WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 福島・芦ノ牧プリンスホテル
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福島県の山の中 静かな冬の温泉街で観た旅芝居 「芦ノ牧プリンスホテル」

福島県の山の中 静かな冬の温泉街で観た旅芝居 「芦ノ牧プリンスホテル」

今回は福島県の芦ノ牧温泉での旅芝居公演の探訪記です。

芦ノ牧温泉は会津若松から南方へ車で30分ほどの山間いの地にある温泉街です。日本海に注ぐ阿賀野川の遠い上流にあたる大川が芦ノ牧温泉街を囲むように壮大な渓谷を形成しています。

温泉地としての歴史は古いですが、交通の不便さ故、長い年月近隣地域の湯治場として利用される秘湯でした。
昭和40年代から観光温泉地として発展していったようです。

昭和30年代から全国の旅芝居の芝居小屋は大変な勢いで姿を消してゆきました。観光温泉地は活動場に窮した劇団の受け皿となったことでしょう。今回観劇した劇団三ツ矢の三ツ矢洋次郎座長は、かつては芦ノ牧温泉に5か所くらい公演地があったとおっしゃっていました。

会津若松市のサイトで芦ノ牧温泉の観光施設利用者数データを確認しました。
1992年(平成 4) 538,807人
2019年(平成31) 230,764人

二十数年で半数以下になってしまいました。2011年の原発事故の年には風評被害でかなり落ち込み、その後大きく回復することができなかったようです。2020年はコロナ禍によりさらに深刻な状況となっているでしょう。

私が探訪したのはコロナ禍前の2019年2月。その探訪記をレポートします。

* * *

今回目指すのは芦ノ牧温泉街にある芦ノ牧プリンスホテル。
ここでは年にひと月かふた月大衆演劇公演が行われています。
公演は午前中に開演します。ですから東京を朝出発して、芦ノ牧温泉での公演に間に合わせるのは難しい。
私は前日郡山入りしていました。

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9:52郡山発会津若松行きのJR磐越西線に乗ります。

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会津若松駅で乗り換え。
9:19会津若松発リレー号に乗ります。
これに乗ると9:40に芦ノ牧温泉駅に到着します。

リレー号は、会津若松-西若松のJR区間から西若松-会津田島の会津鉄道区間をリレーするように運行する列車です。

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私はJR区間の切符しか買っていなかったので、車内で会津鉄道区間の運賃の精算をしました。

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芦ノ牧温泉駅
ここから温泉街まではかなり遠い。
宿泊先に送迎を頼むかタクシーを使うかしないといけません。

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芦ノ牧温泉駅にはねこ駅長がいるそう。
過去には初代猫駅長がカメラのフラッシュ撮影で失明してしまったようです。かなり多くの観光客のカメラのフラッシュを受けたことでしょう。今はカメラ撮影自体が禁止されています。
今はもうない大衆演劇場で、フラッシュを使っての撮影をやめない客がいたからとのことで写真撮影自体禁止になっていたところがあったことを思い出しました。

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冬の芦ノ牧温泉街遠景
大型旅館がいくつも建っています。

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温泉街はとてもひっそりとしていました。
あちこちの景色に衰退しつつある温泉街の陰りを感じます。
芦ノ牧温泉劇場というストリップ小屋も長らく奇跡のように存在していましたがついに2018年に閉館となってしまいました。

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芦ノ牧プリンスホテル
本日はここで大衆演劇公演を観劇します。
温泉街には人影がほとんどなく、のぼりもなく、外見だけでは芝居が行われる雰囲気はありません。
いちおう正面入口上に「大好評 大衆芝居 公演中」と書かれた垂れ幕が吊ってあります。

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ホテルのロビー
正面入り口とフロントが見えています。
フロントで観劇受付をしました。

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ロビーの窓から大川荘が見えます。
探訪した際は大川荘でも大衆演劇公演が行われていました。
大川荘は内部が鬼滅の刃の無限城に似ているということで現在話題になっているようですね。

