WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 2019年03月
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大衆演劇の秘境 玄界灘に臨む旅館で半世紀続く旅芝居 「初潮旅館」

大衆演劇の秘境 玄界灘に臨む旅館で半世紀続く旅芝居 「初潮旅館」

今回は福岡県糸島市を旅します。
糸島市HPにはこう書かれています。
「中国の歴史書『魏志倭人伝』に記されている『伊都国』があった地です。大陸との玄関口として古くから文化が栄え、農耕が営まれ、さまざまな史跡・遺跡などが今なお各所に残されています。」

糸島市は、東に福岡市、北から西にかけて玄界灘、南から西にかけては佐賀県に接しているという立地にあります。
糸島市には163の行政区があり、その最西端、佐賀県唐津市に隣接しているのが鹿家(しかか)行政区。
その鹿家の海岸沿いに1956年に開業した老舗の旅館があります。
それが今回訪ねる「初潮旅館(はつしおりょかん)」です。

私は過去に初潮旅館探訪を試みたことがあります。
九州旅行の何日か前に電話で旅館に「○月○日に大衆演劇公演はありますか」と訪ねたところ、「わからない」という回答。団体予約が入らないと公演開催が確定しないという事情だったのでしょうけれども、私は公演を断念することとなりました。
初潮旅館はホームページもなく、ネット上にほとんど情報があがっておらず、私にとっては強く探訪欲をかきたてられる謎の大衆演劇場でした。
ところが近年、情報満載の初潮旅館ホームページが開設されました。
(さらに2019年1月から初潮旅館の女将がツイッターを初めて公演情報をこまめに更新してくれています)
今回私は、あるお客さんが旅館に掲出されている「公演スケジュール」の写真をツイッターにアップしているのを確認して探訪日を決めました。公演予定となっている日でも団体予約がゼロだったら中止になるかも知れないので、念のため前日に旅館に確認の電話を入れました。

東京から空路で福岡へ。ここから初潮旅館の最寄駅、筑肥線鹿家駅を目指します。福岡空港駅を起点とする地下鉄空港線は、福岡と佐賀を結ぶJR筑肥線と直通運転をしています。福岡空港駅から約1時間20分、1回の乗り換えだけで鹿家駅に到着しました。

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鹿家駅。
スタジオジブリのアニメにでてきそうな緑に囲まれた無人駅。

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この上なく簡素な駅舎

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辺りには何もお店がない、と思いきや駅前にある家の1階が、何の看板も出ていないけれども商店となっているようでした。

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地域のコミュニティバスのバス停。
1日2便でています。でも来るのは毎週火曜日のみ・・・。

想像以上に田舎だな・・・と思いつつ旅館を目指して歩き出す。

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鹿家駅から歩いて10分弱、初潮旅館が見えてきました。

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別のアングルから
「只今劇団公演中」の赤いのぼりが見えます。

だいぶ早く着きましたので、旅館に入る前に散策します。
国道を東へ、海がよく見える場所まで歩きました。

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山と海にはさまれた鹿家の集落が見えます。
写真中央のオレンジっぽい色の屋根の横長の建物が初潮旅館

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初潮旅館近くの砂浜から。
ご覧のとおり初潮旅館は海水浴場に隣接しています。
7月・8月は多くの海水浴客で賑わうことでしょう。
ですから、大衆演劇公演は海水浴シーズンを除く、春(2~6月)と秋(9~11月)の2シーズン、年に8ヶ月間行われます。

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旅館入口
まだ開演時間の2時間半前でした。
ここでふと浮かんだ疑問。
劇場の場合は開場時間になれば中に入ることができる。
健康ランドのようなセンターの場合はその施設の利用客として営業開始時間以降に入場すればよい。
旅館での公演の場合、何時から受付してくれるのか?
とりあえず中に入ってみます。

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旅館のロビー
数人のお客さんがくつろいでいました。
フロントと思われる場所にスタッフらしき方はいない。
とりあえずロビーで待っていようとソファに身を沈めました。

