WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 2013年11月
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大規模劇場を擁する大阪の温泉ホテル 「八尾グランドホテル」

大衆演劇場は一般的に「劇場」と「センター」の2つのカテゴリーにわけられます。
センターとはおおざっぱにいうと「お風呂がある施設で大衆演劇が観られるところ」…具体的には健康ランドや温泉ホテル。
さらにセンターには2つの系統があります。
・大衆演劇をする場所が飲食所を兼ねている
・大衆演劇をする場所は舞台公演専用の場所である

つまり大衆演劇場は大まかに以下の3パターンに分類できます。
A劇場
Bセンター(飲食所)
Cセンター(演劇場)

全国の大衆演劇場をみわたしますと、
A:B:Cはだいたい4:5:1という割合で存在しているようです。

しかし大衆演劇のメッカ大阪周辺ではこの割合がだいぶ違う。
2013年10月の大阪・兵庫の大衆演劇場をみてみますと
A18、B0、C2 割合にすると9:0:1になります。

なぜ大阪と全国とでこんなにも違いがあるのか?
ということは研究者でない私は深く追求しませんが、
お風呂+大衆演劇という文化が大阪に根付いていないことはちょっと不思議に思うのであります。
センター(飲食所)でよくある「センターの館内着を着た常連のおばちゃんたちが大広間の座敷でお茶のみながら劇団の噂話をしている」という光景こそ大阪のおばちゃんが本領発揮するシチュエーションではないかと思うのです。

ただしタイプCの劇場は少しだけ大阪にあります。
大阪で数少ない「お風呂に入れる大衆演劇場」のひとつ、八尾グランドホテルに2011年11月に行ってきました。


八尾グランドホテルは、HPにホテルの肩書きとして「天然温泉と大衆演劇が楽しめる」と記載するなどかなり温泉+大衆演劇をアピールしています。

もちろん駅からの無料送迎あり。JR八尾駅、近鉄八尾駅他からバスが出ています。

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八尾グランドホテル

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入口で二手に分かれます。
左がフロント方面、右が天然温泉方面。私はこの日ここに宿泊することにしていましたので左のフロントに行きました。日帰りの温泉+観劇のお客さんは右へ。

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フロント

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フロントでは指定席予約を取り扱っています。
劇場の前方が指定席(有料)、後方が自由席です。

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チェックインをして部屋に入りました。窓からの眺め。

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ホテル内にカットルームがあります。

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「温泉リゾート営業時間」と書かれた小さな案内用紙には次のように記載されていました。

10:00 開館
13:00~15:30 芝居&舞踊ショー
17:00~ ナイター料金
19:00~20:00 舞踊ショー

入館料2200円
ナイター1100円


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ホテルで1泊して翌朝の朝食。
「ホテル自慢の朝食メニュー」と書いてあったとおり、同じような宿泊料金の他ホテルに比べてなかなかいい朝食でした。


この後、大衆演劇昼の部を観ました。
八尾グランドホテルには400名収容という大きな専用劇場があります。

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お昼の部は11時開場。

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ここが劇場。この光景はもはや「センター」ではない。座席のある広い大衆演劇専門劇場です。

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後方の自由席だけタオルがかかっています。自由席のお客さんは開場前から並んでいてオープンするやこのようにタオルで座席を確保するのです。タオルで席とりするこの感じはとっても「センター」。

座席を確保したらお風呂に行ってしまったのか劇場はがらんとしてしまいました。

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前方から後方を見た景色

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このように客席には勾配がついています。

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上手の桟敷席

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下手の花道
センターでこのような立派な花道があるのは珍しいですね。

この日、広いホールにお客さんが結構入りました。
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公演中の様子。
歌手がゲスト出演していました。

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訪れた2011年には「八尾グラノート」という月刊リーフレットが300円で売っていました。当月公演する座長のインタビューが載っています。その劇団をあまり知らないお客さんにはうれしい冊子です。


八尾グランドホテルはかなり劇場に近いセンターといえるでしょう。

大阪では大衆演劇場は次々新設されていますがどれも「劇場」ばかり。
「座敷で劇団トークに花を咲かせるおばちゃん」を大阪で見る日はいつかくるのでしょうか。

こんなところでも大衆演劇が 都内ニュータウンの大規模健康ランド 「永山健康ランド 竹取の湯」

この日は永山駅(小田急線・京王線)にある永山健康ランド竹取の湯に行きました。

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南部線の稲田堤駅で京王線の京王稲田堤に乗り換えました。そこから永山駅に向かう車窓からは、いかにも「ニュータウン」然としたマンション群がいくつも見えました。

東京新聞では毎週土曜日に「東京どんぶらこ」というイラスト付きで街を紹介する記事が連載されています。2013年11月9日は永山でした。「かつての未来都市は・・・」というタイトルで以下のようなことが書かれています/1971年から団地が建てられ多摩ニュータウンで最初に開発された街である/1974年に永山駅が開業して人口が増えた/それからわずか30年で高齢化が進んだ/商店街にはシャッター目立つようになり廃校になった小学校は高齢者用の施設に改修された…そして次の文章で締めくくられていました「かつての未来都市の輝きを放っていた団地の寿命は、人の一生よりも短い四十年しかもたなかったことになる」

