これぞアットホーム 地元密着型の劇団縁の専用劇場 「劇場縁」
これぞアットホーム 地元密着型の劇団縁の専用劇場 「劇場縁」
大衆演劇の劇団はほぼすべてが旅芝居、つまり毎月全国の劇場を転々と渡りあるく形態をとっていいますが、自らの拠点を構えて地域密着型で活動している劇団もあります。
劇団縁は長谷竜也座長が2018年に旗揚げした劇団。当初は一般的な大衆演劇劇団同様、旅芝居の一座として活動していましたが、2022年3月に長崎県に自前の劇場「劇場縁」をオープンし劇団の根城としました。

劇場縁があるのは、長崎県の大村湾の北側。2021年度にオープンした大衆演芸場美山と同じく、JR大村線の沿線にあります。
2022年6月、私は劇場縁探訪の旅に出ました。

劇場縁の最寄駅、川棚(かわたな)駅に到着しました。
開演時間までまだだいぶ時間が早いですが、劇場の場所を下見しておくことにします。

川棚駅から徒歩5分、劇場縁に到着しました。
なんと入口には「休演日」の札が立てかけてあります。
ガーン。せっかく東京から来たのに休演日とは。

意気消沈。しかしせっかくここまで来たのだから長崎らしい食事でもしておこう。地元では評判らしい「優(まさる)」という中華料理店へ。劇場縁のすぐ近くにあります。

この店の名物らしい皿うどん(太麺)をいただきました。美味しかった!
食事の後、念のためもう一度劇場縁の前に行ってみました。
建物の1階では小犬を飼っているらしく、私を見つけた犬は激しく吠えたてました。その声を聞いて劇団員の一人が2階から降りてきました。
私が「今日は休演日なんですか?」と尋ねると、
その劇団員は事も無げに「いや、やりますよ」と言って、『休演日』と書かれた板をクルッとひっくり返して『開演中』に変えました。
(ちなみにまだ開場時間にはなっていない)

ズコッと拍子抜けした私。公演日なのに『休演日』の看板掲げておくの紛らわしいからやめてほしいわ、と心の中でつっこみつつ、まあいいや観劇できるのでよかった、と胸をなでおろしたのでした。

開場時間が近づきますと、劇団員の方が劇場前に幟を立てかけ始めました。

劇場の建物正面

開場時間になると、劇団縁の長谷竜也座長も建物入口に現れました。
私が東京から訪ねてきたことを伝えると、座長はとても驚いていました。僕も東京にいて歌舞伎町で花魁ショーの店をやってたことあるんですよ、と言っていました。東京で店を開いたり専用の劇場を作ったり、長谷竜也座長はとてもアクティブな方ですね。

劇場は2階です。
階段を上ります。

階段の途中にあった劇団員連名板

2階の劇場縁入口

劇場内から劇場入口をみたところ
入口入ってすぎ右手に靴箱があります。ここに靴を収納します。
入口入って左手が受付カウンター。ここで木戸銭を支払います。当日券1300円。安い。
受付カウンターの横には冷蔵庫があります。冷蔵庫には販売用の飲料が入っています。

劇場内左後方より。
左手に見える暖簾の奥がお手洗いです。

劇場内前方

舞台前から後方を見たところ
舞台中央から飛び出し花道があります。

客席左サイドにも花道があります。

右前方にはカラオケセットがありました。
劇団twitterによると、毎週金曜日はカラオケ大会で芝居はなく、お客さまが歌う歌にあわせて役者がバックで踊るというイベントをやるそうです。