やがて地元のおばあちゃんが旅館にやってきました。おばあちゃんがフロントで受付しているのを見て、私も続いて受付しました。
地元以外の人が(しかも男性が一人で)観劇に来るのはかなり珍しいようでした。何か食事をとることができないか訪ねると、親子丼を用意できるとのこと。私は、お風呂にゆっくり入った後くらいの時間に食事を出してもらうようお願いして、観劇料と食事代を支払いました。

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お風呂の前に公演場所を確認しておきたい。
1階の廊下を進みます。

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お風呂入口。その向こうに演芸場入口。

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演芸場

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演芸場前方
椅子席最前列と舞台の間にスペースがある。ここも座布団を敷いて席の確保ができるよう。劇団ファンと思われる方がすでに座布団に私物を置いて座席確保していました。

私も椅子席に私物を置いて座席確保してからお風呂タイム。
旅館の目の前は海水浴場です。お風呂には外扉もあって、海水浴場から直接お風呂場に入れる仕組みになっています。

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お風呂から上がってロビーでくつろぎます。新聞の切り抜きが置いてありました。いつの何新聞かはわかりませんが「大衆演劇の秘境でござる」「上演半世紀 口コミで人気」というタイトルで初潮旅館を紹介した記事です。
開業当初は浪曲公演が好評で、約10年後に大衆演劇公演を始めた。
初潮旅館は福岡と佐賀の老人クラブ連合会の指定旅館で利用者の8割が高齢の団体客。
といったことが書いてあり、最後にここの舞台にも立ったという玄海竜二さんのコメントが載っています。「劇場が減る中、変わらぬ雰囲気で続けられるのはなぜなのか。僕も不思議でたまらない。大衆演劇にとっての秘境でしょうね」

玄海竜二さんの指摘のとおり、ここは大衆演劇場としては、現代においては(昔ながらの姿が残っているという意味で)稀有な雰囲気を持っている。
団体客の他には、ご高齢の地元の方が、公民館に集うかのようにやってきてしゃべっている。受付は自己申告制な感じ。観劇チケットもない。ゆるーい場。ゆるーい時間の流れ。

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やがて旅館の方がロビーまで私の昼食を持ってきてくれました。
親子丼、お味噌汁、お新香、お茶セット。
窓辺の席で海を眺めながらいただきました。

旅館のスタッフはみなさんアットホーム。

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開演時間が近づきますと団体のお客さんが劇場に入ってきます。
13時30分開演。
第一部はお芝居、第二部は舞踊ショーの2時間公演です。

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この日の公演は劇団しらさぎ三兄妹
劇団責任者 あまつ秀二郎、その妻 あまつ梢、長男 あまつ慎祐、次男 あまつ祐作、末っ子 あまつ祐香
という5人によるザ・ファミリー劇団。

劇団のみなさんを写真で紹介したいのですが、
舞踊の写真をブログにアップしてよいか確認するのを失念しました。。。

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初潮旅館に貼ってあった劇団紹介写真。

劇団しらさぎ三兄妹は2019年3月に体制がかわりました。
長男、次男が座長に昇格し、二人座長となり、劇団名は「劇団しらさぎ」になります。
兄のあまつ慎祐はあまつ殿下と名を変えて座長になりました。

この日の口上挨拶はあまつ祐作さんでした。
劇団しらさぎ三兄妹は初潮旅館ではお馴染みの劇団で、春シーズンの5ヶ月間をまるまる受け持ったこともあるそうです。
なので、地元の同級生と接する時間も多く、この辺りには仲の良い友達が多いよう。
小さい頃初潮旅館の演芸場で遊んだ思い出などを語ってくれました。

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旅館に貼りだされていた公演スケジュール。

公演が終わると、団体客は旅館前に手配してあった送迎バスに乗り込みました。
私はもう一度鹿家の集落を散策してから駅に向かいました。

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JR筑肥線の車窓から見えた初潮旅館

この立地で半世紀にわたって大衆演劇公演が続いているのは本当にすごいことだと思います。

時代はめまぐるしく変化しています。大衆演劇という文化も今現在ひとつの過渡期を迎えているでしょう。
でも初潮旅館にはとてもゆっくりした時間が流れています。人の心の温かさに身を委ねているような居心地の良さがある。
初潮旅館はいつまでも大衆演劇の秘境であり続けるでしょう。


(2019年10月探訪)

