WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 2023年08月
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長崎街道の宿場町から工業の拠点に発展した後衰退しつつある街に活気を呼び戻す劇場 「黒崎新劇座」

長崎街道の宿場町から工業の拠点に発展した後衰退しつつある街に活気を呼び戻す劇場 「黒崎新劇座」

今回は2022年4月にオープンした福岡県北九州市の大衆演劇場「黒崎新劇座」を訪ねます。
紅あきら同魂会会長がオーナーの博多新劇座の姉妹店ですね。

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博多駅からJR鹿児島本線に乗って約1時間、黒崎駅に着きました。

黒崎は福岡県北九州市八幡西区にある街。
北九州市にある区の中で八幡西区は一番人口が多く、黒崎は北九州市の副都心といった位置づけにあります。

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駅前の目抜き通り。
都会らしく駅の周りには大きなビルがいくつも見えます。

ここで黒崎という土地の歴史をひもといてみましょう。

徳川幕府は1615年に武家諸法度で参勤交代を義務付けます。
これを機に全国の交通整備が進み、五街道をはじめ多くの街道が整備されました。
長崎街道もその一つです。
長崎街道は、鎖国下で唯一外国に開かれた長崎から小倉を結んでおり、幕府への献上品として異国の品物や文化を運ぶ重要な道でした。

参勤交代の制度が確立した寛永年間(1624~1644)に長崎街道の黒崎宿が整備されました。
黒崎宿は大規模に発展し、大名が宿泊する本陣や脇本陣、旅籠、関所、人馬継所などの施設が整っていました。

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江戸時代の黒崎宿絵図

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明治以降は周辺の工業の発達に伴い都市化が進みました。
戦後さらに人口が増加し、駅前に大きな商店街が形成されました。

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黒崎駅南東部に大きなアーケード商店街が広がっています。

しかし商店街の中の活気はいまいち。
日本全国ほどんどの商店街は衰退してゆく傾向にあります。
黒崎の商店街も同じ宿命にあるでしょう。
2020年には駅前にあった百貨店が閉店したそうです。

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商店街のいたるところに昭和の雰囲気が残されています。

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楽しいお買物の街 寿通り

レトロな商店街を散歩しているうちに黒崎新劇座の開場時間がせまってきました。
劇場に向かいます。

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商店街のアーケード抜けて少し東に行くと黒崎新劇座が入っているビルが見つかりました。

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別の角度から見た建物

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お向かいには「ニュー紳士街」というこれまたレトロなスナック街がありました。

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先ほどの建物の1階に黒崎新劇座があります。
元は映画館だった場所を改装してできた劇場です。

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入口横の掲示
この日は、恋瀬川翔炎座長率いる飛翔座の公演。

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劇場に入って右手に券売機があります。
この日は恋瀬川キャビア祭りということで特別料金(通常2000円のところ2500円)となっていました。
入場時のみに券売機のすぐ前に臨時でカウンターが設置されますので、そこのスタッフに購入したチケットを渡します。

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券売機の奥にミニ売店があります。
お菓子の他にサンドイッチも売っていました。
ビールもあります。

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弁当 550えん~600えん
ほっとこーひー 300えん
和雑貨各種 500えん~1500えん
びん各種 500えん~2000えん

2000円の瓶って何だろう。

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休憩スペース
ここで食事をとることができます。

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では劇場の中へ

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場内右後方より

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座席表

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場内後方より

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前方
花道はありません

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座席は映画館時代のものをそのまま使っているよう。
なので座り心地はよいです。

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劇場後方の壁に設けられた席

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劇場を横から見たところ
客席に傾斜がついているのがわかるかと思います。

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ちゃんと1列づつ段になっています。
この日は補助席も出ていました。

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演目の貼りだし。
ちゃんと筆で書いてあるのいいですね。

この公演は平日にもかかわらず大変多くのお客さんが詰めかけました。
座席は満員で補助席にまでお客さんがいます。
飛翔座の人気、恋瀬川キャビア若座長の人気はすごいな。
というか黒崎という土地の大衆演劇熱の高さに驚きました。
黒崎にも70年ほど前には大衆演劇場があったそうです。

