明治日本の産業革命遺産が残る都市郊外の健康ランド併設劇場 「大牟田楽笑演劇殿」
明治日本の産業革命遺産が残る都市郊外の健康ランド併設劇場 「大牟田楽笑演劇殿」
大牟田(おおむた)市は福岡県の最南端にある市。熊本県の荒尾市と接しています。
2023年5月、私はJR鹿児島本線に乗って大牟田駅に降り立ちました。

駅のホームで私を迎えてくれたのは、大きな黒い石。
「燃える石のふるさと
三井石炭鉱業株式会社 三池鉱業所
三井鉱山株式会社 三池港務所」
と書かれています。
そう、大牟田はかつて石炭で栄えていた都市なのです。大牟田の石炭化学工業を支えていたのは三井三池炭鉱。1959(昭和34)年には人口のピークを迎えましたが1997(平成9)年に炭鉱は閉山しました。現在はピークの頃より人口が半減してしまいました。

駅を出ますと、
「世界遺産のまち 大牟田へようこそ」
と書かれた柱が立っていました。
2015年に「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録されました。
当該遺産は8県11市にまたがる資産により形成されており、そのひとつが三池炭鉱と三池港になります。
かつて囚人が重労働を強いられた宮原坑など数多くの産業遺産が大牟田市に点在しています。くわしくは大牟田の近代化産業遺産ウェブサイトへ。

かつての大牟田は日本の花形産業の本拠地として大いに栄えていたことでしょう。旅芝居や浪曲をかける小屋もいくつかあったに違いありません。エネルギー革命が起き、石炭産業が日本から消えて以来、大牟田の町が衰退の一途をたどったことは想像に難くありません。私はかつての繁華街と思われるエリア、大牟田駅~西鉄新栄町界隈を散歩しました。ゴーストタウンのような商店街もあり、かつて栄華を誇った街とは思えないさびれよう。今後高齢化が進みいっそう街はさみしくなってゆくのでしょう。

さて今回目指す大衆演劇場は、大牟田駅からだいぶ離れた郊外にあります。
大牟田駅から送迎バスが出ているとのことですが、私の旅のスケジュールと合わなかったためタクシーで行くこととしました。タクシーの運転手さんによると、大牟田駅近くにはデパートが2つあったが20年くらい前にどちらもつぶれてしまったとのこと。
約10分、1,440円で目的地に着きました。

ここが、「大牟田天然温泉 最高の湯」という健康ランド。この施設に併設して、今回の取材先である「大牟田 楽笑演劇殿」があります。

駐車場のまわりには楽笑演劇殿関連の幟がたくさん立っていました。
写真はそのうちのひとつ。
「ユーチューブ 楽笑チャンネル 登録・高評価よそしくネ!」と書かれています。

最高の湯の入口

入口横に大衆演劇関係の掲示板がありました。
「まだ観たことない方!!チャンス」
「毎月第一金曜日千円キャッシュバックデー(入浴付)観劇入浴料二千円のところ劇場受付にて千円キャッシュバックします」
と書かれています。

入口に入りますと券売機が見えます。こちらで入館チケットを買ってその先の総合受付で渡します。

券売機
入浴料だけだと大人900円(会員700円)です。
観劇入浴券(2000円)のボタンは下の方にあります。

靴は下足箱へ
大衆演劇場「大牟田楽笑演劇殿」が開場する前まで最高の湯の施設を確認しましょう。

大浴場入口
たくさんの種類のお風呂がありました。露天風呂も広い。もちろんサウナと水風呂もあります。温泉施設としては文句ないですね。

もちろん食堂もあります。

フィットネスジムがあるのが珍しいですね。
いまフィットネスジムが流行ってますから、今後ジムを併設した健康ランドは増えてゆく気がします。

いよいよ大衆演劇場へ。
こうして劇団員の写真と名前を掲示するのってよいですよね。
その下に本日の演目等が筆で書かれています。
「3時間たっぷり楽しめます!」
「毎日お芝居・舞踊ショー♬変わります!毎日楽しめます☺」
大衆演劇になじみのない方に興味を持ってもらおうと、心をこめて宣伝していることが伝わってきます。
また、この筆文字の筆跡から久留米の楽笑演劇殿のスタッフが大牟田の楽笑演劇殿のメインスタッフをやっていることが想像されます。