この記事が掲載された6日前に私は初めて永山に来たのでした。
駅や駅周辺はごちゃごちゃしていない。大きめの建物にありがちなチェーン店等が入っている。「ぼろい建物」がまわりのどこにもなさそう、別の見方では無機質で生活感がない印象。
ニュータウンだからそれは当然なのでしょうが、人の気配が少なくてうすらさみしい。

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竹取の湯は駅からのアクセスが抜群によい。改札を出て右に行くとすぐに大きな建物がみえます。ここの3階~5階が竹取の湯。改札から3階の入口までは車道を通ることなく歩道だけで移動できます。駅から徒歩1分。

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入口に「2013年11月ライブショーのご案内」というポスターがありました。
以前から気になっていたライブショーがどんなものか確かめるために私はここに来たのでした。
ショーのご案内から舞踊・劇団系ものを抜き書きしてみます。
3日(日)
新舞踊と浪曲劇 若松劇団
4日(祝)
劇団だいゆう
9日(土)
創作舞踊 新舞踊 華ふぶき舞踊団
17日(日)
お芝居と踊りの華絵巻 劇団さざ波
23日(土)
幅広い年齢層による大衆演劇をお楽しみ下さい 豊川劇団
24日(日)
舞踊・マジック・南京玉すだれなどなど盛り沢山 はまなす劇団
30日(土)
劇団流れ星

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なかでも特に気になるのが「浪曲劇」というコメントがある若松劇団。
節劇は知っていますが浪曲劇という語はきいたことがありません。浪曲をBGMにつかった芝居だとはだいたい想像はつきますが、どんなものか実際みてみたい。

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入館は例によって靴箱の鍵を受付フロントに預けるというスタイル。入館料は2000円。
とても広くてキレイなロビーです。
ここは永山健康ランドという昔からあった施設が竹取の湯としてリニューアルオープンした施設のようです。
大衆演劇場めぐりをしているせいもあって私は多くの健康ランドを見てきましたが、ここは大変解放感があって見目よい。木目調ながら現代的で、若い女性でも入りやすい健康ランドだと思います。

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1階・2階吹き抜け。

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2階に食事処が2か所(テーブル席・座敷席)あります。
ショーは座敷席の方で行われます。

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座敷席。この写真ではよくわかりませんが窓から自然光がたくさん入っています。
ショーの前の時間は舞台上の大きなディスプレイにテレビ番組が流れています。

大衆演劇場にある座敷席はなるべくお客さんを入れるためにとても窮屈です。ここはもともとそういう目的の場所でないのでとてもゆったり(長テーブルが大きい・テーブル同士の間隔が広い)しています。
サイドには「ちょっと高い机と椅子」の席があります。この「ちょっと高い椅子」は大衆演劇場でたまにみかけます。座布団にずっと座っていると足が疲れる。かといって普通の椅子席にしてしまうと、舞台をかなり高くしないと客席から役者が見えない。ショーを行う広間では重宝な椅子でしょう。
この広間で残念なのが分煙していないこと。演劇専用広間でないゆえに仕方がないのでしょうか。

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ビールと「秋の季節膳」(1200円)を注文しました。

14時前になると、舞台上のテレビ放映は終了し、定式幕が閉じて音楽が流れてきました。
開演予定の14時頃BGMがふにゃふにゃな音に変わりました。音響の調子が悪いみたいです。約5分後音響がなおると、定式幕の脇から私服の男性がマイクを持って現れました。劇団のマネージャー兼座長の付き人と名乗り以下のような内容をアナウンスしました。
二代目座長若松舞子がこのところ多忙で寝食を忘れて活動していた結果意識を失って病院に運ばれた。睡眠不足と栄養不足のために入院中である。二代目座長が本日お越しの客様へお詫び申していた。

なんと残念なことに、心配なことに座長はお休みでした。
またこの日は浪曲劇ではなく舞踊ショーとのことでした。かさねて残念。

大衆演劇場では舞台近くの桟敷席はまっさきに埋まります。しかしこの日の公演では舞台前大きいテーブルには誰も座っていませんでした。それ以外のテーブルにはだいたいお客さんが座っていて仲間と飲食しながらくつろいでいます。

以下舞踊ショーの様子です。
役者さんはアナウンスで紹介されましたが、漢字がわからないのでひらがな表記させていただきます。

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オープニングは3人の舞踊
若松ぼたん、若松みすず、若松さくら

背景がすっきりしていた方が役者さんが映える。しかし舞台後方に込み入ったデザインかつ光を反射するタペストリーが3つかかっています。吊るす場所をかえればいいのになと思いながら見ていました。

