WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 2015年03月
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「劇団舞踊絵巻観覧記」剣戟はる駒座倭組 木川劇場公演 2015.3.13

このブログでは主に大衆演劇場にスポットをあてた記事を掲載しております。
劇団や役者さんの魅力については、他の多くの大衆演劇ファンの方々がブログやツイッターで伝えておりますし、私のブログではあまり大々的にとりあげることはしませんでした。

しかし、私はとある劇団の大ファンになってしまい、この劇団の魅力を多くの方に伝えたいという衝動が抑えきれず、ここに「劇団舞踊絵巻観覧記」と題する記事を掲載させていただきます。(多くの写真は絵巻っぽい雰囲気に加工しております)


劇団舞踊絵巻観覧記
剣戟はる駒座 倭組 於:大阪 木川劇場 2013.3.13夜の部

2013年10月、剣戟はる駒座は、津川鵣汀率いる「鵣汀組」と不動倭座長率いる「倭組」に分かれました。それまでの座長の津川竜座長は総座長として両方の劇団に出演されることになりました。

独立当初「倭組」は関東をまわっておりました。そして2014年2月、私のホームグラウンドである川崎大島劇場にやってきました。そこで私は、それまで観てきた劇団にはない、楽しい演出・明るいノリの倭組のステージにすっかり魅了されました。「大衆演劇に新時代が来た」とさえ思いました。私は倭組のファンになり、関東以外の公演地に追っかけしたこともありました。

2015年3月大阪に行った折り、久し振りに倭組の公演を観ました。今回はそのレポートです。

【倭組の主なメンバー】
座長:不動倭 (ふどうやまと)
代表代行:勝小虎(かつことら)
若手花形:勝彪華(かつひゅうが)
宝華弥寿(ほうがみこと)
叶夕晏(かなたあん)
宝華紗宮子(ほうがさくらこ)
叶夕茶々(かなたちゃちゃ)

倭組の舞踊ショーはとにかくバラエティーに富んでいます。特にお笑いネタがてんこ盛り。座員全員がお笑い芸人のようだ。かっこいい場面はキメる、そしてボケて笑かす。観ている方は揺さぶられっぱなしです。途中でお笑いコントが何度も入るのも他劇団にはない特徴です。

照明、スモーク、プロジェクターの使い方もうまい。ありとあらゆる手段を使ってお客さんを楽しませようとするエンターテイナー集団倭組のステージの様子を以下ご覧ください。

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不動倭座長

この日の口上挨拶で倭座長はこのようなことを言っていました。
「皆さん、ふだん嫌なことがいろいろあるかと思います。でもそういうものは全部この劇場に持って来てください。そして僕たちの舞台を観てそれを発散して元気を持って帰ってください。そんな空気清浄器のような劇団になることを目指して頑張っています」
本当にそのような劇団だと思います。私は倭組の舞台をとても純心に楽しむことができます。楽しさのあまり我を忘れた時間を過ごした嬉しさが元気に変わってゆきます。

昨今、多くの劇団ではお客さんを満足させるために、歌舞伎や名作映画で扱われてきた有名な作品を本格的な芝居につくりあげる(お客さんはしっかり観てしっかり満足する)というアプローチをとることもあります。
倭組は、「とにかく肩肘はらずくつろいで楽しめる」という意味での大衆演劇らしさを身上にアプローチをしているように思います。
若者だろうがご老人だろうが、男性だろうが女性だろうが、名作を知っていようがいまいが、どんなお客さんでも居間でテレビを観るような気軽さで楽しめる舞台を追求しているように思えます。

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軽やかに舞う倭座長

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代表代行の勝小虎さん
癒し系の小虎さんは愛嬌のある笑顔もいい。

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女形も美しく

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若手花形 成長著しい勝彪華

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もう一枚彪華さん。
かっこいい写真を並べてみましたが、彪華さんは明るく軽やかな舞踊もいい。

この日は津川竜総座長出演の日でした。

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鴉を模した衣装を纏い、闇夜から浮かび上がって登場する総座長。

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プロジェクターで映し出される都会の夜景をバックに舞う総座長。

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やがて闇夜は幻想的な色彩を放ち出す。さりげないスモークが効果的。

1本の踊りの中にもさまざまな景色があらわれる。それがはる駒座の舞踊。

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木川劇場はそれほど大きな劇場ではない。でもうまくそこを活かしている。
場内は倭組が演出する夢幻的娯楽空間で満ちている。