12時、昼の部が開演しました。
第一部 ショー
第二部 芝居
第三部 ショー

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恋瀬川翔炎座長

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恋瀬川キャビア若座長の女形

1部と2部の間に劇場スタッフが「ゴミはありませんかー」と客席を回っていました。また、売店で売れ残ったサンドイッチを劇場内で販売していました。
2部の後には劇場内でコーヒーを売っていました。
スタッフに活気があって、よく働く。よい劇場であることの証です。

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この日のキャビア祭りの中で私を一番感嘆させたのは「どろろ」という舞踊。
20以上の変面ショー。圧巻でした。

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舞踊ショーの様子

飛翔座の公演を観終わって劇場を出ました。

この日、夕食をどうするか旅行の前にリサーチしていました。

黒崎の商店街にとても評判のよい「魚虎」という居酒屋があることがわかりました。

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商店街のはずれの細い通路にひっそりと存在している名店「魚虎」

ネット記事によると金土日は半年先まで予約が埋まっているそう。
私は旅行前にダメもとで電話してみましたが、やはり予約はとれませんでした。

ということで、私は黒崎第二の選択肢、「田舎庵」に行くことにしました。
「田舎庵」といえば博多の駅ビルにテイクアウト店も出店している小倉のうなぎの名店を思い出しますが、どうも黒崎の「田舎庵」は小倉本店の系列店や姉妹店という位置づけではないようです。

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黒崎 田舎庵 日日屋

せっかくなので「せいろ蒸しコース」6,200円を注文しました。
せいろ蒸しは福岡県柳川市を発祥とする郷土料理。
うな重とは違い、ご飯にうなぎのかば焼きと錦糸卵を乗せてせいろで蒸して作られます。

(コース内容)
冷酒・明太子・うざく・肝焼・鰻寿司・せいろ蒸し・デザート

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せいろ蒸し
美味しい!うなぎの皮はパリパリで香ばしい。身はふわっとしている。ご飯は蒸したてであつあつホクホク。タレが甘すぎない。後味がじわじわやってきて、食べた後に旨さを感じる。
この後デザートとして、アイスクリーム、すいか、メロンがでました。

黒崎グルメを堪能して宿をとっている博多に移動しました。

黒崎新劇座はとてもよい大衆演劇場でした。
令和の世になってもこのような素晴らしい劇場が誕生するのは、大衆演劇の未来にとってとても心強いことです。

こんど黒崎に来たときは、博多新劇座から魚虎へ移動するコースをやりたいなあ、、

(2023年5月探訪)

小屋からスタジオになった劇場で劇団笑門の旗揚げ公演を観劇 「M STUDIO」

小屋からスタジオになった劇場で劇団笑門の旗揚げ公演を観劇 「M STUDIO」

2023年7月に劇団笑門が旗揚げしました。
あおい竜也座長が率いていた一竜座を受け継ぎ、竜也座長の娘(あおい二千翔)の婿である天昇屋心竜座長が劇団笑門を立ち上げた形ですね。劇団笑門ではあおい竜也さんは後見という立場になりました。

その旗揚げ公演の会場となったのが大阪の大衆演劇場「M STUDIO」
ここはかつて「水車小屋」という名の大衆演劇場でしたが、リニューアルして「M STUDIO」になりました。
私は「M STUDIO」になってからは初の訪問となります。

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「M STUDIO」のある建物

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「水車小屋」という名だった頃のシンボルである水車がなくなったのかなと思いきやまだ現存していました。

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1階のこの暗がりの奥に劇場入口があります。

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建物には新しい看板がかかっていました。
「M STUDIO」という名に変わったので、大衆演劇以外のイベントにも使うようになるのかな、と思っていましたが、看板にはしっかりと「大衆演劇」と書かれていました。
どうして「M STUDIO」という大衆演劇場っぽくない名称にしたのか気になる。

