WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 栃木・湯けむり会館
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日本一安い劇場の最後の公演? 湯けむり会館で戟党市川富美雄一座を観劇

日本一安い劇場の最後の公演? 湯けむり会館で戟党市川富美雄一座を観劇

関東の有名温泉地での食べ放題付き宿泊プランや首都圏からのバス送迎を激安で提供しているおおるりグループは那須塩原温泉に3つのホテルを展開しています。宿泊したお客さんは無料で大衆演劇を観劇できます。その会場が「湯けむり会館」という温泉街の中にある独立した建物。毎朝ホテルをチェックアウトしたお客さんを送迎バスが湯けむり会館に運び、終演後バスはお客さんをまた乗せて東京や埼玉などのそれぞれの帰路につく。

湯けむり会館はおおるりグループの宿泊者でなくても観劇できます。
観劇料500円。
おそらく日本で一番安い大衆演劇観劇料金でしょう。湯けむり会館は広くて満席になることはないので、一般の方もついでに受け入れましょう、といった感じなのでしょうか。

ところが、湯けむり会館での大衆演劇公演は2019年3月でもって終わりになってしまうらしい。
その最後の月の公演を観に行きました。

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湯けむり会館

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となりにはホテルニュー塩原があります。
ここは2019年1月に「鳳凰座」という大衆演劇場がオープンしました。
この那須塩原の地に大衆演劇場の建物が2つ並んでいる。

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湯けむり会館の扉に貼ってあったポスター。
最後の月の公演を務めるのは戟党市川富美雄(げきとういちかわふみお)一座。

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公演時間は10:00~12:00の2時間

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湯けむり会館内

この日の第1部お芝居は「夕映え素浪人罷り通る」

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芝居が終わり、劇団女優であり市川富美雄座長の奥様、紀訥紀乃(きのときの)さんによる口上と物販案内。

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2017年7月に行われた「戟党市川富美雄 30年記念公演」のパンフレットとクリアファイルを買いました。終演後クリアファイルにサインをいただきました。
2019年の現在座長歴32年ということになります。

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座長には5人の子供がていて、「晴空(はらから)」というユニットを組んでいます。
長女 實川加賀女
長男 實川樹
次男 實川輝那
次女 實川菜々美
三女 實川結
13才から24才までの兄弟姉妹5人。
この日、一座の公演に参加していたのは加賀女さん、輝那さん、菜々美さんの3人。

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第2部舞踊ショー

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實川菜々美さん

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實川輝那さん
芝居では主役を演じていました。

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實川加賀女さん

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市川千也さん
紀訥紀乃さんの弟

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市川富美雄座長の女形舞踊
とてもクラシックな雰囲気のこの舞踊がとてもよかった
大衆演劇ではこういう女形をもっと見たい

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左から、小川紗矢香、實川輝那、實川加賀女、市川千也

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終演後の挨拶
芝居では中海加津治さんという渋いベテラン役者さんが出演していましたが、舞踊ショーでは投光をされていたようです。

あと数年で子供たち全員が一人前の役者になると思います。
このファミリー劇団に新時代がやってくるでしょう。

湯けむり会館は、独特な形態の大衆演劇場で日本の旅芝居文化の多様性が感じられる場所だったので公演がなくなってしまうのはさみしい。
おおるりグループのHPによると、那須塩原では大衆演劇の代わりに4月から「お楽しみイベント(日替わり)」が始まったようです。
湯けむり会館の建物自体は残るのでしょう。
大衆演劇公演が復活する可能性もまだあるのではないかと思っています。

激安温泉&観劇ツアー 「湯けむり会館」

「おおるりグループ」が以下のような那須塩原温泉旅行プランを提供していました。

東京からの往復バス料金+温泉ホテル1泊2食+食べ放題・飲み放題+舞踊ショー+大衆演劇

これでなんと7,100円。2名以上で参加なら1人6,100円!

