福岡と大分の境にある広大な複合施設の中の劇場 「湯の迫温泉 ぶらり劇場」
大衆演劇場と寺社仏閣をめぐる旅<山口・福岡・大分編> 旅日記その④
福岡と大分の境にある広大な複合施設の中の劇場 「湯の迫温泉 ぶらり劇場」
旅の4日目、小倉駅前のレンタカー屋を朝一番に出発して大分県方面へ車で南下しました。

菊池寛に「恩讐の彼方に」という短編小説があります。こんなあらすじです。
市九郎という男は心ならずも主人を殺めてしまう。そのまま悪の道に入ってしまい追剥や殺人を平気にするようになる。
ある若い男女を殺めた後、その悔恨の念から改心し、得度して了海という僧になった。仏道に帰依し衆生済度のために身命を捨てて人々を救うべく諸国を巡り歩いた。
羅漢寺に詣でる途中、非業の死を遂げた若者を見た。そこは山国川に聳える絶壁の中腹にかかっている危なげな桟道であった。この難所で年に何人もが命を落としているという。
この断崖を観た了海の心に大誓願が起こった。了海はこの大絶壁を掘り貫こうとひとり槌と鑿を手にした。
この途方もない企てにはじめは了海を狂人扱いした村人も長い年月を経ると了海を聖人のように思い作業に協力するようになった。21年目、ついに洞窟は貫通した。市九郎が殺した主人の息子も長い年月をかけてようやく仇である了海をみつけたが、この大事業を目にして恨みの念は消え、了海の手をとり二人して感激の涙を流した。
これは実話をタネとした創作です。
諸国巡礼の旅をしていた禅海和尚は、山国川に聳え立つ競秀峰にかかる鎖渡しの難所を見て、岩を削って道をつくることを決意し、30年の年月をかけて鑿と槌だけで洞窟を彫りぬきました。これを「青の洞門」といいます。
私が運転する車は福岡県を抜け大分県へ。まず青の洞門を訪ねます。

明治39年から40年にかけて陸軍の車両が通行できるように道路は拡張され、青の洞門の原型はほぼなくなってしまいました。
一部当時のままの通路が残っており、禅海和尚の姿に思いを馳せることができます。

川越しに見た青の洞門がある絶壁。青の洞門掘削時にできた明り取りの穴が見えます。
青の洞門を抜けて羅漢寺へ。
羅漢寺は1300年前に開かれた古刹。

羅漢寺の本堂は山の高いところにあります。
もちろん歩いてゆけますが、リフトで上ってゆくこともできます。
リフト乗り場近くの「禅海堂」に、禅海和尚が使用した道具などの遺品が展示してあります。

羅漢寺は山の上の巨岩とあいまみえるように建っている、いかにも霊地といった感じの古刹です。
「百寺巡礼」で五木寛之が最期に訪れたのがここでした。
無漏窟という洞窟にある五百羅漢像の他、多くの石仏が羅漢寺に安置されています。
羅漢寺があるのは大分県の中津市。
中津といえば福澤諭吉の故郷です。
中津駅近くの福澤諭吉生家へ向かいました。

福澤諭吉旧居。
同じ敷地にある福澤記念館もじっくり見学しました。
ここ数年、東京の街中にからあげ屋さんが増えました。
どうやらそれは中津のからあげ屋が東京に進出したことがきっかけのようですね。
中津市内にはからあげ専門店や持ち帰り専門店など、からあげ屋さんがとてもたくさんあります。最近は「からあげの聖地」なんて呼ばれているようですね。なぜこんなに中津でからあげが盛んになったのかはっきりした理由はわからないようです。

