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私のもさく座探訪記 第2話:子役が活躍、マルチ座長率いる劇団暁、初体験のゼリーフライと座長部屋

私のもさく座探訪記

第2話:子役が活躍、マルチ座長率いる劇団暁、初体験のゼリーフライと座長部屋

正直、埼玉県の行田市は東京都民には(ましてや関西の方には)あまり知られていない街だと思います。
もし何かしら聞き覚えがあるとすればゼリーフライという食べ物についてではないでしょ>うか。
私も行田のゼリーフライという存在は昔どこかで聞いてはいました。しかし当時は行田がどの辺にあるのか、ゼリーフライとは何なのかといった具体的な探究心までは働きませんでした。

行田に大衆演劇場があると知り、いつか行田に行ってみようと思った私にはゼリーフライについての興味もわいてきました。

2014年1月、
行田もさく座にのったのは劇団暁(あかつき)。

栃木県に自前の劇場、船生(ふにゅう)かぶき村を持ち、そこで単独公演を行うという大衆演劇界では異色の劇団です。
座長の三咲てつや先生については、演劇グラフにもルポルタージュが連載されましたから、ご存知の方も多いでしょう。
三咲てつや先生も大衆演劇の座長の中でも際立って異色の経歴の持ち主といってよいのではないでしょうか。

劇団暁に興味を持ち、私が船生かぶき村を訪ねたのが2010年11月。
三咲てつや先生40周年、船生かぶき村17周年の記念イベントの日でした。
まわりに山と畑しかないような、こんなところに劇場が?と思わせる場所に船生かぶき村はありました。
そのときの探訪ブログはこちら

アットホームな雰囲気に心が洗われたような気持ちになった私は、船生かぶき村が、劇団暁が好きになったのでした。

自前の劇場での公演がほとんどだった劇団暁が2012年ごろからいろいろな劇場で公演するようになりました。
特に東京大衆演劇協会系の劇場にのることが増えてきました。
2013年12月には東京いや関東の老舗劇場、篠原演芸場に乗りました。
そしてのその翌月はもさく座での公演。
お客さんを大事にするアットホームな劇団との交流が楽しみで私は「お食事会」の日にもさく座を訪ねました。


もさく座経験者の私の準備に迷いはありませんでした。
お食事会の時間が長引くことを想定して、現地(ホテル湯本)に宿泊することとしました。

HPでお食事会の日を確認する。
電話をして、送迎車の予約、昼の部・夜の部の指定席の予約、お食事会の予約、宿泊予約を済ませる。
そして当日。
10:30上野駅発の高崎線に乗る。
11:23に北鴻巣駅に着く。
11:30発の送迎車に乗る。
11:43頃、もさく座に到着する。

完璧だ、と思っていたのですがここで私はミスをしていたことに気付きました。
演劇グラフについているクーポン券を持ってくるのを忘れた。 
演劇グラフにはもさく座の土日観劇付き入館料2,200円が1,600円になるクーポンがついています。
私は「クーポン券忘れ」をよくしてしまう。たかだか数百円の損得なのだけれど、けっこうくやしさがつきまとう。

さて入館して券売機でチケットを購入します。
ここでクーポン忘れはミスでなかったことがわかりました。
観劇して宿泊する人は、宿泊パックというチケットを買えばよいのです。
宿泊パックは、お風呂+大衆演劇+宿泊で5,750円
安い!(注:このときH2014年1月、消費税率が8%に上がる前の値段です)
このおトクなチケットを買えば演劇グラフのクーポンは不要だったわけです。

さっそく温泉に入ります。壺湯が気持ちいい。

この日は温泉を早めに切り上げ、ゼリーフライに初挑戦するべく食堂に向かいました。
食堂は本館の2階です。

茂美の湯の食堂でアピールしているあるものが壁に掲示されていました。
それはとらふぐ。
最近とらふぐの養殖を始めたようです。

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飲み物(生ビール等)+ふぐ刺身+つまみ(5品から選ぶ)で1,780円と書いてあります。
よし、これも頼もう。

食堂の精算も例によって券売機。
とらふぐ3点セットとゼリーフライを選択。

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とらふぐ3点セット(生ビールと冷奴を選択)とゼリーフライ

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これがゼリーフライ。

行田市観光協会のHPからゼリーフライについての説明文を抜粋引用させていただきます。
「ゼリーフライは、じゃがいも、おからをベースに小判型に整えて油で揚げた食べ物」
「形が小判(銭)にそっくりだったことから「ゼニーフライ」が「ゼリーフライ」に変わったためと伝えられています」
「明治後期には既に食されており、長い間庶民のおやつとして愛されています」