喜多方の奥座敷 熱塩温泉で30年続く大衆演劇公演 「ホテルふじや」

喜多方の奥座敷 熱塩温泉で30年続く大衆演劇公演 「ホテルふじや」

今回は福島県喜多方市にある大衆演劇場の探訪です。喜多方ラーメンの店は東京でよく目にしますけれども、実際に喜多方に来たのは初めてでした。

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喜多方駅の北方、街の中心地の目抜き通りふれあい通り。

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喜多方は蔵のまち。
あちこちに昔ながらの蔵が残っています。
写真は新聞配達のお店のようでした。

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水と米がおいしい喜多方は酒づくりもさかん

大和川酒造は老舗の酒蔵で予約なしても無料で見学や試飲ができます。
ぶらりと寄ってみました。古い蔵の中を係のおねえさんが案内してくれました。
試飲コーナーでは無料試飲の他に特別なお酒を有料で飲むことができます。
「純米大吟醸いのち」は感動的な美味しさでした。有料試飲はぜったいオススメです。

ホテルふじやに連絡して、大和川酒造まで車で迎えてに来ていただくことになりました。

喜多方駅から北方に約10キロのところに熱塩温泉という温泉地があります。
ホテルふじやはここに古くからある温泉旅館。
宿の車で送迎いただいた後に、あたりを少し散歩しました。

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喜多方の目抜き通りを北に進み市街地を抜けると山の景色が目立つようになります。
この交差点を右に曲がると熱塩温泉。温泉街、、ではありますが温泉旅館は多くありません。私が確認した限りホームページを開設している宿は3軒でした。

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かなり昔からあるのだろう看板

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元湯にあった案内板。
熱塩温泉は700年前に源翁禅師という禅僧によって開かれた温泉で、元湯は寺の管轄であったそう。大変歴史がある温泉なのですね。今もその寺、示現寺はありますが、住職は住んでおらず通いのようです。

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示現寺の参道より。
正面奥に見える建物がホテルふじや。
その手前にある小さい焦茶色の小屋が元湯。

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ホテルふじや入口
左の建物はふじやの別館

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ふじやの入口を内部から。
レッドカーペットの先がフロント。

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宿泊室

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部屋の中にある洗面台。昭和を感じる。

夕食時間までお風呂に入りました。
観音風呂(湯船に観音像がある)と壁画風呂(観音様の絵が描いてある)があり、時間により男湯と女湯が入れ替わります。
色のついたしょっぱさのある温泉です。

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夕食。会津と米沢の田舎料理が主体の献立。
福島郷土料理「イカ人参」/蕪と菊の酢の物/胡桃えび/ボエムのえごま和え/山形名物酢ごぼう/車麩の煮物/若鮎の一夜干し/会津名物「馬刺し」/季節野菜ときすの天婦羅/地元野菜の柚子鍋 などなど。どうです、素敵な旅の食事でしょう?
また、自家栽培の無農薬野菜を使っているのもポイント高い。

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一夜明けて翌朝。
朝食会場は宴会場亀鶴でした。

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ご覧のとおり、大衆演劇公演が行われる部屋での朝食でした。

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お客さんの朝食時間が終わると、宴会場に公演用の椅子が並べられます。

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舞台前から見た客席

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舞台

大衆演劇公演は午前中の10:00~12:00の2時間です。
宿の精算を済ませて宴会場で開演を待ちました。
この日は平日でしたがお客さんがそれなりに入っていました。
宿泊客だけでなく、公演だけ見に来るお客さんもいます。

この日は劇団戸田の公演。
今年は、2/1~4/30の3ヶ月間は劇団戸田が公演を受け持っています。

10時、公演開始。
珍しいことに、第1部舞踊ショー、第2部芝居という2部構成でした。

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戸田ゆかり座長

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花形 戸田凛

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戸田ゆうた
喜多方生まれ

劇団戸田がホテルふじやに乗るのは19年ぶり。当時ゆかり座長は身ごもっていて大きなお腹で舞台に上がっていたそう。
ふじやでの公演期間中に戸田ゆうたを出産しました。宿のスタッフがかわるがわるゆうた君の面倒のみたのだとか。