楽笑演劇殿へ向かう渡り廊下

楽笑演劇殿入口。開場時間になるとこの扉が開きます。ですから開場時間前にはこの扉の前でお客さんが並んでいます。
・昼の部 開場11:30~ 開演12:30~
・夜の部 開場17:00~ 開演17:30~
11:30に扉が開きました。この扉入ってすぐ左手に受付があります。

大牟田楽笑演劇殿場内後方より

客席から後方を見たところ。
前方は座椅子席、後方は椅子席。

開場後、お客さんは自分の席を確保(ペットボトルなどを置く)するといなくなりました。きっとお風呂に行っているのでしょう。

後方の椅子

前方

中央にせり出し舞台があります。

花道は小さめ

受付前ではお菓子、ゆで卵、チューハイ、ハイボールなどを売っています。
12:30昼の部が開演しました。
第一部 お芝居
第二部 舞踊ショー
一部が終わった後、スタッフの方が場内をまわってクレープを売り歩いていました。売り子さんのいる芝居小屋の光景は私は好きです。

舞踊ショーの様子

この日は大牟田警察署防犯課の方が啓発活動に来ていました。
公演終演後の口上の時間を借りてお客さんにニセ電話詐欺に注意するよう、劇団員と一緒に呼びかけていました。大牟田市内でも高齢者が被害に遭っているそうです。

廊下での送り出し。
警察の方はいろいろとグッズの入った袋をお客さんに渡していました。
さて、このように温泉施設と大衆演劇場が合体したいわゆる「センター」としてはとてもよい場所だと思いますが、弱点がないわけではありません。
それは駅からの遠さと送迎車の本数の少なさ。

この写真のように、駅からの送迎車も最高の湯からの送迎車も1日に4本しかありません。せっかくのんびり過ごせる施設なのですから、もっと時間を気にせずくつろぎたいですね。なので私は帰りもタクシーを利用してしまいました。
大牟田に取材に来た私に課せられたもう一つの課題が、夕食に何を食べるかです。せっかく大牟田に来たのならこれを食べよう、というものがどうも見つからない。
お隣熊本県の名産の鶏「天草大王」を食べられる店があり、そこにしようかとも思いましたが、結局は大牟田ラーメンをいただくこととなりました。

大牟田ラーメンの元祖といえば、駅前にある東洋軒のようです。

私が入ったのは福龍軒。東洋軒で修業された方が唱和38年に開いた店だそうです。
東洋軒よりもとんこつスープの味がやさしめのようなのでこちらにしました。
私は昔は家系ラーメン(とんこつ醤油)が好きだったのですが、年をとってからは、家系ラーメンの濃厚こってりなラーメンを最後まで食べるのがツラくなりました。

福龍軒のとんこつスープは大丈夫だろうか、と少し心配してましたが、、、美味い!
くどくなくまろやかで、スープも全部飲んで完食しました!福龍軒、オススメです。
さて以上で私の大牟田レポートは終了です。
以下は私の個人的な旅の続きとなります。
今回大牟田探訪にあたり、どうしてもついでに行きたいところがありました。
それが熊本県荒尾市にある「宮崎兄弟資料館」です。
荒尾は大牟田の隣り駅です。

私は宮崎滔天(とうてん)(明治3年~大正11年)に興味を持ち、伝記を何冊が読みました。宮崎滔天は、中国最初の共和制の創始者であり「中国革命の父」と呼ばれる孫文を支援した社会運動家です(革命浪人という言い方の方が似合っています)。宮崎滔天は浪曲の中興の祖と言われている桃中軒雲右衛門に弟子入りし桃中軒牛衛門という芸名を持ったこともあります。ですから大衆演芸にもゆかりにのある人物です。

宮崎滔天の生家は荒尾にあり、その敷地内には資料館が建っています。
東京からこの資料館を訪れる者は珍しいらしく、資料館の方2名が懇切丁寧に解説をしてくれました。コーヒーまで出していただきました。

孫文は荒尾の滔天の家を訪ねたこともあります。滔天は英語も中国語も堪能ではなかったため、二人は漢文での筆談にて会話していました。その時の様子を復元した人形が展示してありました。
ちなみに、劇作家の宮本研が宮崎滔天を主人公とした戯曲「夢、桃中軒牛衛門の」を書いています。初演は1976年の文学座です。最近では2022年に流山児事務所が「夢、桃中軒牛衛門の」を上演し、私も観に行きました。資料館の方によると、近いうちにこの演劇を荒尾でもやる予定だとのことでした。
* * *
以上、個人的に満喫した大牟田・荒尾の旅レポートを終わります。
(2023年5月探訪)
大牟田(おおむた)市は福岡県の最南端にある市。熊本県の荒尾市と接しています。
2023年5月、私はJR鹿児島本線に乗って大牟田駅に降り立ちました。