いわゆる 「ゼリー」とは何の関係もない のですね。
ソースをつけて食べます。コロッケに近い素朴な庶民の食べ物です。

とらふぐの刺身も美味しかったです。


食事を終え、大衆演劇昼の部を観るために1階へ降ります。

会場ではなんと、座長の三咲てつや先生お手製の新聞が配布されていました。

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題して「劇団暁・茂作座日々かわら版」

内容はもりだくさん。
・昼の部と夜の芝居の配役と解説
・劇団暁最新ニュース…この号では、この日ゲスト出演の流星が所属する劇団菊と劇団暁が親しい間柄であることが説明されています。
・茂作座館内ぶら散歩…この号では茂美の湯にあるいくつかの湯船の名称の由来が記されています。
・三咲てつやの芸道談義
など。
これだけ情報満載の新聞を毎日作ってお客さんに配っているようです。さすが三咲てつや先生。

芝居は「源太しぐれ」
劇団暁には総帥的立場として三咲てつや先生がいらっしゃいますが、その他に3人の座長がいます。もさく座に出演しているのは三咲夏樹・三咲春樹の兄弟座長。この芝居では春樹座長が主役でした。もうひとりの座長三咲きよ美はこの月は船生かぶき村の公演を任されています。
劇団暁がかぶき村以外で公演していてもかぶき村の公演に穴をあけることはありません。

続いて舞踊ショー。

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三咲暁人

私は劇団暁は久し振りの観劇になります。三咲暁人の変りっぷりに一番びっくりしました。細身の子供だと思っていたのが体格のいい青年になっていました。そして剣のさばきがめちゃめちゃ上手い。いろんな意味で成長しました。

劇団暁の特徴として子役の多さ も挙げられます。

多くの劇団で子役が舞台に立ちますが、子役の群舞があるのはこの劇団ぐらいではないでしょうか。

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子供がみんな楽しそうにやっているのがいいですね。
スパイダーマンのコスチュームもいます。

舞踊ショーでは洗練された芸をじっくり見るのもいいですが
このようなアットホーム感あふれるエンタメが入るのもよいアクセントとなります。

会場では最近上梓された三咲てつや先生の著書も売っていました。
「桟敷は皆んなの楽天地」

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三咲てつや先生の生い立ちや芸道の記録がおもしろく綴られています。
橋本正樹「晴れ姿!旅役者街道」に三咲てつや先生のルポルタージュが収録されておりますが、そこで記されているような先生の自伝に加えて座員エピソードもたくさん書かれている本です。
そのほか、先生が作った歌の歌詞・楽譜や先生が作った戯曲も収録されています。
先生は役者であることはもちろんですが、文章も書けるし、戯曲も書ける。作詞・作曲もできて歌も歌えるシンガーソングライターでもある。本当にマルチな才能をお持ちの方です。そしてこの本を読むと「逆境の中でも前向きにやりたい道を進む才能」が何よりも秀でているのだなと感銘を受けます。

昼の部の後にホテルにチェックインしました。
ホテルには洋室・和室があります。

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この日は洋室

もう1度お風呂に入って夜の部を待つ。
あ~、いいなあ、このだらけた時間。

お食事会の日は、いつもより30分早い18時に夜の部が始まります。

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夜も子供達による楽しい群舞がありました。

劇団暁のたくさんの小学生座員は日々競い合って技・芸を磨いています。
5年後、10年後の劇団暁楽しみだな~。

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飛竜貴
芝居では肝心な役を務めます。
三咲てつや先生の著書「楽屋つれづれ草」から飛竜貴の項を冒頭のちょっとだけ引用させていただきます。
「彼は私の弟子の中で、もっとも特異な存在である。なぜなら、ほかの弟子達が最終学歴中学卒業という中で、貴君だけが高校卒業なのである。その上、ほかの弟子達がズブの素人から弟子になったのに、貴君だけが役者の経歴があって、あの『日光江戸村』で活躍していたのである」

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三咲てつや

夜の部が終演すると、2階ではもうお食事会の用意が整っています。
私が会場の食堂に行くと、もうほとんどの席に参加者が座っていました。

前回同様、どこが空いているだろうか、どこに座ろうかとうろうろしていると、あるおばちゃんが「ここ空いてるよ」と声をかけてくれました。前回とは違う方です。

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お食事会のお弁当。

私が席に着くとさっそく近くの方がグラスにビールをついでくれました。

前回同様、家からタクアンや梅干しを持ってきているおばちゃん方がいて、周りの人にわけています。
「ボク、お弁当に入れとくね」
とおばちゃんが私のお弁当に梅干しを置きました。
このトシになってボクと呼ばれたことに意表をつかれ、私が笑っていると
「あたしにとっちゃそのくらいの年よ」
とその方は言いました。

