WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 2020年01月
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活気があり居心地が良い 大衆演劇愛を感じる劇場 「楽笑演劇殿」

活気があり居心地が良い 大衆演劇愛を感じる劇場 「楽笑演劇殿」

今回は福岡県の久留米に2018年にオープンした大衆演劇場「楽笑演劇殿」を訪ねます。


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JR久留米駅前

世界最大級のタイヤが展示されています。

久留米はゴム産業を中心に栄えた街です。
明治時代に創業した「つちやたび」と「しまやたび」(のち「日本足袋」)が、大正時代に足袋にゴム底を貼り付けた商品を開発して大当たり。それをきっかけに両社はゴム製品製造業へ移行。
つちやたびは現在の株式会社ムーンスターとなりました。
日本足袋は昭和5年に純国産の自動車のタイヤの試作に成功。その翌年に久留米で「ブリッヂストンタイヤ」(現在の「ブリヂストン」が創業しました。

久留米の玄関口はJR久留米駅と西鉄久留米駅。
両駅間はちょっと遠い。2kmは離れています。
久留米の繁華街はこの両駅の間にあります。
繁華街は西鉄久留米駅前から大きく広がっています。両駅の中間くらいに、スナックやバーが多い夜の繁華街「文化街」があります。

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文化街の中で目をひく大きな紅い入口の建物。
楽笑演劇殿はここにあります。

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夜の楽笑演劇殿建物入口

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入口上の大きな掲示
九州ゆかりの劇団座長がずらり

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建物に入って進むと奥にエレベーター
楽笑演劇殿へは左のエレベーターに乗って3階に昇ります。(右は住居用なので3階に停まらない)

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エレベーターを降りて右手に券売所があります

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ちなみにエレベーターを降りて左手には待合スペースがあります。

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券売所のすぐ先に受付カウンターがあります。
その先、床が赤くなっているところからは土足禁止。靴は袋に入れて持って中に入りましょう。

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劇場後方より

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舞台前

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前方は座椅子席

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後方は椅子席
予約席にはわかりやすくクッションが置いてあります。

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後方サイドのテーブル席

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楽笑演劇殿はキャバレーを改修してできたそう。
その名残を感じる天井の装飾。

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ここはフードメニューがとても充実!

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ホットショーケースもあります。

別の場所ではホットプレートでフランクフルトを焼いていました。
縁日のような楽しさがあります。

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私は「てんぷら」(6枚200円)と「レモンサワー」(300円)を求め、開演を待ちました。

なんだろう、この幸せな感じ。
この庶民的なつまみ、酒が何故こんなにもうまく感じるのか。
何よりこの劇場の雰囲気がよい。スタッフの活気、広い空間、靴を脱いでることもポイントだな。
居心地のよい場所、開演前のワクワクした心持ち、この時点で幸福のベースはできたも同然。そこにてんぷらとレモンサワー、最高だ。

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他に個人的にポイントが高いと思っているのがこの筆書きの演目掲示。
この掲示は探訪前からツイッターの写真で見ていて、ここはいい劇場だろうなと私に思わしめていました。
プリンターで印刷したほうがうんと楽でしょう。しかし合理化より自分のこだわりを優先しているところに小屋主さんの熱い思いを感じます。
来客者数掲示もあります。

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この回は75名のお客さんが入りました。
役者さんが大入りの幕を引きます。

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公演中の様子

予想通りとても良い劇場でした。
お客さん目線で作った芝居小屋だと思いました。
九州の大都市にこんな良い雰囲気の大衆演劇場がある、その存在価値は大きい。

今後どんどん常連のお客さんが増えて賑わい続ける劇場となるでしょう。

(2018年10月探訪)

大衆演劇ファンが劇団を立ち上げ! とんかつ屋さんの中の劇場 「金太郎劇場」

大衆演劇ファンが劇団を立ち上げ! とんかつ屋さんの中の劇場 「金太郎劇場」

旅芝居専門誌KANGEKI 2019年10月号に大衆演劇ファンのとんかつ屋店長が店内に劇場を作ったという記事が載っていました。なんてわくわくする話なんでしょう。2019年9月、さっそく私はその「金太郎劇場」を訪ねました。