駅のホームで私を迎えてくれたのは、大きな黒い石。
「燃える石のふるさと
三井石炭鉱業株式会社 三池鉱業所
三井鉱山株式会社 三池港務所」
と書かれています。
そう、大牟田はかつて石炭で栄えていた都市なのです。大牟田の石炭化学工業を支えていたのは三井三池炭鉱。1959(昭和34)年には人口のピークを迎えましたが1997(平成9)年に炭鉱は閉山しました。現在はピークの頃より人口が半減してしまいました。

駅を出ますと、
「世界遺産のまち 大牟田へようこそ」
と書かれた柱が立っていました。
2015年に「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録されました。
当該遺産は8県11市にまたがる資産により形成されており、そのひとつが三池炭鉱と三池港になります。
かつて囚人が重労働を強いられた宮原坑など数多くの産業遺産が大牟田市に点在しています。くわしくは大牟田の近代化産業遺産ウェブサイトへ。

かつての大牟田は日本の花形産業の本拠地として大いに栄えていたことでしょう。旅芝居や浪曲をかける小屋もいくつかあったに違いありません。エネルギー革命が起き、石炭産業が日本から消えて以来、大牟田の町が衰退の一途をたどったことは想像に難くありません。私はかつての繁華街と思われるエリア、大牟田駅~西鉄新栄町界隈を散歩しました。ゴーストタウンのような商店街もあり、かつて栄華を誇った街とは思えないさびれよう。今後高齢化が進みいっそう街はさみしくなってゆくのでしょう。

さて今回目指す大衆演劇場は、大牟田駅からだいぶ離れた郊外にあります。
大牟田駅から送迎バスが出ているとのことですが、私の旅のスケジュールと合わなかったためタクシーで行くこととしました。タクシーの運転手さんによると、大牟田駅近くにはデパートが2つあったが20年くらい前にどちらもつぶれてしまったとのこと。
約10分、1,440円で目的地に着きました。

ここが、「大牟田天然温泉 最高の湯」という健康ランド。この施設に併設して、今回の取材先である「大牟田 楽笑演劇殿」があります。

駐車場のまわりには楽笑演劇殿関連の幟がたくさん立っていました。
写真はそのうちのひとつ。
「ユーチューブ 楽笑チャンネル 登録・高評価よそしくネ!」と書かれています。

最高の湯の入口

入口横に大衆演劇関係の掲示板がありました。
「まだ観たことない方!!チャンス」
「毎月第一金曜日千円キャッシュバックデー(入浴付)観劇入浴料二千円のところ劇場受付にて千円キャッシュバックします」
と書かれています。

入口に入りますと券売機が見えます。こちらで入館チケットを買ってその先の総合受付で渡します。

券売機
入浴料だけだと大人900円(会員700円)です。
観劇入浴券(2000円)のボタンは下の方にあります。

靴は下足箱へ
大衆演劇場「大牟田楽笑演劇殿」が開場する前まで最高の湯の施設を確認しましょう。

大浴場入口
たくさんの種類のお風呂がありました。露天風呂も広い。もちろんサウナと水風呂もあります。温泉施設としては文句ないですね。

もちろん食堂もあります。

フィットネスジムがあるのが珍しいですね。
いまフィットネスジムが流行ってますから、今後ジムを併設した健康ランドは増えてゆく気がします。

いよいよ大衆演劇場へ。
こうして劇団員の写真と名前を掲示するのってよいですよね。
その下に本日の演目等が筆で書かれています。
「3時間たっぷり楽しめます!」
「毎日お芝居・舞踊ショー♬変わります!毎日楽しめます☺」
大衆演劇になじみのない方に興味を持ってもらおうと、心をこめて宣伝していることが伝わってきます。
また、この筆文字の筆跡から久留米の楽笑演劇殿のスタッフが大牟田の楽笑演劇殿のメインスタッフをやっていることが想像されます。

楽笑演劇殿へ向かう渡り廊下

楽笑演劇殿入口。開場時間になるとこの扉が開きます。ですから開場時間前にはこの扉の前でお客さんが並んでいます。
・昼の部 開場11:30~ 開演12:30~
・夜の部 開場17:00~ 開演17:30~
11:30に扉が開きました。この扉入ってすぐ左手に受付があります。