なんて安いのだろう。その安さの秘密も気になるが、どのように大衆演劇が行われているのかがもっと気になる。
大衆演劇場めぐり人の私は独りで行ってみることにしました。

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新宿駅西口。高層ビル群の下のバスターミナルで指定のバスに乗り込みました。8:00出発。

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バスの後方の席はこのように座席の間隔がゆったり。なんて快適な観光バス。

バスは12時30分頃那須塩原に到着し、それぞれのホテルにお客さんを降ろします。
14時から近くの「湯けむり会館」で舞踊・歌謡ショーがあるとのこと。送迎バスも来てくれますが、温泉街を散歩がてら歩いて行くことにしました。

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おおるりグループは塩原にいくつもの温泉ホテルを経営しています。
私が利用したのは「塩原温泉ホテル」。写真は「湯けむり会館」に最も近い「ホテルニュー八汐」。

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中央に見えるのが、舞踊・歌謡ショーや大衆演劇が公演される「湯けむり会館」。

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会館のとなりには、つげ義春の旅漫画を思い起こさせる侘しいたたずまいの露店がありました。

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正面入口。

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おおるりグループのホテル利用者でなくても500円払えば観劇できるようです。

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玄関。ゴミ箱にビニール袋が入っています。これに靴を入れてお上がりくださいということでしょう。
この横が受付。私が行った時は誰もいなかった。おおるりグループの客かどうかを識別する仕組みも特にないようです。このゆるさがいい感じです。

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ここが会場。外観のイメージより広く感じます。テイストはザッツ日本の宴会場です。紅白の蛍光灯がしゃれています。

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左前方から見たところ。この日は平日。温泉街を歩いている人はほぼいません。お客さんなんか来るのかなあと思っていましたが、皆さんホテルのバスで移動するらしくぼちぼちお客さんが集まっていました。

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係の方がお茶セットを用意してくださいます。
いかにも日本の集会所。ここで行われる芝居はまぎれもなく「大衆演劇」でしょう。

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舞台。きれいに使われているようで古さは感じません。

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舞踊ショー。
始まってしまえば雰囲気は健康センターと変わりません。

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ショーが終わって、お客さんは会館前で待ち構えていたバスにぞろぞろと乗り込みます。
バスの発着の時だけはあの露店にも活気が訪れます。

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那須塩原に「スープ入り焼きそば」というご当地グルメがあると聞き、温泉街を歩いて店を見つけました。
ソースラーメンといったところでしょうか。黒胡椒と酢を入れるとぐっとうまくなります。

夜はホテルのバイキング。ここでは食事開始時間が決まっています。私が行くと食堂にたくさんのお客さんが集まっていて、ブッフェコーナーには長い行列。アルコール(ビール・焼酎・日本酒)も飲み放題ということが驚き。ドリンク係りのお兄さんが一人で担当していて、てんやわんや。酒を入手するのに多少の時間がかかる。お客さんのほとんどが高齢の方で、そんなに多く食べる方も飲む方もいません。皆さんビール1杯くらいしか飲まない。ビール飲んで冷酒をおかわりしているのは私くらい。食べ放題・飲み放題といっても客層的にそんなにコストはかからないのでしょう。食堂にいたお客さんは自然と早い時間で部屋へ帰っていきます。ゆっくり飲もうなどと思っていた私はいつの間にか取り残されてしまい、店員さんが片づけモードにはいりつつある食堂で落ち着いてもいられず、食堂を退散し、自販機で缶チューハイを買って部屋で飲みました。作戦ミス。よく見ると食事時間は1時間しか設定されていないようです。

翌朝はチェックアウトして、ホテルのバスで湯けむり会館へ移動。10:00から大衆演劇を観て、終演後またバスに乗って東京へ帰る、という流れ。

今年になって草津温泉への観劇パックも復活したようです。
なおこのブログに掲載している料金は私が訪ねた2011年10月のものです。実際の金額はおおるりグループのHPでご確認ください。

時代とともに大衆娯楽の様相も変化してゆきます。全国各地でさまざまな形態で息づいている大衆演劇の新たな一面を見た思いがしました。
プロフィール

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Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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