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不動倭座長の女形

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津川竜総座長の女形


倭組は芝居仕立ての舞踊が得意。
歌謡浪曲はたくさんのレパートリーを持っています。

この日は私の好きな「決闘高田馬場」が運よくかかりました。
この長編歌謡浪曲は他劇団ではよく第3部のラストショーで使われます。倭組は出し惜しみせず第1部ミニショーで使ってきました。

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「ばあさん水だ!水を呉れーっ」の場面。
倭座長が中山安兵衛。
のり屋のばあさんは叶夕晏。
この後安兵衛は愛刀の関の孫六を持って、村上兄弟一門との果し合いの場、高田の馬場へ駆けてゆく。

その頃、高田の馬場では・・・

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安兵衛と叔父・甥の義理を結んだ菅野六郎左衛門(扮するは子役 笑)が一人で村上一門と闘っている。

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菅野危うし!

そのとき歌のとおりに安兵衛が飛び込んで来て、楽しくかっこよく村上一門を討ち果たしました。

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決闘高田馬場終演にて第1部フィナーレ。

倭組の特筆ポイントのひとつは、めっちゃおもろい女優のお二人、宝華弥寿さんと叶夕晏さん。
他の劇団の女優は絶対できない(というかしない)おもしろ衣装・メイクでよく登場するお二人。
それは見てのお楽しみということでここには掲載しませんが、笑うしかない彼女たちのはじけっぷりを是非劇場でご確認ください。

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叶夕晏さん

倭組の舞踊ショーには倭座長による歌謡ステージがあります。
この日は、倭座長の歌(女性をテーマとしたもの)に合わせて弥寿さんが踊るという趣向。

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客席に降りて歌う倭座長と花道で舞う弥寿さん。
劇場のつくりをうまく利用しています。

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始めは歌詞にあわせて麗しく踊っていた弥寿さんでありましたが・・・

途中で倭座長が勝手に歌詞を変えて歌いだし、それを聞いて訝しげな表情を浮かべ始める。

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倭座長が「シワが増えた」とか女性が気にする内容にずけずけ替え歌して、それに反応する弥寿さん。
倭組らしさがでていて、私はこの写真が一番好きです。

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子役も大活躍。
倭座長女形とじいさん、ばあさんになった子役。

ラスト舞踊は洋舞「ストップ」

この日の舞踊ショーでは逆光ぎみの照明でシルエットを強調する演出が印象的でした。
以下はあえてそのような写真ばかり掲載します。

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登場シーン

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そして倭組ならではだったのが
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ラストショーの途中にまではさまれるコント

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舞踊ショーラスト

賑やかでかっこよくて楽しい倭組のステージの雰囲気が伝わりましたでしょうか?

まだ剣戟はる駒座倭組を観ていない方、職場などで嫌なことがあって塞ぎ込んでいる方、是非倭組の公演を観に行ってみてください。

<追記>
この日の第2部お芝居は「馬鹿の幸吉」
裕福な商家に身を寄せている拾われっ子の幸吉(不動倭)は頭が弱いけれども純真無垢な心の持ち主。
この商家の主(勝小虎)は妻をなくし後妻(宝華弥寿)を迎えて暮らしていたが、後妻はそれほどこの家が豊かでなく主が病に臥せってしまったことに失望し家の外に男(勝彪華)を作り、男のいわれるがままに家の金を持ち出すなどしている。
後妻は先妻の娘(宝華紗宮子)につらくあたるが、幸吉はそれをかばおうとする。後妻の意地悪がエスカレートし、たまりかねた幸吉は後妻を刺してしまう・・・
倭座長がおかしくも哀しい幸吉を好演しました。

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小屋主は大衆演劇役者、小さなビルの中の手作り劇場 「笑楽座」

2014年11月、大衆演劇激戦区大阪に小さな大衆演劇場が誕生しました。

「笑楽座」といいます。

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JR大阪駅から大阪環状線の内回り(西九条方面)に乗って5駅目の大正駅が最寄駅。
大正駅脇に広めの道路(県道173号)が走っています。

地図で確認したところによると、笑楽座はこの道路沿い、約2kmほど離れた場所にあります。
普通はバスを利用する距離でしょう。
散歩好きの私は歩いて行くことにしました。

30分ほど歩きますと左手に大きな建物(大正区役所)が見つかります。

そこからちょっと173号を進んだ右手に笑楽座がありました。

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これは笑楽座を通り過ぎて、今歩いてきた方向とは逆に撮った写真。
道路の右手に大正区役所、左手に笑楽座があります。

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近年、巨大なオフィスビルの中にも大衆演劇場が生まれています。
笑楽座はそれとは対照的に、小規模ビルの1階につくられた小さな劇場です。