冷蔵庫の飲料の販売はセルフサービス。
冷蔵庫の上には100円のおむすびも置いてありました。
集まったお客さんはもうほとんどが顔見知りなのでしょうか。
開演までの時間にあちこち移動したりおしゃべりしたりしています。
子供連れのお客さんもいます。
なんてのどかな雰囲気。いいなあこういうの。
13時に開演
第一部はお芝居。
劇団縁の連名表によると劇団員は10名。そのうち6名は子役。
大人の4名のうち1名は昨年入ったばかりの若手新人。
つまり役者として十分なキャリアを持っているのは、現在のところ、長谷竜也座長、長谷圭之介花形、それに女優の長谷萌の3人だけということになります。
なので劇団縁の芝居は子役や新人が大活躍。
まだ小学生11歳の長谷薔薇(ろーず)が一家に草鞋を脱ぐ浪人役。もっとちっちゃい子供は一家の子分役。昨年11月に入団した長谷昇竜20歳が一家の親分と一家の二代目の二役という重役を任されていました。そしてお芝居中には舞台裏から赤ん坊の泣き声。なんともアットホームな公演です。会場には地方の地元密着型劇場ならではのゆるく心地よい雰囲気があります。お客さんは子役や若手の活躍を包み込むように見守ってくれる。
お芝居が終わると座長の口上挨拶。
休憩をはさんで第2部舞踊ショーが始まりました。

長谷竜也座長

長谷竜也座長の女形

公演中の様子。
ここではペンライト文化があって、舞踊ショーでは舞踊・歌謡にかかわらず、お客さんがペンライトを振ります。

終演後の座長の挨拶

終演後は建物出入口で座員がお見送り。
記念に写真を撮りました。左から若手長谷昇竜、花形長谷圭之介、座長長谷竜也。
私はこれまで劇団専用劇場としては、すわん江戸村、船生かぶき村、南ファミリー劇団などを見てきました。どこも特徴は大衆演芸が行われることが少ないだろう地方にぽつりとあることとそのアットホームさですね。劇場縁は規模が小さくよりアットホームさが感じられる劇場です。
戦後になって旅芝居は大衆演劇と呼ばれるようになりました。
この「大衆」という語には「一般大衆」という語もあるように、かなり大規模な庶民群のイメージがあります。
劇場縁の客層イメージはもっとミクロです。いつも顔を合わせている奥さんたちが井戸端で会話している、そんな普段の生活の延長に芝居見物がある、ぐらいのゆるさを感じます。市井の暮らしに寄り添った「市井演劇」とでも呼んでみたくなります。
長崎県の地方の町につつましく存在している市井演劇。
こういう文化が日本に息づいていることがうれしくなりますね。
劇場縁はまだできたばかり。今後地元の方々にもっと愛されて賑わってゆくことを願っています。
(2022年6月探訪)
大衆演劇の劇団はほぼすべてが旅芝居、つまり毎月全国の劇場を転々と渡りあるく形態をとっていいますが、自らの拠点を構えて地域密着型で活動している劇団もあります。
劇団縁は長谷竜也座長が2018年に旗揚げした劇団。当初は一般的な大衆演劇劇団同様、旅芝居の一座として活動していましたが、2022年3月に長崎県に自前の劇場「劇場縁」をオープンし劇団の根城としました。

劇場縁があるのは、長崎県の大村湾の北側。2021年度にオープンした大衆演芸場美山と同じく、JR大村線の沿線にあります。
2022年6月、私は劇場縁探訪の旅に出ました。

劇場縁の最寄駅、川棚(かわたな)駅に到着しました。
開演時間までまだだいぶ時間が早いですが、劇場の場所を下見しておくことにします。

川棚駅から徒歩5分、劇場縁に到着しました。
なんと入口には「休演日」の札が立てかけてあります。
ガーン。せっかく東京から来たのに休演日とは。

意気消沈。しかしせっかくここまで来たのだから長崎らしい食事でもしておこう。地元では評判らしい「優(まさる)」という中華料理店へ。劇場縁のすぐ近くにあります。

この店の名物らしい皿うどん(太麺)をいただきました。美味しかった!
食事の後、念のためもう一度劇場縁の前に行ってみました。
建物の1階では小犬を飼っているらしく、私を見つけた犬は激しく吠えたてました。その声を聞いて劇団員の一人が2階から降りてきました。
私が「今日は休演日なんですか?」と尋ねると、
その劇団員は事も無げに「いや、やりますよ」と言って、『休演日』と書かれた板をクルッとひっくり返して『開演中』に変えました。
(ちなみにまだ開場時間にはなっていない)

ズコッと拍子抜けした私。公演日なのに『休演日』の看板掲げておくの紛らわしいからやめてほしいわ、と心の中でつっこみつつ、まあいいや観劇できるのでよかった、と胸をなでおろしたのでした。