車を運転するとあちこちにからあげ屋さんの看板を見つけます。

できたてのからあげをたくさん食べました。旨い!安い!
この後は、大分県中津市のおとなり、福岡県築上郡上毛町(こうげまち)にある大衆演劇場を目指します。

かなり広い敷地に駐車場といくつかの建物がある複合施設。
この複合施設の正式名称がはっきりしていないところが謎です。
・こうげ武楽里(ぶらり)
・太平楽
という二つの表記が並存していています。どうなっているのか?
この複合施設の中に「湯の迫温泉」という温泉施設があり、
そのなかに「ぶらり劇場」という大衆演劇場があるのです。
かつてはこの温泉施設の名前が「太平楽」でそれが「湯の迫温泉」に変わったものと思われます。

ぶらり劇場の送迎バスがありました。

おみやげ処 とよの国

産直処 さわやか市
上毛町は福岡県ですが、昔から文化的には中津に近いようです。からあげの専門店もありました。

そしてこれが湯の迫温泉の建物。

建物内部。建物外観は異国情緒がただよっていましたが中は和の雰囲気。
湯の迫温泉の入口が見えます。入口で靴を靴箱に入れます。
フロントで支払い。
ここは、「温泉だけ」「観劇だけ」「温泉+観劇」を選択できたり、大衆演劇は昼の部と夜の部で料金が違ったりと、特徴ある大衆演劇場。

産直野菜を売っていました

酸素カプセル。珍しい。
ふつうのリラックスルームはありません。
けれど200円15分のマッサージが気持ちよかった。使っている人は多かったです。

右手に温泉入口、まっすぐ行くとぶらり劇場。
お風呂にはシャンプーとボディーソープが置いてありますが、タオルはありません。タオルは持参するかレンタルするかになります。

廊下の装飾は大衆演劇場っぽい雰囲気がでています。

ぶらり劇場入口。
開場は開演1時間前。開場前にお客さんが入口に並ぶということもなく、のんびりした雰囲気。

一番珍しいのは予約料がかからない(2名以上)ということでしょうか。
これは夫婦で観劇する人にはうれしい。

温泉と観劇が別料金のセンターでは、観劇料金を払った人を見分ける仕組みが必要。
ぶらり劇場では入場時にこのようなストラップをもらいます。

ぶらり劇場 場内

前方

後方のテーブル席

右サイドにあるちょっと高いテーブル席

左サイドの花道。

ぶらり劇場のとなりに食事処があります。劇場内でも食事処と同じ食事ができます。

となりの食事処でアイスクリームを食べました。美味しかった。
この日の公演は市川市二郎座長の劇団三桝屋。
30年以上を座長を続けている市二郎座長。ほとんど休日がない大衆演劇の世界で30年も座長を続けるのはすごいことだと思います。
市二郎座長には別の旅先で親切にしてもらったことがあります。(その時のブログはこちら)

市川市二郎座長。
粋でかっこいい舞踊。見応えのある軽さとでもいうのでしょうか、熟練者のみが醸し出せる軽さ。派手な動きも軽い。若い役者は狙う芸・アピールする芸が多いけれども、こういう達人の存在は本当に貴重だと思います。

市川市二郎座長と弟の市川謙太郎。

ラストショー
夜の部のお客さんは42名でした。劇場入口に入場者数を書いてあるのです。
入場者数だけでなく大入り人数基準も明記されていました。これらを公表するのも珍しい。
細かいところで「珍しい」がいろいろ見つかる大衆演劇場でした。
夜の部が終わり湯の迫温泉の外に出ると雨。
すぐ車に乗って中津のホテルに移動しました。
(つづく)
■大衆演劇場と寺社仏閣をめぐる旅<山口・福岡・大分編> 旅日記 もくじ
1日目:映画シアターも大衆演劇場もあるサービス多彩な健康ランド 「くだまつ健康パーク」
2日目:山に囲まれた歴史ある温泉地の巨大娯楽施設付ホテル 「湯本観光ホテル西京 夢遊湯亭」
3日目:大衆演劇の灯を絶やさないために・・・ 小倉にオープンした待望の劇場 「宝劇場」
4日目:福岡と大分の境にある広大な複合施設の中の劇場 「湯の迫温泉 ぶらり劇場」
5日目:神仏習合の里 国東半島旅行記
6日目:かつて炭鉱で栄えた地に復活した旅芝居の文化 「見聞劇場」
7日目:博多の大衆演劇と十日恵比須
福岡と大分の境にある広大な複合施設の中の劇場 「湯の迫温泉 ぶらり劇場」
旅の4日目、小倉駅前のレンタカー屋を朝一番に出発して大分県方面へ車で南下しました。