私はたいへん人見知りで初対面の方々との集いは苦手なのですが、ここのお食事会は、誰とも話さなくても疎外感を感じません。気兼ねすることなくくつろげます。

30分ほどすると、劇団員の方が会場にやってきました。拍手して「お疲れ様」の掛け声をかける人もいれば相変わらずしゃべっている人もいる。
第1話でも書きましたが、ここのお食事会は「劇団ファンの集い」という感じではない。参加者はほぼ毎回出席しているもさく座の常連さん。みんなマイペース。自然体。
たとえば私の近くにいたおばさまは、劇団員が入場しても特に気に留める様子もなくとなりの方とお話していて、ふと劇団席に目をやって「どの方が座長の奥さん?あ、あの方ね」と確認を終えるとまた話をし出すといった感じで。

劇団員がそろうとお食事会が開式?します。
もさく座スタッフの司会から…湯本茂作社長の挨拶→もさく座後援会会長挨拶→東京大衆演劇劇場協会篠原会長挨拶→座長挨拶、メンバー紹介→乾杯
これがお決まりの流れ。
お食事会には必ず篠原会長が出席されるのです。

茂作社長は、一般的な社長のイメージから遠い、愛嬌のある話し方をする明るく面白い方。
社長が挨拶でまず「あけましておめでとうございます」というとお客さんも「おめでとうございます」と明るく答えます。
このやりとりだけで、常連のお客さんがふだんから茂作社長に親しみをもって接していることがわかります。
茂作社長は、夏樹・春樹座長とは5年くらい前に知り合い、かぶき村にも2,3度行ったことがあり、いつか劇団暁がもさく座に来てほしいと思っていた、とおっしゃっていました。

乾杯が終わり歓談が続きます。
しばらくまわりのおばさま方とお話したあと、私は前回席が一緒だったおばさま方の近くに移動しました。
「覚えていますか」と訊いたら「覚えているよ」親しく応え、また私のためにウーロン杯をつくってきてくれました。

しばらくすると、劇団員および茂作社長が客席をまわり始めました。
あちこちで、やってきた劇団員ともさく座常連さんとの交流が始まりました。

場内がいい感じに盛り上がってきた頃、歌の発表がありました。
三咲てつや座長がここ茂美の湯のテーマソングを作ったというのです。
題して「茂美の湯、茂作座、楽天地」 作詞・作曲・編曲 三咲てつや

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歌詞を書いたプリントが配られました。

歌うのはてつや座長の一番弟子、三咲さつき。

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歌詞を見ながらリズムをとる方、拍手をする方、ノリノリの方が多い。

歌の発表が終わると、となりのおばさまは、今聞いたばかりのメロディを口ずさみつつ
「振付もつけたらどうかしら、ここはこう」と言って片手の指先をこめかみにあてました。
片手を額にあてる兵隊さんの敬礼のようなポーズは茂作社長のトレードマークなのです。

劇団が暁がもさく座にきてまだ10日ほど。
公演だけでもお忙しいでしょうに、かわら版もつくりつつ、こんな短期間で歌まで作ってしまうとは、三咲てつや先生の才能には舌を巻きます。