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戸田ももみ

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戸城紗蘭(すずか)
まだ入団3ヶ月

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第1部では、ホテルふじやの会長も登場。
会長の歌にあわせてゆかり座長が踊りました。

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第2部お芝居が終わり、終演のご挨拶。

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熱塩温泉のしょっぱさのある源泉70度の温泉で作られた温泉卵をおみやげにたくさん買いました。

帰りもホテルから宿の方が送迎してくれました。
来るときに送迎いただいた方から、おすすめの喜多方ラーメンの店を聞いていました。
帰りはその店まで車で送っていただきました。

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その喜多方ラーメンのお店の名は「天高盛(てんこもり)」
喜多方駅の観光案内所に置いてある喜多方老麺会のガイドマップ(36のラーメン店が紹介されている)には掲載されていないお店です。平日の昼間でしたが地元の方が続々と入店してきます。
メニューは「らーめん」と「半チャーシュー丼」のみ。ラーメンは化学調味料を使わず、やさしい味わいでうす味。
メニューには書いていないけれども「スペシャル」と注文するとチャーシューを刻んだ状態で盛り付けてくれる。こうすると肉のうまみがスープに溶けるのだとか。私はスペシャル、妻はスペシャルの濃いめを頼みました。とても美味しかったです。初めての方はスペシャル濃いめを注文すると良いと思います。
ラーメンをいただいた後、喜多方駅まで歩き、帰路につきました。

30年も大衆演劇公演が続いているのは、ホテルふじやさんが地元の方に愛される努力を続けてきたからでしょう。本当にアットホームでくつろげる宿でした。
蔵の街並み、ラーメン、日本酒、郷土料理、温泉、そして旅芝居。喜多方観光&ホテルふじや宿泊はとってもおすすめの旅プランです。

(2019年2月探訪)

秩父の独立峰の中腹 大自然に囲まれた温泉宿での単発公演 「いこいの村ヘリテイジ美の山」

秩父の独立峰の中腹 大自然に囲まれた温泉宿での単発公演 「いこいの村ヘリテイジ美の山」

埼玉県の秩父にある温泉宿「いこいの村ヘリテイジ美の山」を訪ねました。
「美の山」は「みのやま」と読みます。

独立峰である蓑山(みのやま)の山頂に桜を植樹し「美の山公園」が昭和54年に開園しました。美の山公園は雲海の絶景が見られるスポットとして有名です。ヘリテイジ美の山は蓑山の中腹にあります。

最寄駅は秩父鉄道皆野駅。そこから5キロ近くあります。山登りですし駅から歩いて行くという選択肢はない。路線バスはありません。送迎について問い合わせると、ヘリテイジ美の山の団体客の送迎のタイミングに合わせれば皆野駅で拾ってもらえるようでした。時間を自由に使いたかったのでレンタカーで行くことにしました。

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皆野町に入り国道を進む。「皆野町役場入口」交差点に「美の山公園」の案内表示とヘリテイジ美の山の看板があります。看板には「人情時代劇 3/15迄公演中」と書かれています。ここを左折します。

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山道をくねくね登ってゆくと、ヘリテイジ美の山の建物が見えました。

時間に余裕があったので、いったん通り過ぎて美の山公園まで行ってみました。景色がよいことで有名な公園ですが、この日は天気が悪く霞がかっていて、残念ながらブログに載せたくなるような写真は撮れませんでした。

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ヘリテイジ美の山の広い駐車場に駐車して入口へ。

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フロントの上に、若姫劇団のタペストリーが飾ってあります。
そう、私は久しぶりの観劇となる若姫劇団を見るためにここまで来たのです。

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若姫劇団公演の案内幕。若姫劇団は昨年もヘリテイジ美の山で公演を行いました。

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1階ラウンジ
こことは別に開場時間まで待つための部屋が設けられていました。

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2階のけやきの間が会場です。
開場時間は11時45分。

それまで天然温泉に入りました。

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温泉から上がって廊下の窓の外に目をやると、メタセコイアの木の手前に「鳥行水場」と「鳥エサ台」が見えました。いかにも自然公園の近くという感じがします。その奥に何やら看板が見える。「散策路 絶景まで5分」と書いてある。そんなこと書かれたら行かざるを得ない。

