旅館にやってきました。おばあちゃんがフロントで受付しているのを見て、私も続いて受付しました。
地元以外の人が(しかも男性が一人で)観劇に来るのはかなり珍しいようでした。何か食事をとることができないか訪ねると、親子丼を用意できるとのこと。私は、お風呂にゆっくり入った後くらいの時間に食事を出してもらうようお願いして、観劇料と食事代を支払いました。

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お風呂の前に公演場所を確認しておきたい。
1階の廊下を進みます。

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お風呂入口。その向こうに演芸場入口。

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演芸場

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演芸場前方
椅子席最前列と舞台の間にスペースがある。ここも座布団を敷いて席の確保ができるよう。劇団ファンと思われる方がすでに座布団に私物を置いて座席確保していました。

私も椅子席に私物を置いて座席確保してからお風呂タイム。
旅館の目の前は海水浴場です。お風呂には外扉もあって、海水浴場から直接お風呂場に入れる仕組みになっています。

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お風呂から上がってロビーでくつろぎます。新聞の切り抜きが置いてありました。いつの何新聞かはわかりませんが「大衆演劇の秘境でござる」「上演半世紀 口コミで人気」というタイトルで初潮旅館を紹介した記事です。
開業当初は浪曲公演が好評で、約10年後に大衆演劇公演を始めた。
初潮旅館は福岡と佐賀の老人クラブ連合会の指定旅館で利用者の8割が高齢の団体客。
といったことが書いてあり、最後にここの舞台にも立ったという玄海竜二さんのコメントが載っています。「劇場が減る中、変わらぬ雰囲気で続けられるのはなぜなのか。僕も不思議でたまらない。大衆演劇にとっての秘境でしょうね」

玄海竜二さんの指摘のとおり、ここは大衆演劇場としては、現代においては(昔ながらの姿が残っているという意味で)稀有な雰囲気を持っている。
団体客の他には、ご高齢の地元の方が、公民館に集うかのようにやってきてしゃべっている。受付は自己申告制な感じ。観劇チケットもない。ゆるーい場。ゆるーい時間の流れ。

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やがて旅館の方がロビーまで私の昼食を持ってきてくれました。
親子丼、お味噌汁、お新香、お茶セット。
窓辺の席で海を眺めながらいただきました。

旅館のスタッフはみなさんアットホーム。

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開演時間が近づきますと団体のお客さんが劇場に入ってきます。
13時30分開演。
第一部はお芝居、第二部は舞踊ショーの2時間公演です。

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この日の公演は劇団しらさぎ三兄妹
劇団責任者 あまつ秀二郎、その妻 あまつ梢、長男 あまつ慎祐、次男 あまつ祐作、末っ子 あまつ祐香
という5人によるザ・ファミリー劇団。

劇団のみなさんを写真で紹介したいのですが、
舞踊の写真をブログにアップしてよいか確認するのを失念しました。。。

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初潮旅館に貼ってあった劇団紹介写真。

劇団しらさぎ三兄妹は2019年3月に体制がかわりました。
長男、次男が座長に昇格し、二人座長となり、劇団名は「劇団しらさぎ」になります。
兄のあまつ慎祐はあまつ殿下と名を変えて座長になりました。

この日の口上挨拶はあまつ祐作さんでした。
劇団しらさぎ三兄妹は初潮旅館ではお馴染みの劇団で、春シーズンの5ヶ月間をまるまる受け持ったこともあるそうです。
なので、地元の同級生と接する時間も多く、この辺りには仲の良い友達が多いよう。
小さい頃初潮旅館の演芸場で遊んだ思い出などを語ってくれました。

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旅館に貼りだされていた公演スケジュール。

公演が終わると、団体客は旅館前に手配してあった送迎バスに乗り込みました。
私はもう一度鹿家の集落を散策してから駅に向かいました。

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JR筑肥線の車窓から見えた初潮旅館

この立地で半世紀にわたって大衆演劇公演が続いているのは本当にすごいことだと思います。

時代はめまぐるしく変化しています。大衆演劇という文化も今現在ひとつの過渡期を迎えているでしょう。
でも初潮旅館にはとてもゆっくりした時間が流れています。人の心の温かさに身を委ねているような居心地の良さがある。
初潮旅館はいつまでも大衆演劇の秘境であり続けるでしょう。


(2019年10月探訪)

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Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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