住宅地にある平屋のシンプルなセンター「ゆ~ぽっぽ」
【広島大衆演劇場めぐり4日間一人旅】2日目
住宅地にある平屋のシンプルなセンター 「ゆ~ぽっぽ」
2日目の朝、三原駅近くのホテルを出て、電車へ広島方面へ。
次の目的地「ゆ~ぽっぽ」は広島駅の北方10km弱のところにある。
広島駅から芸備線に乗り換えて安芸矢口駅から歩いてゆこうと思っていたが、何かの自然災害があったらしく、広島駅のホームに芸備線一部運休のアナウンスが流れていた。ちょうど乗ろうとしていた電車が運休となった。本数の少ない路線で次の出発予定までかなり時間がある。バスでゆ~ぽっぽに向かうことにした。バスの時刻表もちゃんと旅の前にプリントアウトして持ってきている。

広島駅前7番バス乗り場から、広島バス30号高陽線に乗る。
バスは原爆ドーム近くの広島バスセンターを経由して、市街地を抜けて川沿いの幹線道路を北上する。

バスは大きな道路から住宅地内を貫く道路に入る。そこからしばらく進んだ上小田バス停で下車。
広島駅からは約30分。
なんの変哲もないのどかな住宅街。
ここから西の方5分くらいのところにゆ~ぽっぽがあるはずだ。

途中で芸備線の線路を渡る。
ゆ~ぽっぽはここからかなり近いはずだ。
しかし、健康ランド的な建物は視界のどこにも認められない。
スマホの地図アプリをたよりに目的の住所に近づいてゆくが、もう目前になるはずなのに、建物や案内看板などがまったく見当たらず不安になってくる。これまでも大衆演芸探訪の際に場所がわからず迷ったことが何度もあった。久しぶりに見知らぬ土地でひとりさみしく不安になる体験をした。
後で気づいたが、このとき通った道はバス停からゆ~ぽっぽまでの最短ルートではなかった。上小田バス停を降りたら少しバス通りを戻り(南下し)西方の道に入るのが正しい。

ようやく「ゆ~ぽっぽ」を発見した。
勝手に大きな建物をイメージしていたが、ゆーぽっぽの諸施設は平屋で高い建物ではない。これでは離れた場所から見つけにくいわけだ。
ここはいわゆる「センター」に該当するが、健康ランドのようにさまざまなサービスを提供する大型複合施設ではなく、大きい銭湯に食堂と劇場が併設された、といった感じのシンプルな「スーパー銭湯」だ。住宅地の中にぽつんと存在しているのも銭湯っぽい。
入口はいって正面に「女湯」と「男湯」ののれんが見えてその間に受付カウンターがある。

券売機で入浴券を買う。
大衆演劇観劇の場合は入浴とのセットの券を買う。指定席券200円というのも買ってみた。
券を靴箱の鍵とともにフロントの係員に渡す。

お昼の部の観劇チケット=演劇通行手形と指定席券を受け取る。
大衆演劇場開場まで時間がある。まずはお風呂へ。
ここは銭湯であり温泉施設ではない。
お風呂は二つのエリアに分かれている。
基本料金で入場した人は洗い場と大浴場あるエリアしか使えないが、料金の高い露天・サウナコースで入場した人は露天風呂やサウナが利用できる。

お風呂から上がってから昼食の時間とした。
演劇公演が行われる宴会場では飲食はできない。
1階にある食堂「ぽっぽ亭」で食事することになる。
ぽっぽ亭も券売機で食券を買って利用する。
風呂上りのビールを飲みながら開場時間を待つ。

大衆演劇場は別棟にあり、入浴棟と渡り廊下でつながっている。

大衆演劇場入口。
廊下の壁にはこれまで講演した劇団の座長の写真とサインが飾ってある。

宴会場(大衆演劇場)全景。
後方の自由席ゾーンは畳に座布団を並べただけである。

前方の指定席ゾーンは座椅子席。
座椅子と座椅子の前後の間隔は、大きくない女性であればちょうど足が伸ばせる程度。
もっと広い方がうれしいが、足が伸ばせず窮屈な劇場もあるし、これだけのスペースを確保しているだけでもありがたいといえる。