大牟田楽笑演劇殿場内後方より

客席から後方を見たところ。
前方は座椅子席、後方は椅子席。

開場後、お客さんは自分の席を確保(ペットボトルなどを置く)するといなくなりました。きっとお風呂に行っているのでしょう。

後方の椅子

前方

中央にせり出し舞台があります。

花道は小さめ

受付前ではお菓子、ゆで卵、チューハイ、ハイボールなどを売っています。
12:30昼の部が開演しました。
第一部 お芝居
第二部 舞踊ショー
一部が終わった後、スタッフの方が場内をまわってクレープを売り歩いていました。売り子さんのいる芝居小屋の光景は私は好きです。

舞踊ショーの様子

この日は大牟田警察署防犯課の方が啓発活動に来ていました。
公演終演後の口上の時間を借りてお客さんにニセ電話詐欺に注意するよう、劇団員と一緒に呼びかけていました。大牟田市内でも高齢者が被害に遭っているそうです。

廊下での送り出し。
警察の方はいろいろとグッズの入った袋をお客さんに渡していました。
さて、このように温泉施設と大衆演劇場が合体したいわゆる「センター」としてはとてもよい場所だと思いますが、弱点がないわけではありません。
それは駅からの遠さと送迎車の本数の少なさ。

この写真のように、駅からの送迎車も最高の湯からの送迎車も1日に4本しかありません。せっかくのんびり過ごせる施設なのですから、もっと時間を気にせずくつろぎたいですね。なので私は帰りもタクシーを利用してしまいました。
大牟田に取材に来た私に課せられたもう一つの課題が、夕食に何を食べるかです。せっかく大牟田に来たのならこれを食べよう、というものがどうも見つからない。
お隣熊本県の名産の鶏「天草大王」を食べられる店があり、そこにしようかとも思いましたが、結局は大牟田ラーメンをいただくこととなりました。

大牟田ラーメンの元祖といえば、駅前にある東洋軒のようです。

私が入ったのは福龍軒。東洋軒で修業された方が唱和38年に開いた店だそうです。
東洋軒よりもとんこつスープの味がやさしめのようなのでこちらにしました。
私は昔は家系ラーメン(とんこつ醤油)が好きだったのですが、年をとってからは、家系ラーメンの濃厚こってりなラーメンを最後まで食べるのがツラくなりました。

福龍軒のとんこつスープは大丈夫だろうか、と少し心配してましたが、、、美味い!
くどくなくまろやかで、スープも全部飲んで完食しました!福龍軒、オススメです。
さて以上で私の大牟田レポートは終了です。
以下は私の個人的な旅の続きとなります。
今回大牟田探訪にあたり、どうしてもついでに行きたいところがありました。
それが熊本県荒尾市にある「宮崎兄弟資料館」です。
荒尾は大牟田の隣り駅です。

私は宮崎滔天(とうてん)(明治3年~大正11年)に興味を持ち、伝記を何冊が読みました。宮崎滔天は、中国最初の共和制の創始者であり「中国革命の父」と呼ばれる孫文を支援した社会運動家です(革命浪人という言い方の方が似合っています)。宮崎滔天は浪曲の中興の祖と言われている桃中軒雲右衛門に弟子入りし桃中軒牛衛門という芸名を持ったこともあります。ですから大衆演芸にもゆかりにのある人物です。

宮崎滔天の生家は荒尾にあり、その敷地内には資料館が建っています。
東京からこの資料館を訪れる者は珍しいらしく、資料館の方2名が懇切丁寧に解説をしてくれました。コーヒーまで出していただきました。

孫文は荒尾の滔天の家を訪ねたこともあります。滔天は英語も中国語も堪能ではなかったため、二人は漢文での筆談にて会話していました。その時の様子を復元した人形が展示してありました。
ちなみに、劇作家の宮本研が宮崎滔天を主人公とした戯曲「夢、桃中軒牛衛門の」を書いています。初演は1976年の文学座です。最近では2022年に流山児事務所が「夢、桃中軒牛衛門の」を上演し、私も観に行きました。資料館の方によると、近いうちにこの演劇を荒尾でもやる予定だとのことでした。
* * *
以上、個人的に満喫した大牟田・荒尾の旅レポートを終わります。
(2023年5月探訪)