WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 和歌山・みさきスタジオ
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臨海地区の片隅にあった夢の小箱の記録 「みさきスタジオ」

臨海地区の片隅にあった夢の小箱の記録 「みさきスタジオ」

劇団あやめのおっかけで和歌山県にある大衆演劇場「みさきスタジオ」を訪ねることにしました。

みさきスタジオは新宮市にあります。
公演は昼の部のみ。12時開演。

電車検索してみますと、
仮に東京始発の新幹線に乗ったとしても、みさきスタジオの最寄り駅に到着するのは13時18分。
全然間に合わない・・・

私は前日夜から夜行バスで新宮に向かうことにしました。
初めての夜行バスでの大衆演劇遠征です。

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前日夜、バスタ新宿で新宮行きの長距離バスに乗り込む。

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翌朝7時頃新宮駅に着きました。
予想通り、バスの中ではほとんど寝られなかった・・・

最近の長距離バスは、各座席がセパレートされているのですね。
2人並びの席だと隣の方に気を使わなくてはいけないけれど、1人席で自分の席用のカーテンもあり気疲れはしませんでした。

みさきスタジオは新宮市にありますが、新宮市街にあるわけではありません。
みさきスタジオの場所を確認しておきましょう。

以下は新宮駅前で撮った地図の写真。
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新宮駅からJR紀勢本線で南へ2駅離れた紀伊佐野駅がみさきスタジオの最寄り駅です。
そして、新宮駅から紀伊佐野駅に行く電車は1,2時間に1本しかない・・・
新宮駅を出て紀伊佐野駅にお昼頃に到着する電車の時刻は、
11時33分、次に13時18分です。
みさきスタジオの開演時間が12時と昼の部にしては早めなのはこの時刻表を意識してのことかもしれません。
11時33分着の電車に乗れば昼の部に間に合います。

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新宮市のとなり駅の三輪崎駅と、紀伊佐野駅周辺の地図です。
ごらんのとおり、みさきスタジオは港湾地帯にあります。

後述しますが、
「何故こんなところに大衆演劇場が・・・?」という謎立地度が極めて高い場所にあります。

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JR紀勢本線の車内。
扉に津波対策が大きく表示されています。
時間があったので三輪崎駅から紀伊佐野駅まで散歩しましたが、町中には海抜表示が目立ち、南海トラフ地震に対する防災意識がとても強いことが伝わってきました。

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紀伊佐野駅
のどかな雰囲気の無人駅

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駅から少し歩くと国道に出ます。
国道の東側は住宅地ではなく、緑地帯や企業の敷地が連なる港湾地帯。
民家や生活と関連した商業施設はない。
比較的大きな企業の構造物が見える中、遠くから見るとマッチ箱のような緑色の建物がある。

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それがみさきスタジオ。

私はこれまで数多くの大衆演劇場を訪ね、「こんなところに劇場が?」と思ったことはしばしばあります。その多くはノスタルジーを感じる昔ながらの風景(自然や田んぼなど)の中にありました。
みさきスタジオがある一帯はあまりに大衆の生活の息吹に乏しい。

ただ、緑色に塗られた小箱のような建物は、まわりの風景から独立した存在感を放っており、この「何か謎めいた興味をそそられる味わい」は大衆演劇場的ともいえます。

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みさきスタジオ正面

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普通の家の玄関みたいな入口。
本当にここで大衆演劇が行われているのだろうか?
と思いつつよく見ると、

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どうやら本当に

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営業しているようだ。

黒い扉の奥に白い扉。それを開けていよいよスタジオの中へ。

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みさきスタジオ内部

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このような半月の形のテーブルが並んでいる。

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出入り扉近く、客席左後方に投光

客席後方のバーカウンターのようなスペースに小屋主らしきおばちゃんがいました。
木戸銭を支払うと、空腹だった私はここで軽食を販売していないか尋ねました。
ここでは飲食物は販売しておらずお客さんは皆持ち込みをしているとのこと。
近くにコンビにか何かないかと尋ねると、駅の方に大きなスーパーがあるが、ここからはちょっと距離があるという。
おばちゃんは私に自転車を貸すために、どこかで作業していた旦那さんを呼び寄せました。
みさきスタジオはこの老夫婦が細々と経営しているらしい。

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みさきスタジオで借りた自転車に乗ってスーパーへ

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オークワという大きなショッピングモールに到着。
あれこれとカゴに入れてレジに行くと、レジは激混み。
この列を待っていては開演に間に合わないと判断し、カゴの中の商品を棚に戻して、スーパー内のパン屋さんでパンを買いました。

みさきスタジオに戻る。
小屋主?のおじさんに聞くと、以前は昼に大衆演劇、夜にカラオケホールという経営をしていたが、カラオケホールは著作権料の支払いの負担が大きくやってられないので、大衆演劇のみにしたとのこと。
カラオケホールというのはおそらく、歌う仲間達で個室を借り切るカラオケボックスとは違い、他の見知らぬお客さんと一緒に集いステージ上でカラオケを歌う形態なのだろう。関西の方に多いのでしょうか。
「みさきスタジオ」という名前はカラオケホールを意識した屋号だったのですね。

12:00劇団あやめの公演が始まりました。
劇団あやめは公演中の写真撮影はNGなので公演の様子はご紹介できません。

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休憩時間に劇団が販売していたお菓子セット(300円)を買いました。
お客さんは多くなかったけれども、ご祝儀レイを求めるお客さんの割合は多かったです。

終演後、小屋主のマスターに声をかけられました。
紀伊佐野駅から出る電車の本数は少ない。新宮駅行きのバスは本数が多い。バス停まで車で送迎しますよ。とのことでした。

スタジオの外に出ると、劇団あやめのメンバーがお見送り。その横に車が待機していました。
車にはすでに一人お客さんが乗っていました。この方はみさきスタジオの常連さんのよう。スタジオのマスターはこのお客さんのために行きと帰りに勝浦まで送迎しているそう!勝浦はここから新宮駅よりも遠い。なんてサービス精神が大きいマスターなんでしょう。

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みさきスタジオの最寄のバス停ではなく、よりバス本数が多い三輪崎のバス停まで送迎してくれました。勝浦のお客さんにとっては逆方向で、遠回りの寄り道をしてくれた格好になります。
間もなくバスがやってきて新宮駅まで移動。

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思いがけず時間が空いたので、新宮駅近くにある「浮島の森」に寄りました。南北96m・東西55mの島が池に浮かんでいる。島が水より比重の軽い泥炭でできているので浮かぶのです。私は十数年ぶりに浮島に降り立ちました。


みさきスタジオは残念ながら2019年1月の公演をもって大衆演劇の公演をやめてしまいました。
あの人情味ある小屋主夫婦はその後どうされているのでしょうか。
大衆演劇場としての存在期間は、まるでつかの間の夢だったかのような短さです。
あの緑色の小箱はやがて誰の記憶からも消えてゆくのでしょう。
本ブログは、海の近くの人通りの少ない一角に夢のように現れて消えた演劇場のささやかな記録です。

(2018年11月探訪)

プロフィール

notarico

Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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