目指すお店、とんかつ屋金太郎本店(2019年8月にとんかつレストランてつ兵衛から改名)は宮城県の北、岩手県との県境近くにあります。
幹線道路沿いにありお客さんのほとんどは車で来店するものと思われます。旅人である私は公共交通機関と徒歩にて向かいます。

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岩手県の一関駅から東北本線に乗り隣の有壁駅で下車。
この駅に電車は1時間に1本くらいしか停まらない。帰りの電車の時刻をチェック。

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広い空。民家すらまばらな土地を貫いている国道187号線を進む。

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一般人が徒歩で歩くことを想定していないのだろうか。歩道のない道路を車に気を付けながら進む。緑に囲まれた誰もいない道路をリュックを背負って一人歩くのはさみしいようで旅人ならではの楽しさがある。

この道の突き当りで大きな幹線道路国道4号線にぶつかります。そのT字路交差点を左折してすぐそばにお店があります。

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とんかつ屋金太郎本店に着きました。
KANGEKIには有壁駅から徒歩18分と書いてありましたが、私は早歩きしたので15分で着きました。

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国道4号線をはさんで見た店舗

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「とんかつ屋金太郎」と「金太郎劇場」の看板がかかっています。

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店内
昼食はここでいただくことにしました

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たくさんのメニューの中から、「上ロースかつ定食(150g)」(1280円:消費税込み・当時価格)を選択。お店のイベントで人気投票を行った際に4年連続人気No.1だったというメニューです。

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お肉やわらか~
衣サックサク
美味しかった~!

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お品書きに異彩を放っているメニューを発見。
「ばななカツ」
ばななのカツ!? OH MY GOD. これ取材だったら絶対頼まないといけないやつだよね?引くに引かれぬ男一匹。チョコレートとストロベリーのハーフ&ハーフを注文。
生クリームでデコレートされたいかにも女子が喜びそうなフォルムのデザートにアイスクリームが添えられて届きました。だが生クリームの下に見えるのは紛れもなくカツ・・
フォークとナイフでいただきました。
美味しい!ウマいよこれ!甘くやわらかいバナナとサクサク衣とまろやか生クリームのハーモニー。衣に油を感じないのです。あと熱いバナナと冷たいアイスクリームのコントラストもいいですね~。

私は本題の劇場をレポートしなければならない。

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お店に貼ってあった金太郎劇場の案内
「当店奥のお座敷席にございます!」「舞台付のご宴会場!」「ご宴会料理!」「ご宴会・イベント各種のご予約承ります!」
金太郎劇場はとんかつ屋さんの一部。通常営業の客席としても使われています。

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店内北側の奥に劇場(=宴会場)の入り口があります。

劇場内をレポートする前にここでどのような公演が行われているのか確認しておきましょう。
KANGEKI 2019年10月号に詳しく掲載されておりますがここでは簡単に紹介させていただきます。

* * *

とんかつ屋金太郎の店長の息子金太郎さんが劇団要に入団。一方大衆演劇好きな店長は地元を盛り上げる場を作りたいと店内に舞台付きの宴会場を設ける。その後金太郎さんが劇団を退団してお店で働くようになり、この機に店長は家族とお店のお客さんとで「劇団夢処族(むしょぞく)」を立ち上げる。族頭銀太郎(店長)、副族頭金太郎を中心に劇団夢処族は金太郎劇場での不定期公演の他、介護施設の慰問公演やお祭りでの公演を行っている。

* * *

私が訪ねた日は店長銀太郎さんと金太郎さんは介護施設慰問のため不在でした。

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劇団夢処族のロゴ

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2017年11月13日金太郎劇場のこけら落とし公演、劇団要による舞踊ショーの写真が飾ってありました。

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金太郎劇場場内

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舞台上に宴会の盛り上げグッズのカツラがありました。

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舞台上手にカラオケセットもあります。

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舞台の前の座敷の天井近くの照明設備。ライトがたくさん。
この照明の下の襖の先にはさらに大きな宴会場があります。

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舞台から遠い方の座敷

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奥の座敷からの眺め
襖およびテーブルを全部取り払って座布団を敷いた場合の最大席数は80にもなります。