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初代座長 太夫元 若松一夫

いくつかお客さんからお花がついていました。「劇団の公演を観るためにここにきた」という感じの人はいないように思われたのでお花がついたのは意外でした。
この座敷にいるのは竹取の湯の常連さんで、通っているうちに出演劇団を覚えて応援するようになった、とういうことではないかと推測します。

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はやしきょうか
ゲスト出演とのこと。体調不良の座長のピンチヒッターでしょうか。
他の役者さんは皆無表情でしたが(かつあまり客席をみない。それが劇団のスタイルなのでしょうか)この踊り師匠さん(?)は笑顔もあってよかったです。

スポットライトが1灯でそれほど光量が大きくないのか、写真をキレイにとるのが難しかったです。
そういえば灯体を操作していたおじさんは竹取の湯のお客さん用館内着を着ていました。お客さんが手伝っているのか、スタッフが湯あがりに館内着を着てそのまま仕事しているのか。

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当然開演中は客席は暗くなります。それでもこの部屋はあくまで食事処であるというのが前提のようで、ショーの最中でもお客さんが料理を注文して飲食したり、喫煙したり、おしゃべりしたりしています。
大衆演劇場の広間によくみかける「〇〇しないようお願いします」といった観劇環境を保つための貼り紙はありませんでした。ちょっと役者さんが気の毒かなと思いました。

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客席に降りて踊る初代座長。
最初降りた際はお客さんに何かの紙を渡してまわっていました。私はもらえなかったので何だかわかりません。

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2度目に客席に降りた際はこのようなアクセサリーを配っていました。

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カーテンコール。今日の出演者は5名。
太夫元は、今日は座長が風邪ひいちゃってお休みになりましたがまた頑張ってやりますのでよろしくお願いします、と挨拶しました。

若松劇団公演を観た後、私は永山健康ランドをゆったり満喫しました。

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この施設のウリはなんといっても岩盤浴でしょう。
岩盤浴は別料金の健康ランドも多いですが、ここは入館料に岩盤浴料金が含まれております。タオルセットと一緒に岩盤浴専用の着物も貸してもらえます。

竹取の湯の岩盤浴は「開運風水岩盤浴」と謳っています。入り口に入ると薄暗い広間。ここは休憩所でここから数種類の岩盤浴の部屋に移動することができます。
まず広間の中央に「パワースポット ルナスポ」とかかれた台座の上で透明な岩石状の物体が光っているのが見えます。広間の右手にディスプレイがあって[大河や森林や雪山が見える大自然を背景に外国人の男女が両手を挙げたり掌を合わせたりといった瞑想的な体操を繰り返している]という内容の映像が音もなく流れています。ディスプレイの前ではおじさんとおばさんがディスプレイの中の外国人の動作を真似している。
広間右奥の扉は「玉の房」への入口。この間で岩盤浴をしているときに手をこすり合わせると金運があがるとのことで、入り口脇に手のこすり方が図解入りで解説されています。広間奥の「石の房」はフィンランドの鉱山にあるというとても難しい名前の鉱石で作られたベッド。広間左の「楽の房」には13のベッドがあってさまざまな石が敷き詰められています。この房での岩盤浴は縁結びの効果があるらしく「出会い運を高めるパワーシートがあなたに良縁を結ぶ力を注入します」と書いてあります。小さい石の「ラジウム玉石」が気持ちよかったです。

いろんな岩盤浴を楽しんだ後は浴場へ。私は健康ランドでサウナに入るのが好きです。ここのサウナは広いし、どの席からもテレビが見やすくてよい。露天風呂は2つあって、そのひとつがぬる湯。お風呂ではゆっくり過ごしたい者としてはぬるめのお湯はうれしい。ぬる湯には「北海道二股川」とだけ書いてありました。どういうことかと後でHPで見てみたら「二股川のカルシウム岩を使った贅沢な湯」と書かれていました。内湯にはイベント風呂があって、この日はハロウィン近くということもあり、オレンジ色の「パンプキンバス」がありました。カボチャの匂いといより柑橘系の匂いだった気がします。

竹取の湯はマッサージも充実しています。アカスリ、ボディケア、フットケアといった健康ランドの定番に加え、タイ古式やアロマトリートメントというものもあります。私は「リンパドレナージュ足流」という施術者が足で押してマッサージするというものをやってみました。これがかなり気持ちよかったです。

同じフロアには、最近たまに見かける「フィッシュセラピー」もありました。(小魚がたくさん泳いでいる水槽に足を入れるアレです)私はこれを見るたびに魚が不憫に思えてならない。

以上のように、ここは平凡なの健康ランドであることをよしとせず、「もっとなにか工夫を凝らそう」という経営者の思いが至るところにみられる施設です。週末の劇団公演も「成功したアイデア」になってほしい。

しかし日曜なのにあんまり賑わっていませんでした。平日はもっとさびしいのではなかろうか。
夕方になったらどこかで運動をしてきたらしい大人子供がたくさん来ましたが。
街の人口は一時期より減ってしまったようですが、ここが永山界隈の人々のいこい場所として賑わって、風呂上りにショーを観るという文化が根付くといいなと思います。
プロフィール

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Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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