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建物1階の暗がりを進みますと左手に入口があります。

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入口扉入ってすぎ左にカウンターがあります。
ここで木戸銭を支払います。

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「水車小屋」から「M STUDIO」になった劇場場内

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前方はカーペット敷きの客席となっていました。

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客席右前方にある座布団を取って、カーペットの好きなところに座ればよいようです。
カーペット席で使う場合は座布団は無料ですが、椅子席で使うと100円かかります。

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後方の椅子席。
以前は後方席の床は高くなっていましたが、リニューアル後は床はフラットになりました。

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「水車小屋」時代にはなかった花道が設けられていました。

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壁に飾られている水車の絵は以前と変わらぬまま。

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劇場内右手に楽屋があるよう。
楽屋と客席との間は完全に壁で仕切られていない(上部にすきまがある)ので楽屋の声が客席に漏れてきます。
開演前、楽屋から座員さんたちの楽しそうな笑い声が聞こえてきました。
劇団笑門の皆さん仲良さそうだなあ。

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第一部のお芝居が終わった後の口上挨拶。
後ろの幕に「笑う門には福来る」と書かれています。劇団笑門のネーミングはこのことわざからきているのですね。

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第二部は舞踊ショー。
天昇屋心竜座長。

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天昇屋心竜座長の女形

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天海翔
この劇団では天昇屋翔と名乗ることもあるよう

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マンスリーゲストの中野孔明さん
古くからの孔明さんファンのお客さんも来ていました。
私も昔、孔明さんとあおい竜也さんが共演していた劇団蝶々を何度か観劇しました。

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中野孔明さんの女形

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ラストショー

今回の大阪遠征では、劇団笑門を昼1回、夜1回観劇しました。

夜の部の後の夕食をどこにするかはノープランでした。
劇場のお客さんにご近所の方がいらしたので、「M STUDIO」の近くで良い店がないか訊いてみたところ、「げんぶ」との回答がありました。

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ということで帰りに「げんぶ」という居酒屋に行ってみました。
「M STUDIO」と北巽駅の間にあります。

広めの店内は多くのお客さんで賑わっていました。
メニューが豊富!しかも安い!お酒も安い!店員さんの対応もいい。
人気店であることに納得。
QRコードを使ってスマホで注文できるのもいい。

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お刺身と日本酒
料理はどれも美味しかったです。

大阪の夏の夜を楽しく過ごしました。

劇団笑門の今後の活躍に期待しています。

大衆演劇公演ができる下町の貸しホール 「大阪沖縄会館」

大衆演劇公演ができる下町の貸しホール 「大阪沖縄会館」

大衆演劇場は、1年を通じて公演を行っている「定期」の公演地と、12ヶ月のうち特定の期間のみ公演を行う「不定期」の公演地に大別されます。
「不定期」の大衆演劇場はいわゆる「センター」(健康ランドや温泉ホテル等)で行われ、月単位での公演あることがほとんどです。

今回ご紹介する公演地は、センターが主催する公演でもなく、「不定期」ではあるが数日単位の公演であり、「大衆演劇場」と称してよいかどうかは微妙ですが、これまで何度か大衆演劇公演が行われた場所ですので、このブログで紹介したいと思います。

今回ご案内するのは、大阪市大正区にある「大阪沖縄会館」

その名称からは興行イベントが行われそうな感じはしません。
一体どんなところなのか。以下レポートします。

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大正駅。
JR大阪環状線と地下鉄長堀鶴見緑地線の駅です。
大正区にある唯一の駅。

Wikipediaによりますと、
大正駅周辺に沖縄県からの移住者が多く住んでおり、大正駅の発車メロディは沖縄民謡の「てぃんさぐぬ花」なのだそうです。
なるほど、大正区に沖縄会館がある理由がわかりました。