舞台
花道はない
お昼の部は13時30分開演。
この日は白富士一馬座長率いる劇団京弥の公演。
と書いたが、おそらく一馬座長はこの表現は好まないだろう。
というのは白富士一馬座長は「俺が座長だ」「俺が主役だ」というタイプの役者ではなく、座員みんなが活躍する劇団、という思いを強くもっている。
一時期は、一馬三代目座長・健太座長・龍太若座長の3兄弟3人座長に副座長の洸という座長だらけ劇団だった。そのうち健太座長は劇団千章に移籍した。
もともとは関西で活動していたが一馬が座長になって(2003年)から数年後、関東に移ってきた。私のホームグラウンドである川崎大島劇場にものっていたので私は毎年劇団京弥を観劇していた。
その後、どういう理由かは知らないが、2016年に劇団京弥は関東を離れふたたび関西をまわることとなった。
私にとって広島県で劇団京弥を見るのは何か不思議な感じだ。

第一部お芝居が終わって口上挨拶。
でもまっっったく変わらないな、劇団京弥は。
多分昔からあるお芝居を脚色したり踊りのスタイルを変えたりするのが好きではないのだと思う。
とてもクラシックな劇団だ。他の劇団はいろいろ新しい(現代的な)何かを試みている。だから相対的に他の劇団より地味になってしまったのかもしれないが、先代から受け継がれた芸を大切にしている姿勢には安心感が持てる。

白富士一馬三代目座長
今月劇団京弥には劇団蝶々の中野弘次郎座長が帯同していた。
中野弘次郎座長は端正な劇団京弥の中にあってかなりのインパクトを放っていた。
京弥には豪快な役者がいない。弘次郎座長が加われば鬼に金棒。
この日の芝居は金棒が本当に光っていた。3枚目の悪役。アドリブ豊かで存在感が大きく芝居に彩りを与えてすばらしい活躍。
昨今の大衆演劇界では芝居の途中に楽屋ネタをアドリブで入れることが約束事かのように行われている。
その多くが「想定どおりのアドリブ」と化してしまい、間の抜けた楽屋ネタが横行している。
それでもお客さんは笑ってくれるから、本来の芝居そのものの力で笑いが取れない状況において役者は楽屋ネタ・内輪ネタに走ってしまう。
楽屋ネタは笑いを取れる反面、物語の展開を止めてしまう毒薬にもなりうる。芝居の流れを保ったままサラっとやるのが望ましい。
しかしどうも最近は楽屋ネタをたくさん入れるのがお客さんへのサービスだと思っている役者が増えているのではないか。
もはやそれはアドリブ「芸」といえるものではない。絶妙なタイミングで機転のきいた楽屋ネタが入るから面白いのだ。
もちろん本当のアドリブ芸は楽屋ネタを使うものではなく、その登場人物になりきってその場のインスピレーションによってお客さんを惹きつける演技をすることである。
中野弘次郎座長の芝居の本筋を盛り上げる自由闊達な演技はさすがはプロ、さすがは座長と私をうならせるものがあった。

中野弘次郎劇団蝶々座長
弘次郎座長は芝居では3枚目役の滑稽な化粧であったが、芝居は別人のようにシブくかっこよかった。

第二部舞踊ショー ラストステージ
昼の部が終了した後、団体のお客さんは建物前で待ち構えていたゆ~ぽっぽの送迎バスに乗って帰っていった。
スーパー銭湯は温泉ランドよりも集客力が弱いだろう。ゆ~ぽっぽの大衆演劇の存続は団体のお客さんの獲得にかかっているのかも知れない。
私は帰りもバスを使うこととした。
上小田バス停で乗って広島バスセンターで降りる。