菊池寛に「恩讐の彼方に」という短編小説があります。こんなあらすじです。
市九郎という男は心ならずも主人を殺めてしまう。そのまま悪の道に入ってしまい追剥や殺人を平気にするようになる。
ある若い男女を殺めた後、その悔恨の念から改心し、得度して了海という僧になった。仏道に帰依し衆生済度のために身命を捨てて人々を救うべく諸国を巡り歩いた。
羅漢寺に詣でる途中、非業の死を遂げた若者を見た。そこは山国川に聳える絶壁の中腹にかかっている危なげな桟道であった。この難所で年に何人もが命を落としているという。
この断崖を観た了海の心に大誓願が起こった。了海はこの大絶壁を掘り貫こうとひとり槌と鑿を手にした。
この途方もない企てにはじめは了海を狂人扱いした村人も長い年月を経ると了海を聖人のように思い作業に協力するようになった。21年目、ついに洞窟は貫通した。市九郎が殺した主人の息子も長い年月をかけてようやく仇である了海をみつけたが、この大事業を目にして恨みの念は消え、了海の手をとり二人して感激の涙を流した。
これは実話をタネとした創作です。
諸国巡礼の旅をしていた禅海和尚は、山国川に聳え立つ競秀峰にかかる鎖渡しの難所を見て、岩を削って道をつくることを決意し、30年の年月をかけて鑿と槌だけで洞窟を彫りぬきました。これを「青の洞門」といいます。
私が運転する車は福岡県を抜け大分県へ。まず青の洞門を訪ねます。

明治39年から40年にかけて陸軍の車両が通行できるように道路は拡張され、青の洞門の原型はほぼなくなってしまいました。
一部当時のままの通路が残っており、禅海和尚の姿に思いを馳せることができます。

川越しに見た青の洞門がある絶壁。青の洞門掘削時にできた明り取りの穴が見えます。
青の洞門を抜けて羅漢寺へ。
羅漢寺は1300年前に開かれた古刹。

羅漢寺の本堂は山の高いところにあります。
もちろん歩いてゆけますが、リフトで上ってゆくこともできます。
リフト乗り場近くの「禅海堂」に、禅海和尚が使用した道具などの遺品が展示してあります。

羅漢寺は山の上の巨岩とあいまみえるように建っている、いかにも霊地といった感じの古刹です。
「百寺巡礼」で五木寛之が最期に訪れたのがここでした。
無漏窟という洞窟にある五百羅漢像の他、多くの石仏が羅漢寺に安置されています。
羅漢寺があるのは大分県の中津市。
中津といえば福澤諭吉の故郷です。
中津駅近くの福澤諭吉生家へ向かいました。

福澤諭吉旧居。
同じ敷地にある福澤記念館もじっくり見学しました。
ここ数年、東京の街中にからあげ屋さんが増えました。
どうやらそれは中津のからあげ屋が東京に進出したことがきっかけのようですね。
中津市内にはからあげ専門店や持ち帰り専門店など、からあげ屋さんがとてもたくさんあります。最近は「からあげの聖地」なんて呼ばれているようですね。なぜこんなに中津でからあげが盛んになったのかはっきりした理由はわからないようです。

車を運転するとあちこちにからあげ屋さんの看板を見つけます。

できたてのからあげをたくさん食べました。旨い!安い!
この後は、大分県中津市のおとなり、福岡県築上郡上毛町(こうげまち)にある大衆演劇場を目指します。

かなり広い敷地に駐車場といくつかの建物がある複合施設。
この複合施設の正式名称がはっきりしていないところが謎です。
・こうげ武楽里(ぶらり)
・太平楽
という二つの表記が並存していています。どうなっているのか?
この複合施設の中に「湯の迫温泉」という温泉施設があり、
そのなかに「ぶらり劇場」という大衆演劇場があるのです。
かつてはこの温泉施設の名前が「太平楽」でそれが「湯の迫温泉」に変わったものと思われます。