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食事会場兼大衆演劇場は2階

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2階廊下

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会場
お客さんがたくさん集まっていました。年齢層はかなり高い。
ほとんど老人会等の団体客でしょう。ミカンやお菓子を机に置いて歓談しています。
旅芝居地方公演場の風景、といったキャプションをつけて何かの雑誌に載せたいくらいいい風景です。

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畳、低い長机、座布団。味わいのトライアングル、申し分ありません。


芦ノ牧プリンスホテルの大衆演劇公演は1日1回。
それも午前の10時30分から始まります。

会津若松周辺の大衆演劇場の開演時間をまとめてみましょう。
・芦ノ牧プリンスホテル 10時30分
・大川荘(芦ノ牧温泉) 10時
・ホテルふじや(喜多方)10時

ホテル公演では午前中開演はよくあります。宿泊客がチェックアウト後に時間のロスなく観劇できます。
会津若松周辺の旅芝居観劇文化も「午前に観劇」で定着しているのでしょう。

2019年の芦ノ牧プリンスホテルの旅芝居公演は2月だけ。
公演を任されているのは三ツ矢洋次郎率いる劇団三ツ矢。
私も妻も洋次郎座長ファン。劇団三ツ矢は劇団に伝わる昔ながらの芝居を大事にしているのが好きです。

10:30第一部お芝居開演。
この日の芝居は、劇団三ツ矢定番の「廻る人生」。
会場は和気あいあいとしていています。芝居中に老人がつぶやいたりするのも、このような公演会場の場合は場の和みになります。ユルい客席に呼応して芝居前半はユルユルで進行。役者のアドリブに客席はよく反応して、舞台と客席の空間全体が和やかな雰囲気に包まれます。後半は洋次郎座長がシリアスに締めました。

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11:30に第一部お芝居が終わって口上挨拶。

洋次郎座長は、父親も芦ノ牧温泉で公演をしたことがあり、自分は32年ぶりに芦ノ牧に乗ったと言っていました。

なんと洋次郎座長は前日に私のホームグラウンドである川崎大島劇場でゲスト出演して、先ほど芦ノ牧温泉に戻って来たばかりとのこと。

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ツイッターを見ると、前日に洋次郎座長が、芦ノ牧から川崎に向かう途中の大宮でツイートしていました。
会津若松駅-芦ノ牧温泉間で車を使えば、早朝に東京を出て10時頃芦ノ牧温泉に着くことができるのですね。

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口上挨拶の後は昼食の時間。

ここでは日替わりの軽食があり、うどん、そば、玉子丼が600円とのことでした。多くのお客さんはうどんを食べていました。
私は1100円の弁当を予約していました。
弁当配膳後スタッフに追加でビールを注文しました。伝票のようなものがないので、どのように支払えばよいか尋ねると、帰りにフロントに声をかけて払ってくださいとのこと。いいですねこのゆるさ。

12:30第二部 舞踊ショー開演
福島や新潟の公演地は、芝居60分+舞踊ショー45分の105分構成であることが多い。

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公演中の様子。洋次郎座長の女形。

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三ツ矢洋次郎座長

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劇団三ツ矢に特別出演中の北条嵐さん。
本気で芝居したら凄いのだけれど、たいてい力を抜いた見てて疲れない演技をしてくれます。この日の芝居の前半のようなユルユル芝居はまさにお手のもの。

13:15公演が終了しました。団体のお客さんが帰ってゆきます。

私もビール代を支払ってホテルを出ます。
先ほどの公演会場の賑わいが嘘のように、芦ノ牧温泉街は静かでうら寂しい。

逆に言えば全国各地にあるうら寂しい町に、つかの間の夢のような世界をもたらすことができるのが旅芝居。
地方巡業専門の旅芝居興行師という職業は成立するだろうか、などと私は想像上の職業を夢想し憧れるのでした。

(2019年2月探訪)


プロフィール

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Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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