いったん館を出て、散策路へ。ハイキングコースのような山の中の道を歩いて行く

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道の先にとてもわかりやすい絶景ポイントを見つけました。

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そこからの風景。ヘリテイジ美の山の全容がわかります。その背後の見晴らしがとてもよい。

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建物のむこうに山地に囲まれた町が見える。霞ががかっていてきれいに見えないのが残念だ。
条件がそろえばここからも雲海の絶景が見えるのかな(見えたとしてもここは宿の私有地なのでお客さん以外が立ち入ることはできません)。
また、宿の口コミでは夜景や星空鑑賞ツアーが人気のようですね。

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11時45分にけやきの間が開場しました。
廊下で待っていた大勢のご老人がいっせいに入場しました。
入口にビニール袋があります。ここで靴を脱いでビニール袋に入れて持参して中に入ります。

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会場後方のテーブル席。
机の上にはすでにお弁当が配膳されている。

若姫劇団の公演観劇は完全予約制。
お弁当+温泉付きの日帰りプランか、1泊2食の宿泊プラン。
チラシを見る限りふらっと観劇だけ来るというのはないようです。

この日は、ざっと70人くらいのお客さんで会場は賑わっていました。

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会場前方は低いテーブル席。

フロントで受付したときに席番号を書いた紙を受け取ります。それと同じ番号札が置かれている席を探して着席。やがてスタッフが紙を回収に来て、食事の準備を進めてくれます。

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舞台の緞帳。味わい深い昭和デザイン。電動で上に開く仕様。

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日帰りプランのお弁当

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お酒やお菓子は後方で買うことができます。

13:00になり若姫劇団の公演が始まりました。
第1部は人情時代劇。この日の外題は「悲恋 十九の春」。

休憩をはさんで14:30~15:30が第2部華の舞踊絵巻

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舞踊ショートップを飾る愛望美座長
幕には「若姫劇団 夢の配達人 愛望美」と書かれています。

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愛望美座長
立ち役がかっこいい

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愛美萌恵副座長

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愛美舞

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若姫有姫(あき)
小学校6年生
この日は芝居も舞踊もしっかりこなしていてとても小学生には思えなかった。
私が以前見たのは6歳のときでした。あまりの成長ぶりに驚きました。

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愛望美座長の番場の忠太郎。
これぞ大衆演劇!と思わせるかっこよさ。

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ラストショー
若姫劇団4名と助っ人の男性役者1名の5名による舞台でした。


この公演でとても印象的だったのが秩父のお客さんの和やかさ。
芝居が始まってもそこらじゅうで話し声が聞こえたりして、私は観劇マナーが気になり、ここのお客さんは観劇慣れしていないのかななどと思ったりしましたが、だんだんとここに来ているお客さんは芝居や芸事を観るのが好きな方が多いんだろうなと思うようになりました。平均年齢60超えだろう客席のみなさんがとても楽しくくつろいでいるのが伝わってくる。特別な場に来たのではなく、日常のこととして観劇に触れいてる感じがする。お客さんが劇団を見に来ているのではなく、地元のお客さんの集会に劇団員がおじゃましているかのようだ。座長のトークにもいちいちよく反応する。座長に客席から話しかけるお客さんが多い。これだけレスポンスが良いと劇団もうれしいことでしょう。
舞踊ショーでは、いわゆるハンチョウはなかったけれど、思い付きっぽい掛け声をかけたり、客席に下りてきた役者の手に直接たたんだ千円札握らせたり、地方単発公演ならではの光景を目にしました。劇場で劇団ファンが見守る中ではレイを付けるタイミングに気をつかうけれども、ここでは皆さん思い思いのタイミングでレイを付けに行っている感じがいい。皆さんマイペースだ。そして他人のマイペース対して寛容だ。
劇団とお客さんの垣根が低い。日常の延長としての楽しい場をみんな(役者もお客さんも)がマイペースに過ごす。これが大衆演劇の理想の姿なのではないか。秩父の人々は伝統芸能へ親しみが深いのだろうなと憶測しました。

帰りに秩父の町を少し散歩しました。

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秩父に来て、見つけたら必ず買うのがちちぶ餅。やわらかくてあんこがたくさん入っていて美味しい。
駅の売店は売り切れてしまうことがあるので、今回は道の駅ちちぶで購入しました。