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正面

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公演時間
昼の部 12:30~
夜の部 17:00~
約2時間半~3時間
(休けいふくむ)
と、ガラスに書かれています。

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この日は劇団寿の公演

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自動扉入ってすぐ左手に入口扉があります。
その扉を開けますとすぐ靴を脱ぐ場所があります。
靴をビニール袋に入れてあがります。

緑のマットを越えて左手に受付カウンターがあり、ここで木戸銭を払います。
カウンターの女性がてきぱきとお客さんをさばいていました。
「社長」と呼ばれている、スタッフのハッピを来た年配の男性も忙しそう。

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劇場内の様子

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あらかじめ座椅子が並んでいます。

東京の篠原演芸場でも思うことなのだけれども、あらかじめ座椅子が設置してある場合、前の席と「足を伸ばして座るには足りない距離」であることが多い。体がカタい私にはそれがちょっと苦痛だ。
笑楽座で私が確保した席の前のお客さんも足を伸ばしたいがために席を少し後ろにずらしている。よって私のスペースもさらに狭くなってしまった。
けれど大衆演劇場ではそういうことにまつわるお客さん同士のもめごとはほぼ見たことがない。経験的には大衆演劇場では足の置き場についてはお客さん同士が自然に譲り合う。
私の右の席には男性着席。その方も必然的にあぐらとなる。男二人があぐらで並ぶほどの横幅はない。私の左は通路だったので私は席を左にずらして座りました。

トイレに行ってみますと、この施設にもともとあったトイレに加えて手作りのトイレブースが増設されていました。
劇場用として想定されていなかったスペースを手作りで芝居小屋に改修した感じが至るところに見受けられます。

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後方には椅子席

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畳カーペットを敷いています。
やはり大衆演劇場は畳がいい。

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下手に特別な桟敷席があります。
ここは200円の別料金がかかります。

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予告演目の貼り出し

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開演を待つ間、「社長」さんがみかんをくれました。
こういうフレンドリーなところが小さい劇場ならではのよさでしょう。

この日は祝日。といえども、それほどお客さんが入らないのではないかと私は予想していました。
駅からだいぶ離れた場所に劇場があることと、劇団寿が前年旗揚げしたばかりのあまり有名でない劇団であることがその理由ですが、私の予想に反して、次々にお客さんが入場してきます。
ついに座席はすべて埋まってしまい、後から来たお客さんは200円支払って下手の桟敷席に座りました。
まさに満員御礼状態で開演時間となりました。

家族と連れ立って来ていると思われるお客さんが多かったのが印象的でした。ご近所の方が家族といっしょにぶらっと出かけにゆく劇場、そういう庶民的な劇場に私は親しみを覚えます。

場内の賑わいを目にして、大阪の大衆演劇を受け入れる土壌…東京が失くしてしまった土壌…が豊かであることをあらためて感じたのでした。

劇団寿の公演が始まりました。

一座を率いるのは寿翔聖(ことぶきしょうせい)座長。
それに子役、寿美空・寿福丸の二人の男の子が大奮闘。
ベテランには中村駒二郎、音羽三美。
それと劇団旗揚げ時に大衆演劇の世界に入ったらしい寿のり助。
とても小さな劇団です。

前述のとおりこの日は満員の大入り。
座長の口上挨拶によると、月の初めは集客がかんばしくなかったようですが、だんだんとお客さんが増えて、このように溢れるほどの満員になったのは初めてだそうです。

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寿翔聖座長

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寿美空(右)と寿福丸(左)
座員が少ないこともありこの二人が大活躍。

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座長の女形

ご覧のとおり下手にナナメにカーテンがあり、舞台と舞台裏を仕切っています。
舞台袖のスペースが十分でないためにこうしているのでしょう。

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中村駒二郎と音羽三美(おとわみみ)
私は川崎大島劇場での劇団駒三郎の公演でお二人を見ていました。いまは劇団寿にいらっしゃることを知らなかったので大阪でお見かけしてびっくりしました。

そして、劇団寿のメンバーではないのだけれど、お客さんからのリクエストにこたえて登場したのが、、、

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笑楽座の小屋主であり劇団かづみの座長である市川一美!

ここでも私はびっくりしました。
なぜなら市川一美座長は、私が木戸銭を支払った受付にいた女性と同一人物であったことに気付いたからです。

自分の劇場がお客さんで溢れていて、そのステージに立ってうれしいだろうなあと思います。

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ラストショー

笑楽座のみなさんの大衆演劇への思いがつまっていることが感じられる劇場。
地元の方々の笑顔と元気の発信地としてまずます賑わっていってほしいなと思います。

(2014年12月探訪)

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Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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