開場時間が近づきますと、劇団員の方が劇場前に幟を立てかけ始めました。

劇場の建物正面

開場時間になると、劇団縁の長谷竜也座長も建物入口に現れました。
私が東京から訪ねてきたことを伝えると、座長はとても驚いていました。僕も東京にいて歌舞伎町で花魁ショーの店をやってたことあるんですよ、と言っていました。東京で店を開いたり専用の劇場を作ったり、長谷竜也座長はとてもアクティブな方ですね。

劇場は2階です。
階段を上ります。

階段の途中にあった劇団員連名板

2階の劇場縁入口

劇場内から劇場入口をみたところ
入口入ってすぎ右手に靴箱があります。ここに靴を収納します。
入口入って左手が受付カウンター。ここで木戸銭を支払います。当日券1300円。安い。
受付カウンターの横には冷蔵庫があります。冷蔵庫には販売用の飲料が入っています。

劇場内左後方より。
左手に見える暖簾の奥がお手洗いです。

劇場内前方

舞台前から後方を見たところ
舞台中央から飛び出し花道があります。

客席左サイドにも花道があります。

右前方にはカラオケセットがありました。
劇団twitterによると、毎週金曜日はカラオケ大会で芝居はなく、お客さまが歌う歌にあわせて役者がバックで踊るというイベントをやるそうです。

冷蔵庫の飲料の販売はセルフサービス。
冷蔵庫の上には100円のおむすびも置いてありました。
集まったお客さんはもうほとんどが顔見知りなのでしょうか。
開演までの時間にあちこち移動したりおしゃべりしたりしています。
子供連れのお客さんもいます。
なんてのどかな雰囲気。いいなあこういうの。
13時に開演
第一部はお芝居。
劇団縁の連名表によると劇団員は10名。そのうち6名は子役。
大人の4名のうち1名は昨年入ったばかりの若手新人。
つまり役者として十分なキャリアを持っているのは、現在のところ、長谷竜也座長、長谷圭之介花形、それに女優の長谷萌の3人だけということになります。
なので劇団縁の芝居は子役や新人が大活躍。
まだ小学生11歳の長谷薔薇(ろーず)が一家に草鞋を脱ぐ浪人役。もっとちっちゃい子供は一家の子分役。昨年11月に入団した長谷昇竜20歳が一家の親分と一家の二代目の二役という重役を任されていました。そしてお芝居中には舞台裏から赤ん坊の泣き声。なんともアットホームな公演です。会場には地方の地元密着型劇場ならではのゆるく心地よい雰囲気があります。お客さんは子役や若手の活躍を包み込むように見守ってくれる。
お芝居が終わると座長の口上挨拶。
休憩をはさんで第2部舞踊ショーが始まりました。

長谷竜也座長

長谷竜也座長の女形

公演中の様子。
ここではペンライト文化があって、舞踊ショーでは舞踊・歌謡にかかわらず、お客さんがペンライトを振ります。

終演後の座長の挨拶

終演後は建物出入口で座員がお見送り。
記念に写真を撮りました。左から若手長谷昇竜、花形長谷圭之介、座長長谷竜也。
私はこれまで劇団専用劇場としては、すわん江戸村、船生かぶき村、南ファミリー劇団などを見てきました。どこも特徴は大衆演芸が行われることが少ないだろう地方にぽつりとあることとそのアットホームさですね。劇場縁は規模が小さくよりアットホームさが感じられる劇場です。
戦後になって旅芝居は大衆演劇と呼ばれるようになりました。
この「大衆」という語には「一般大衆」という語もあるように、かなり大規模な庶民群のイメージがあります。
劇場縁の客層イメージはもっとミクロです。いつも顔を合わせている奥さんたちが井戸端で会話している、そんな普段の生活の延長に芝居見物がある、ぐらいのゆるさを感じます。市井の暮らしに寄り添った「市井演劇」とでも呼んでみたくなります。
長崎県の地方の町につつましく存在している市井演劇。
こういう文化が日本に息づいていることがうれしくなりますね。
劇場縁はまだできたばかり。今後地元の方々にもっと愛されて賑わってゆくことを願っています。
(2022年6月探訪)