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そして秩父といえは「みそぽてと」
これを食べないと秩父に来た気がしない。
ちなみに、秩父市のゆるキャラはみそぽてとをモチーフとした「ポテくまくん」です。
秩父のソウルフードでは「わらじカツ」というのも有名です。

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秩父は蕎麦屋さんがたくさんあります。
くるみそばが有名ですけれども、入った店にはなかったので普通の蕎麦をいただいて帰りました。

秩父には三十四の観音霊場(札所)があります。
観音霊場は西国33、坂東33、秩父34で全部まわると100になります。私は全部巡ることを生涯の目標としています。
秩父は札所が秩父界隈にしかないので全部巡りやすい。徒歩と路線バスで巡ると最低5日かかります。つまり1回巡るためには5回秩父に通わなくてはなりません。私は過去に2回巡って、現在3回目を巡っている途中。ですので今回私が秩父に来たのは十数回目になります。
秩父観音霊場の最後の札所が水潜寺(たどり着くまでハード)で、最寄駅の皆野駅から帰ることになります。ですから私にとって皆野は充実感とぐったり感が混ざった自分がいるイメージでした。近くに美の山公園という名所があることは今回探訪するまで知りませんでした。

(2019年3月探訪)

臨海地区の片隅にあった夢の小箱の記録 「みさきスタジオ」

臨海地区の片隅にあった夢の小箱の記録 「みさきスタジオ」

劇団あやめのおっかけで和歌山県にある大衆演劇場「みさきスタジオ」を訪ねることにしました。

みさきスタジオは新宮市にあります。
公演は昼の部のみ。12時開演。

電車検索してみますと、
仮に東京始発の新幹線に乗ったとしても、みさきスタジオの最寄り駅に到着するのは13時18分。
全然間に合わない・・・

私は前日夜から夜行バスで新宮に向かうことにしました。
初めての夜行バスでの大衆演劇遠征です。

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前日夜、バスタ新宿で新宮行きの長距離バスに乗り込む。

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翌朝7時頃新宮駅に着きました。
予想通り、バスの中ではほとんど寝られなかった・・・

最近の長距離バスは、各座席がセパレートされているのですね。
2人並びの席だと隣の方に気を使わなくてはいけないけれど、1人席で自分の席用のカーテンもあり気疲れはしませんでした。

みさきスタジオは新宮市にありますが、新宮市街にあるわけではありません。
みさきスタジオの場所を確認しておきましょう。

以下は新宮駅前で撮った地図の写真。
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新宮駅からJR紀勢本線で南へ2駅離れた紀伊佐野駅がみさきスタジオの最寄り駅です。
そして、新宮駅から紀伊佐野駅に行く電車は1,2時間に1本しかない・・・
新宮駅を出て紀伊佐野駅にお昼頃に到着する電車の時刻は、
11時33分、次に13時18分です。
みさきスタジオの開演時間が12時と昼の部にしては早めなのはこの時刻表を意識してのことかもしれません。
11時33分着の電車に乗れば昼の部に間に合います。

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新宮市のとなり駅の三輪崎駅と、紀伊佐野駅周辺の地図です。
ごらんのとおり、みさきスタジオは港湾地帯にあります。

後述しますが、
「何故こんなところに大衆演劇場が・・・?」という謎立地度が極めて高い場所にあります。

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JR紀勢本線の車内。
扉に津波対策が大きく表示されています。
時間があったので三輪崎駅から紀伊佐野駅まで散歩しましたが、町中には海抜表示が目立ち、南海トラフ地震に対する防災意識がとても強いことが伝わってきました。

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紀伊佐野駅
のどかな雰囲気の無人駅

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駅から少し歩くと国道に出ます。
国道の東側は住宅地ではなく、緑地帯や企業の敷地が連なる港湾地帯。
民家や生活と関連した商業施設はない。
比較的大きな企業の構造物が見える中、遠くから見るとマッチ箱のような緑色の建物がある。

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それがみさきスタジオ。

私はこれまで数多くの大衆演劇場を訪ね、「こんなところに劇場が?」と思ったことはしばしばあります。その多くはノスタルジーを感じる昔ながらの風景(自然や田んぼなど)の中にありました。
みさきスタジオがある一帯はあまりに大衆の生活の息吹に乏しい。