その後もまだまだ歓談は続き、私は移動してきた暁人さんと話をしたりしていました。

私同様、一人で参加していてこの会合の常連ではない方がいました。(この女性をTさんとします)
Tさんは、ご近所にお住まいですがもさく座は最近見はじめた方。私よりはだいぶ年上だと思いますが、雰囲気がとても若々しい。紀子様のような笑顔がすてきなチャーミングな方です。
私とTさんの近くに三咲てつや座長がやってきました。お客さんとの触れ合いを大事にする劇団らしく三咲てつや座長も客席をまわっていたのでした。はじめ何人かの参加者が先生を交えて歓談していましたが、いつの間にか、先生が自分のエピソードを語るのに私とTさんの二人が聞き入るという図になりました。
某有名競輪選手のファンになって全国の競輪場を渡り歩いた話。
夜の街を流しのアコーディオン弾きとして歩いていた頃の話。
船生に土地を見つけてかぶき村を建てた話。
自分は自前の劇場でしかやらないと思っていたが篠原会長との出会いによってそれが変ったという話。
先生は波乱万丈の人生をアクティブに生きてきましたが、話し方はとてもおだやかでジェントル、物腰やわらかかつ謙虚で自己主張もありません。たいしたこともしていないのに虚栄をはる輩の対極のような方です。
そして音楽の話になり、私はもさく座の歌などをどのように作っているのかと質問しました。
先生は音楽の話が大好きのようで、パソコンソフトで作曲・編曲しているなどいろいろ話してくださいました。
マルチの才能を持つ先生は何でもできるのかと私は思っていましたが、以外にもデジタル機器はやらないとのこと。
パソコンのことはほぼわからずホームページやブログを作ったりもできない、スマホは使わない、ガラケーは持っているけど写真は撮らない、デジタルカメラさえ持っていないとのこと。しかし、好きこそものの上手なれで、パソコンによる作曲・編曲はなんとか自力で修得したそうです。
そんな話を目を輝かせながら聞いていた私とTさんに先生が言いました。
作曲しているところをお見せしましょうか? 

「えっ!?」と、私とTさんの目が驚きと喜びでさらに輝いたことは言うまでもありません。

私とTさんは先生の後についてお食事会会場を抜け出しました。

劇団員の宿泊所に着きました。
共用部分にはたくさんの洗濯物が干してありました。
先生はある扉に私たちを招き入れました。
そこが三咲てつや先生が使っている個室。座長部屋。
突然の訪問にもかかわらず部屋の中はきれいに整頓されていました。

先生はPCを立ち上げ作曲ソフトを開きました。
「茂美の湯、茂作座、楽天地」 の音符が並んでいます。
曲のアレンジの作り込みがすごいなと思いました。
ドラム、ギター、ベースいろんな楽器それぞれに、前奏・間奏を含めて細かい音符が書きこまれています。
ソフトにはいろいろな楽器や音色が用意されていて、曲ごとに似合う楽器を選択してゆきます。
ある曲ではポンポン船の音を入れたくて、ソフトに入っていたヘリコプターのプロペラの音で代用したとか。
こういう音作りもとても楽しい作業なのでしょう。

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座長部屋で作曲用PCを操作する三咲てつや先生
(この写真をブログに掲載するご許可をいただきました)


お食事会の会場に戻ると、もう宴は終わりに近づいていました。

暁もアットホーム、もさく座のお客さんもアットホーム。
そして三咲てつや先生とたくさんお話できた楽しいお食事会でした。


ホテル湯本に宿泊して翌日。

行田の町を少し散策しました。
行田ゼリーフライののぼりをたまに見かけます。
そこにはゼリーフライのゆるキャラが描かれています。

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行田をゼリーフライを宣伝した看板。
ん、ゼリーフライの上に似てるけど違うキャラがいるぞ。
何奴ッ?

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これはとある店舗の写真。

行田フライのフラべぇと言うらしい。

実は行田には「フライ」と「ゼリーフライ」の2種類の名物があり、それらは別物なのでした。
「行田フライ」は小麦粉を使ったお好み焼きのようなクレープのようなものらしいです。

昔ゼリーフライを食べたことがあるという妻に確認してみたところ、それは行田フライの方であることがわかりました。
名前が似ているからごっちゃになりやすい。
行田フライを食べることも私の宿題となりました。
(第2話おわり)


<第3話予告>

「それぞれが乗り越えてきた道 劇団千章、行田はみどころたくさん 城と古墳と国宝」

コメント

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No title

こんにちは!

さっそく第二弾が!!

どーしても食い気に走る私・・・
ゼリーフライが食べたくなりました

暁さんは友人がとても大好きな劇団さんで、よく話は聞き、再三にわたり「観に来て~!」と言われているのですが・・・
西日本は三重止まりで、なかなか観に行けてません
ユーユーカイカンでの公演が定着してきているようなので、来年こそはと思っています
三咲てつや先生、とても気さくな方ですね~
友人が、アットホームな劇団だと言っていたのを思い出しました。
きっと、先生の人柄がそのまま劇団のカラーになっているのでしょうね!

次回は、古墳??? 楽しみです!!!

Re: No title

第2弾もお読みいただきありがとうございます。
ユーユーカイカンに劇団暁が来たら是非ともご覧ください!

私は三重県の大衆演劇場をいつか探訪したいと思っています。
(荒神山には行ったのですが大衆演劇場はスルーしてしまいました)
プロフィール

notarico

Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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