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舞台用照明だけにするとこのようなムードたっぷりのステージとなります。

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写真ではお伝えできませんが、実際は色も豊かできらびやかに変化する照明なのです。

この日は金太郎劇場のイベント日ではありませんでしたが、いつかここで公演を観てみたいです。

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この店に来ていろんなところに目を向ければ、店長の銀太郎さんがアイデアマンで何でも明るく楽しくやっていこうという姿勢の方なのだということがよく伝わってきます。
たとえば、お店の前にはかかし人形があってそのコミカルな姿が見る者を和ませます。これまでに設置されたたくさんのかかし人形作品の写真が店内に飾られています。

大衆演劇の原点は旅芝居。全盛期は日本全国津々浦々で公演が行われたことでしょう。どこに行っても受け入れてもらえる芸能。
その特性を活かして大衆演劇の力で地元に元気と明るさをもたらそうという取り組みはとてもいいなと思います。
劇団夢処族と金太郎劇場の認知度がますます高まりますようご活躍を祈念しております。

(2019年9月探訪)

平成の終わりに生まれたショッピングモール内の劇場 「なら香芝 天満座」

平成の終わりに生まれたショッピングモール内の劇場 「なら香芝 天満座」


大衆演劇場は「劇場」と「センター」に大別されますが、「劇場」の形態はここ10年で大きな変化を見せています。かつては芝居小屋として単独の建物であることが一般的でしたが、ここ数年はテナント型劇場が増えてきました。

今回訪ねる「なら香芝天満座」はその象徴といえるでしょう。
奈良県香芝(かしば)市の「じゃんぼスクエア香芝」というショッピングモール内にあります。

なら香芝天満座の最寄駅はふたつ。
近鉄下田駅とJR香芝駅。近鉄下田駅の方が近い。

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近鉄下田駅前広場

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近鉄下田駅から徒歩で約5分
じゃんぼスクエア香芝が見えてきました。
約40の専門店からなる大きな商業施設です。

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じゃんぼスクエア香芝に入ります

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エスカレーターで劇場がある2階に上がりました。
いかにもデパートなどにありそうなフロア案内板

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壁に公演ポスターが貼ってありました。
この貼り方、いかにも天満座って感じがします。

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じゃんぼスクエア香芝は2階建てではありますが、中央部分は吹き抜けになっています。

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2階天満座スペース前の通路

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受付

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受付で木戸銭を払って右に目をやるとディスプレイがありました。
ほとんどがシングルCDとカセットテープ…。この劇場って昨年できたばかりではなかった?なぜここに置いてある?売っているのかなあ。とにかくシブすぎる品揃え。真山一郎全曲集、鏡五郎「天野屋利兵衛」etc.…

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劇場入口

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劇場内後方より
天満座おなじみの黄色い座席台

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劇場前方

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いかにも天満座なつくり

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立派な花道がしつらえてあります

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貸出ブランケット

何から何までザッツ天満座な劇場、と思っていましたが、私が訪ねたときはちょうど運営者が変わったばかりのタイミングでした。
2018年にオープンしたものの、客の入りがのびず、小屋をたたもうという話がでた際に、泉州座が運営に乗り出したようです。入口も明るくつくりなおして入りやすくしたとか。

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それまで昼の部・夜の部の1日2部公演だったのが、昼の部とその後に続くイブニング公演(1時間の舞踊)という公演形態に変わりました。

「芝居+舞踊」の本公演の後に、もっとショーを観たいお客さんをターゲットに追加舞踊ショー公演を行うというスタイルが現れ始めたのは、現代の大衆演劇業界の世相といえるでしょう。

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この日の公演は市川ひと丸劇団。
私好みの芝居と舞踊。四代目座長の公演をもっと観たい。
首都圏に関西の劇団が乗る劇場が増えないかと、いつもながらに思います。

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ラストショー

ショッピングモール内という立地とイブニングショー。
大衆演劇業界史の観点から平成という時代の終焉をとらえるとしたら私はこの劇場を思い浮かべるでしょう。

(2019年8月探訪)
プロフィール

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Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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