WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 兵庫・千成座
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庶民的商店街の中で二度リニューアルした大衆演劇場 「千成座」

庶民的商店街の中で二度リニューアルした大衆演劇場 「千成座」

ある大衆演劇場が、場所は変えずに名称を変えてリニューアルすることがたまにあります。
それが2回続いた劇場があります。
兵庫県尼崎市にあった「座 三和スタジオ」は2018年に「大衆演劇 三和劇場」に改称し、2021年に「千成座(せんせいざ)」としてリニューアルオープンしました。

阪神尼崎駅の西側には商店街がアリの巣のように張りめぐらされた地帯があります。
東西に長く延びたアーケード商店街の西の端に千成座はあります。

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アーケード商店街
右手に見えるのが千成座

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千成座正面

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入口入って左手に受付窓口があります

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ちなみに三和劇場だったときまでは受付窓口は入口の外側にありました。

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受付ではスタンプカードを提示します。
このコロナ禍の中、来場するお客さんの連絡先をその都度確認している演芸場がありますが、千成座ではこのカードを提示することでチェックいただいているようです。

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千成座場内
後方より

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千成座場内
左から右サイドを見たところ

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前方
千成座のロゴマークがはいった定式幕
前方に4つ椅子が置かれています。

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この4席は特別席。
別途席料がかかります。
三和劇場時代はこの場所は座椅子がたくさん並べられていました。

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一般席は座り心地のよい座席
三和劇場時代もこの座席でした。

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座席には段差がつけられています。

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劇場後方の座席

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花道

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お手洗いは劇場後方左手
とてもキレイなトイレです。


さて、この日観劇したのは市川おもちゃ劇団。
おもちゃ劇団は前の月に三吉演芸場にのっていて、私は何度か通って劇団のファンになったのでした。

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私の一推しは市川小恵子花形。
まだ12歳、中学1年生ながら芝居に舞踊に大活躍。
この年代の大衆演劇役者では舞踊で「おっ」と目を見張る役者は少なくないが、芝居で「やるな」と思わせる役者はほとんどいない。
小恵子花形は芝居での度胸は同年代役者の中では群を抜いていて実に堂々としている。若親分や森の石松など立ち役もこなす。幼い時から芸を仕込まれてきた生粋の旅役者なのだなぁと思わせる。もちろんまだ粗削りなところもあるが、今後心情の機微を表現できるようになったらぐんぐん良くなってゆくと思います。
舞踊では女形でも立ち役でもレパートリーが多く、この若さにしてこの芸域の広さに感嘆します。
市川小恵子花形は将来実力と貫禄を備えた女座長として劇団を背負ってゆくことでしょう。その成長過程を見届けることができるのは大衆演劇ファンとして嬉しい限り。今後も市川小恵子花形を注目してゆきたいと思います。

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小恵子花形の父親、市川おもちゃ座長
昔ながらの姿を継承しようとしているのだろうおもちゃ座長の芝居がよいのです。

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おもちゃ座長の母親、市川恵子太夫元。
かつては劇団を率いる女座長でした。
立ち役がかっこいい

おもちゃ劇団では芝居の後の口上挨拶は恵子太夫元が務めています。
この日の芝居は「酔いどれ浪人」
この芝居ではラストで、主人公水町(おもちゃ)、金太(恵子)、半助(小恵子)の3人が舞台から退場するシーンがあります。
恵子太夫元はこの芝居をやるたびに、ああ今回も親子三代で芝居をすることができたなぁと感慨にふけるのだそうです。
私もこのラストシーンを見ることができてほっこりとうれしい気持ちになりました。

昼の部の公演が終わり、劇場の外に出ると、同じ公演を観ていたあるおばあちゃんから声をかけられました。
「あんた、こけいちゃんのファンなの?」
私が最前列で小恵子花形の舞踊写真を熱心に撮っていたのでそう思ったらしい。私は、小恵子ファンであり東京から遠征して見に来たことをおばあちゃんに伝えると、同じく小恵子ファンらしいこのおばあちゃんは急にテンションがあがり、ぐっと私に近づくと「こけいちゃん応援したってな」と私に訴えてきました。
おばあちゃんは、何かを思い出したように自分の手押しカートの中に両手をつっこんでごそごそやった後、「あったあった」とアルフォートを取り出して私の手に握らせ、再度「こけいちゃん応援してな」と懇願するように私に伝えました。

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おばあちゃんからもらったアルフォート

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その後、千成座の近くのたこ焼き屋さんに入りました。

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庶民的なお店でたこ焼きをいただきながら、庶民的雰囲気が横溢した商店街と千成座とお客さんのことを思い返していました。もちろん推しの劇団と役者に会えた嬉しさも味わいながら。

尼崎は本当に大衆演劇が似合う街だなあ、と私は旅情にひたっていました。

(2022年5月探訪)

ザ庶民感覚劇場 「座三和スタジオ」

大衆演劇の芝居は昔ながらの時代劇であり客層もご高齢の方が中心。劇場のネーミングも昔日の日本にありがちな落ち着いた名称が多い。
しかるに「座 三和スタジオ」は、ザ(the)という外国語発音を忍ばせていたり、スタジオというご老人に馴染みのなさそうな語を使っているあたりなかなか挑戦的なネーミング。

三和というのは近くの商店街の名称なのでこれを使用するとして、では何と名付けよう。「三和劇場」では平凡だしなにかパッとしない。「三和座」は語呂が悪い。「三和演芸場」は語呂はいいが関西で演芸場といったらお笑いが連想される。やむなく外来語を使うことにして「三和ホール」では?ホールというほど大きくない。浪速クラブにあやかって「三和クラブ」なんのこっちゃ。と悩んだあげく「スタジオ」という単語を発見。「三和スタジオ」なかなかいいけど大衆演劇らしさがない。じゃあ座をつけて「座 三和スタジオ」にしよう。
などと、「座 三和スタジオ」の名称の由来に関するくだらない妄想をしながら尼崎を歩く。

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阪神尼崎駅前西方にはかなり大きな商店街があります。東西を貫く長いアーケードの西出口に「座 三和スタジオ」はあります。

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商店街の電柱に貼られたポスター。

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正面。2009年にオープンしたらしいけれど、もともとは何の店舗だったのだろう。
→元パチンコ屋だったという情報をいただきました

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入口横の券売所。
開演時間の案内が朱字の手書きで書かれています。

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「募集 男子雑役65才マデ 通往自由 当劇場」

手書きの貼り紙が大衆演劇場らしさを強烈に放射している。
中はディープな雰囲気なのだろうと予感させます。
期待に胸をはずませつつ開場時間を待って、いざ劇場内へ。

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劇場後方より。うーむ、予想どおりなかなかオリジナルな風合を醸した劇場です。

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このマークはいったいなんなのだろうか。

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座椅子に座布団。これぞ大衆演劇場。

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後方の席。手作り感あふれる作り。

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座席札も手作り。

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劇場後方の提灯と投光器。

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緑と朱の墨で書かれた「特選狂言」の予告。
いいですね~。
「特別ショーMレディーショー」が気になるぞ。

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観劇弁当 松千円 梅七百円 味一番。
と書いてあるけれど、これは事前に予約しておくのだろうか。
このお弁当はどこでだれが作っているのか。

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観劇中の写真。座長口上挨拶。

至る所興味津々な小劇場。
手作り弁当のような家庭的な温かさがあります。商業的な匂いのなさといい立地といい庶民感覚の劇場です。
温泉センターよりもこのような居間感覚で落ちつける劇場がもっと日本に増えてほしいなと思います。

(2011年探訪)
プロフィール

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Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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