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区に駅が一つしかないとなると、多くの区民は移動にバスを頼ることになるでしょう。
大正駅前にバス停がたくさん並んでいます。
大正駅から大阪沖縄会館までは約2km。散歩にはちょうどよい距離ですが、まあ普通はバスを使ってゆくことになるでしょう。
駅前からバスに乗り、「大正区役所前」バス停で下車します。

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大正区役所前バス停から少し歩いたところに大阪沖縄会館の建物があります。

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入口
1階に沖縄料理屋さんがありますね。

大阪沖縄会館で大衆演劇公演を行っているのは劇団あやめ。
これまで何度か、劇団の自主公演という形で、この会場を借りて数日間限定の公演を行ってきました。
私が訪ねたのは2023年6月10日。この月、劇団あやめは6/10~6/14の5日間にわたって公演を行っていました。

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窓に貼られた掲示。
「劇団あやめの会場は4階ホール」

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大阪沖縄会館の建物に入り、エレベーターに乗ります。

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エレベーターを4階で降りたところ

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ホール入口前で劇団あやめの咲之阿国さんが受付をしていました。
ここで木戸銭を支払います。

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大阪沖縄会館4階のホール。
ここが公演会場です。

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舞台正面より

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会場前方

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このように緞帳付きの立派な舞台があります。

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客席はパイプ椅子を並べてセッティングしてありました。

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座布団も用意されています。

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パイプ椅子に座布団を敷いて観劇しました。

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舞台上には公演用の照明が設置されています。

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フロアにもムービングライトを設置していました。

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ホールを出たすぐのところ、受付の近くにフリードリンクコーナーがありました。
アットホームでいいですね。

開場時間は開演の30分前の12時30分。
このような場所での短期間での単発公演にどのくらいお客さんが来るのだろうか?大衆演劇場として認知されている場所でないので広報がゆき届かず客入りが少ないのでは?という心配は杞憂でした。
開場後、続々とお客さんが入ってきます。用意されていた席はほとんど埋まりました。
少し遠くからやってきた劇団あやめファンもいたのでしょうけれど、この近辺にお住まいの地元の方が多い印象。

そういえば、10年ほど前、この大阪沖縄会館にほど近い場所に「笑楽座」という小さい大衆演劇場があって、その劇場も地元っぽいお客さんで賑わっていたことを思い出しました。
大正区は旅芝居文化の土壌が豊かな土地なのでしょう。

開演前の時間、お客さんは談笑したり、持参したお菓子や軽食を食べたり、とってもアットホームな雰囲気。
お客さんにお菓子を配り歩いている子供もいて、私はカントリーマアムをもらいました。

13時すぎに開演。

第一部はお芝居「槍供養」
大衆演劇では定番の演目ですね。
劇団あやめの姫猿之助座長の祖父は初代姫川竜之助。その父は松本田三郎で、その時代から受け継がれている演目だそうです。
松本田三郎はこの芝居で長谷川一夫とも共演したそう。
芝居中、役者が登場したり退場したりするたびに客席から拍手。いいお客さんだなあ。

第二部は舞踊ショー
ここでもお客さんノリノリ。舞台と客席が一体となったライブ感。これぞ大衆演劇の醍醐味。
劇団あやめは公演の写真撮影がNGなので、残念ながらここでは公演の様子を写真で紹介することができません。

この日は「白猿祭り」で、若手リーダーの初音白猿さんが大活躍しました。

公演後、白猿さん発案の企画ということで、射的大会が行われました。
よく縁日でやっている射的みたいなものです。

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私は射的に参加し、的を倒し、景品として初音白猿てぬぐいをいただきました!
このてぬぐいのデザインかっこいい。

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送り出しは撮影可。
劇団あやめの皆さん。

大阪沖縄会館は大衆演劇公演を行う場所として遜色ないことがわかりました。
そして何より、地元のお客さんの芸を愛でる気質がとてもいい。

劇団あやめの大阪沖縄会館公演はとても楽しい雰囲気ですので、機会があれば是非行ってみてください。

(2023年6月探訪)



プロフィール

notarico

Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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