ぶらり劇場の送迎バスがありました。

おみやげ処 とよの国

産直処 さわやか市
上毛町は福岡県ですが、昔から文化的には中津に近いようです。からあげの専門店もありました。

そしてこれが湯の迫温泉の建物。

建物内部。建物外観は異国情緒がただよっていましたが中は和の雰囲気。
湯の迫温泉の入口が見えます。入口で靴を靴箱に入れます。
フロントで支払い。
ここは、「温泉だけ」「観劇だけ」「温泉+観劇」を選択できたり、大衆演劇は昼の部と夜の部で料金が違ったりと、特徴ある大衆演劇場。

産直野菜を売っていました

酸素カプセル。珍しい。
ふつうのリラックスルームはありません。
けれど200円15分のマッサージが気持ちよかった。使っている人は多かったです。

右手に温泉入口、まっすぐ行くとぶらり劇場。
お風呂にはシャンプーとボディーソープが置いてありますが、タオルはありません。タオルは持参するかレンタルするかになります。

廊下の装飾は大衆演劇場っぽい雰囲気がでています。

ぶらり劇場入口。
開場は開演1時間前。開場前にお客さんが入口に並ぶということもなく、のんびりした雰囲気。

一番珍しいのは予約料がかからない(2名以上)ということでしょうか。
これは夫婦で観劇する人にはうれしい。

温泉と観劇が別料金のセンターでは、観劇料金を払った人を見分ける仕組みが必要。
ぶらり劇場では入場時にこのようなストラップをもらいます。

ぶらり劇場 場内

前方

後方のテーブル席

右サイドにあるちょっと高いテーブル席

左サイドの花道。

ぶらり劇場のとなりに食事処があります。劇場内でも食事処と同じ食事ができます。

となりの食事処でアイスクリームを食べました。美味しかった。
この日の公演は市川市二郎座長の劇団三桝屋。
30年以上を座長を続けている市二郎座長。ほとんど休日がない大衆演劇の世界で30年も座長を続けるのはすごいことだと思います。
市二郎座長には別の旅先で親切にしてもらったことがあります。(その時のブログはこちら)

市川市二郎座長。
粋でかっこいい舞踊。見応えのある軽さとでもいうのでしょうか、熟練者のみが醸し出せる軽さ。派手な動きも軽い。若い役者は狙う芸・アピールする芸が多いけれども、こういう達人の存在は本当に貴重だと思います。

市川市二郎座長と弟の市川謙太郎。

ラストショー
夜の部のお客さんは42名でした。劇場入口に入場者数を書いてあるのです。
入場者数だけでなく大入り人数基準も明記されていました。これらを公表するのも珍しい。
細かいところで「珍しい」がいろいろ見つかる大衆演劇場でした。
夜の部が終わり湯の迫温泉の外に出ると雨。
すぐ車に乗って中津のホテルに移動しました。
(つづく)
(2017年1月)
■大衆演劇場と寺社仏閣をめぐる旅<山口・福岡・大分編> 旅日記 もくじ
1日目:映画シアターも大衆演劇場もあるサービス多彩な健康ランド 「くだまつ健康パーク」
2日目:山に囲まれた歴史ある温泉地の巨大娯楽施設付ホテル 「湯本観光ホテル西京 夢遊湯亭」
3日目:大衆演劇の灯を絶やさないために・・・ 小倉にオープンした待望の劇場 「宝劇場」
4日目:福岡と大分の境にある広大な複合施設の中の劇場 「湯の迫温泉 ぶらり劇場」
5日目:神仏習合の里 国東半島旅行記
6日目:かつて炭鉱で栄えた地に復活した旅芝居の文化 「見聞劇場」
7日目:博多の大衆演劇と十日恵比須