せっかくなので広島風お好み焼きを食す。
2017年1月末で閉館してしまう広島第一劇場の近くにあるカプセルホテルがこの日の寝床。
ビジネスホテルはとれなかった。
広島のホテルの予約が大阪以上に厳しいは思わなかった。
(2日目おわり。3日目につづく)
住宅地にある平屋のシンプルなセンター 「ゆ~ぽっぽ」
2日目の朝、三原駅近くのホテルを出て、電車へ広島方面へ。
次の目的地「ゆ~ぽっぽ」は広島駅の北方10km弱のところにある。
広島駅から芸備線に乗り換えて安芸矢口駅から歩いてゆこうと思っていたが、何かの自然災害があったらしく、広島駅のホームに芸備線一部運休のアナウンスが流れていた。ちょうど乗ろうとしていた電車が運休となった。本数の少ない路線で次の出発予定までかなり時間がある。バスでゆ~ぽっぽに向かうことにした。バスの時刻表もちゃんと旅の前にプリントアウトして持ってきている。

広島駅前7番バス乗り場から、広島バス30号高陽線に乗る。
バスは原爆ドーム近くの広島バスセンターを経由して、市街地を抜けて川沿いの幹線道路を北上する。

バスは大きな道路から住宅地内を貫く道路に入る。そこからしばらく進んだ上小田バス停で下車。
広島駅からは約30分。
なんの変哲もないのどかな住宅街。
ここから西の方5分くらいのところにゆ~ぽっぽがあるはずだ。

途中で芸備線の線路を渡る。
ゆ~ぽっぽはここからかなり近いはずだ。
しかし、健康ランド的な建物は視界のどこにも認められない。
スマホの地図アプリをたよりに目的の住所に近づいてゆくが、もう目前になるはずなのに、建物や案内看板などがまったく見当たらず不安になってくる。これまでも大衆演芸探訪の際に場所がわからず迷ったことが何度もあった。久しぶりに見知らぬ土地でひとりさみしく不安になる体験をした。
後で気づいたが、このとき通った道はバス停からゆ~ぽっぽまでの最短ルートではなかった。上小田バス停を降りたら少しバス通りを戻り(南下し)西方の道に入るのが正しい。

ようやく「ゆ~ぽっぽ」を発見した。
勝手に大きな建物をイメージしていたが、ゆーぽっぽの諸施設は平屋で高い建物ではない。これでは離れた場所から見つけにくいわけだ。
ここはいわゆる「センター」に該当するが、健康ランドのようにさまざまなサービスを提供する大型複合施設ではなく、大きい銭湯に食堂と劇場が併設された、といった感じのシンプルな「スーパー銭湯」だ。住宅地の中にぽつんと存在しているのも銭湯っぽい。
入口はいって正面に「女湯」と「男湯」ののれんが見えてその間に受付カウンターがある。

券売機で入浴券を買う。
大衆演劇観劇の場合は入浴とのセットの券を買う。指定席券200円というのも買ってみた。
券を靴箱の鍵とともにフロントの係員に渡す。

お昼の部の観劇チケット=演劇通行手形と指定席券を受け取る。
大衆演劇場開場まで時間がある。まずはお風呂へ。
ここは銭湯であり温泉施設ではない。
お風呂は二つのエリアに分かれている。
基本料金で入場した人は洗い場と大浴場あるエリアしか使えないが、料金の高い露天・サウナコースで入場した人は露天風呂やサウナが利用できる。

お風呂から上がってから昼食の時間とした。
演劇公演が行われる宴会場では飲食はできない。
1階にある食堂「ぽっぽ亭」で食事することになる。
ぽっぽ亭も券売機で食券を買って利用する。
風呂上りのビールを飲みながら開場時間を待つ。

大衆演劇場は別棟にあり、入浴棟と渡り廊下でつながっている。

大衆演劇場入口。
廊下の壁にはこれまで講演した劇団の座長の写真とサインが飾ってある。

宴会場(大衆演劇場)全景。
後方の自由席ゾーンは畳に座布団を並べただけである。

前方の指定席ゾーンは座椅子席。
座椅子と座椅子の前後の間隔は、大きくない女性であればちょうど足が伸ばせる程度。
もっと広い方がうれしいが、足が伸ばせず窮屈な劇場もあるし、これだけのスペースを確保しているだけでもありがたいといえる。