ただ、緑色に塗られた小箱のような建物は、まわりの風景から独立した存在感を放っており、この「何か謎めいた興味をそそられる味わい」は大衆演劇場的ともいえます。

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みさきスタジオ正面

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普通の家の玄関みたいな入口。
本当にここで大衆演劇が行われているのだろうか?
と思いつつよく見ると、

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どうやら本当に

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営業しているようだ。

黒い扉の奥に白い扉。それを開けていよいよスタジオの中へ。

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みさきスタジオ内部

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このような半月の形のテーブルが並んでいる。

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出入り扉近く、客席左後方に投光

客席後方のバーカウンターのようなスペースに小屋主らしきおばちゃんがいました。
木戸銭を支払うと、空腹だった私はここで軽食を販売していないか尋ねました。
ここでは飲食物は販売しておらずお客さんは皆持ち込みをしているとのこと。
近くにコンビにか何かないかと尋ねると、駅の方に大きなスーパーがあるが、ここからはちょっと距離があるという。
おばちゃんは私に自転車を貸すために、どこかで作業していた旦那さんを呼び寄せました。
みさきスタジオはこの老夫婦が細々と経営しているらしい。

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みさきスタジオで借りた自転車に乗ってスーパーへ

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オークワという大きなショッピングモールに到着。
あれこれとカゴに入れてレジに行くと、レジは激混み。
この列を待っていては開演に間に合わないと判断し、カゴの中の商品を棚に戻して、スーパー内のパン屋さんでパンを買いました。

みさきスタジオに戻る。
小屋主?のおじさんに聞くと、以前は昼に大衆演劇、夜にカラオケホールという経営をしていたが、カラオケホールは著作権料の支払いの負担が大きくやってられないので、大衆演劇のみにしたとのこと。
カラオケホールというのはおそらく、歌う仲間達で個室を借り切るカラオケボックスとは違い、他の見知らぬお客さんと一緒に集いステージ上でカラオケを歌う形態なのだろう。関西の方に多いのでしょうか。
「みさきスタジオ」という名前はカラオケホールを意識した屋号だったのですね。

12:00劇団あやめの公演が始まりました。
劇団あやめは公演中の写真撮影はNGなので公演の様子はご紹介できません。

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休憩時間に劇団が販売していたお菓子セット(300円)を買いました。
お客さんは多くなかったけれども、ご祝儀レイを求めるお客さんの割合は多かったです。

終演後、小屋主のマスターに声をかけられました。
紀伊佐野駅から出る電車の本数は少ない。新宮駅行きのバスは本数が多い。バス停まで車で送迎しますよ。とのことでした。

スタジオの外に出ると、劇団あやめのメンバーがお見送り。その横に車が待機していました。
車にはすでに一人お客さんが乗っていました。この方はみさきスタジオの常連さんのよう。スタジオのマスターはこのお客さんのために行きと帰りに勝浦まで送迎しているそう!勝浦はここから新宮駅よりも遠い。なんてサービス精神が大きいマスターなんでしょう。

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みさきスタジオの最寄のバス停ではなく、よりバス本数が多い三輪崎のバス停まで送迎してくれました。勝浦のお客さんにとっては逆方向で、遠回りの寄り道をしてくれた格好になります。
間もなくバスがやってきて新宮駅まで移動。

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思いがけず時間が空いたので、新宮駅近くにある「浮島の森」に寄りました。南北96m・東西55mの島が池に浮かんでいる。島が水より比重の軽い泥炭でできているので浮かぶのです。私は十数年ぶりに浮島に降り立ちました。


みさきスタジオは残念ながら2019年1月の公演をもって大衆演劇の公演をやめてしまいました。
あの人情味ある小屋主夫婦はその後どうされているのでしょうか。
大衆演劇場としての存在期間は、まるでつかの間の夢だったかのような短さです。
あの緑色の小箱はやがて誰の記憶からも消えてゆくのでしょう。
本ブログは、海の近くの人通りの少ない一角に夢のように現れて消えた演劇場のささやかな記録です。

(2018年11月探訪)

プロフィール

notarico

Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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