舞台
花道はない
お昼の部は13時30分開演。
この日は白富士一馬座長率いる劇団京弥の公演。
と書いたが、おそらく一馬座長はこの表現は好まないだろう。
というのは白富士一馬座長は「俺が座長だ」「俺が主役だ」というタイプの役者ではなく、座員みんなが活躍する劇団、という思いを強くもっている。
一時期は、一馬三代目座長・健太座長・龍太若座長の3兄弟3人座長に副座長の洸という座長だらけ劇団だった。そのうち健太座長は劇団千章に移籍した。
もともとは関西で活動していたが一馬が座長になって(2003年)から数年後、関東に移ってきた。私のホームグラウンドである川崎大島劇場にものっていたので私は毎年劇団京弥を観劇していた。
その後、どういう理由かは知らないが、2016年に劇団京弥は関東を離れふたたび関西をまわることとなった。
私にとって広島県で劇団京弥を見るのは何か不思議な感じだ。

第一部お芝居が終わって口上挨拶。
でもまっっったく変わらないな、劇団京弥は。
多分昔からあるお芝居を脚色したり踊りのスタイルを変えたりするのが好きではないのだと思う。
とてもクラシックな劇団だ。他の劇団はいろいろ新しい(現代的な)何かを試みている。だから相対的に他の劇団より地味になってしまったのかもしれないが、先代から受け継がれた芸を大切にしている姿勢には安心感が持てる。

白富士一馬三代目座長
今月劇団京弥には劇団蝶々の中野弘次郎座長が帯同していた。
中野弘次郎座長は端正な劇団京弥の中にあってかなりのインパクトを放っていた。
京弥には豪快な役者がいない。弘次郎座長が加われば鬼に金棒。
この日の芝居は金棒が本当に光っていた。3枚目の悪役。アドリブ豊かで存在感が大きく芝居に彩りを与えてすばらしい活躍。
昨今の大衆演劇界では芝居の途中に楽屋ネタをアドリブで入れることが約束事かのように行われている。
その多くが「想定どおりのアドリブ」と化してしまい、間の抜けた楽屋ネタが横行している。
それでもお客さんは笑ってくれるから、本来の芝居そのものの力で笑いが取れない状況において役者は楽屋ネタ・内輪ネタに走ってしまう。
楽屋ネタは笑いを取れる反面、物語の展開を止めてしまう毒薬にもなりうる。芝居の流れを保ったままサラっとやるのが望ましい。
しかしどうも最近は楽屋ネタをたくさん入れるのがお客さんへのサービスだと思っている役者が増えているのではないか。
もはやそれはアドリブ「芸」といえるものではない。絶妙なタイミングで機転のきいた楽屋ネタが入るから面白いのだ。
もちろん本当のアドリブ芸は楽屋ネタを使うものではなく、その登場人物になりきってその場のインスピレーションによってお客さんを惹きつける演技をすることである。
中野弘次郎座長の芝居の本筋を盛り上げる自由闊達な演技はさすがはプロ、さすがは座長と私をうならせるものがあった。

中野弘次郎劇団蝶々座長
弘次郎座長は芝居では3枚目役の滑稽な化粧であったが、芝居は別人のようにシブくかっこよかった。

第二部舞踊ショー ラストステージ
昼の部が終了した後、団体のお客さんは建物前で待ち構えていたゆ~ぽっぽの送迎バスに乗って帰っていった。
スーパー銭湯は温泉ランドよりも集客力が弱いだろう。ゆ~ぽっぽの大衆演劇の存続は団体のお客さんの獲得にかかっているのかも知れない。
私は帰りもバスを使うこととした。
上小田バス停で乗って広島バスセンターで降りる。

せっかくなので広島風お好み焼きを食す。
2017年1月末で閉館してしまう広島第一劇場の近くにあるカプセルホテルがこの日の寝床。
ビジネスホテルはとれなかった。
広島のホテルの予約が大阪以上に厳しいは思わなかった。
(2日目おわり。3日目につづく)