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かつて炭鉱で栄えた地に復活した旅芝居の文化 「見聞劇場」

大衆演劇場と寺社仏閣をめぐる旅<山口・福岡・大分編> 旅日記その⑥
かつて炭鉱で栄えた地に復活した旅芝居の文化 「見聞劇場」


旅の6日目の朝、杵築市の宿を出て宇佐神宮へ。

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宇佐神宮は全国八幡社の総本宮です。
八幡大神は応神天皇の御神霊です。憤死した天皇の怨霊をおそれて祀った神社はいくつかありますが、生涯をまっとうした天皇を祀っている神社は宇佐神宮と明治神宮ぐらいしか見当たらないそうです。
八幡さまに仏教が習合した結果、宇佐八幡宮の祭神は八幡大菩薩となり(明治の廃仏毀釈でその名号が禁止されました)、武士に厚く信仰されました。特に、源義家が自らを「八幡太郎義家」と名乗るなど源氏の氏神として有名です。

八幡大菩薩は、大衆演劇ファンにとっては、三波春夫「決闘!高田の馬場」の中の安兵衛のセリフ「南無や八幡大菩薩、この安兵衛が行き着くまでは叔父の身の上守らせ給え、ばあさん!水だ!水をくれ!」でおなじみですね。
高田馬場の史跡の近くに穴八幡宮という神社があり、ここに高田馬場で行われていたという流鏑馬の像があります。安兵衛が「南無や八幡大菩薩」と言うのはここに由来があるのでしょうか。

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宇佐神宮の敷地は広大。
駐車場から表参道に出るとみえる大鳥居がその入口です。

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宇佐神宮上宮
「二礼四拍手一礼」が宇佐神宮の作法。

宇佐神宮の次は福岡県田川郡にある大衆演劇場「見聞劇場」を目指します。
調べたところによると、72km・95分のドライブとなります。
今回の7日間の旅の一番のトラブルはこの道中でした。
なかなか見聞劇場にたどり着かない!

見聞劇場の最寄駅である豊前川崎駅まではスムーズに着きました。
ところが、事前にプリントアウトしてきたグーグルマップに表示されている「見聞劇場」がある場所に行っても劇場がな見あたらないのです(※現在はちゃんと表示されています)。なぜグーグルマップで、劇場が違う場所に表記されていたのかは謎です。
昼の部開演の時間が迫っていました。あせってカーナビに見聞劇場の住所を入力し、カーナビの指示に従って進みました。住宅地をずんずん進み変だなと思っているところ、カーナビが「目的地に到着しました」と発した場所に劇場らしきものはありません。住所を入力し間違えたかと思い、再度カーナビに案内を頼むと、また別の場所に誘導されました。そこに行っても何もない。どうもこのカーナビは、人にものを聞かれて、それがわからなかったとしても「わかりません」とは言わず、「ここなんじゃね」と思いついた場所を適当に答えてしまうラテン系の性格らしいことがわかりました。演劇グラフに載っている見聞劇場の住所はスマホの地図アプリではヒットしません。おそらくこのカーナビにも登録されていなかったのでしょう。それならば案内せずに「該当の住所は登録されていません」と答えればいいものを、似た感じの別の住所に案内するなん迷惑なカーナビ君だ。カーナビに愚痴を言っていても仕方ないのでスマホで調べたところ、見聞劇場のfacebookがヒットし、そこに略地図が載っているのを見つけ、難を脱しました。

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豊前川崎駅と平行して走っている国道を、川崎駅からみて下り(南東)方面に進むと左側に幟が見えてきます。ここが見聞劇場です。

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上の写真とは逆方向から見た見聞劇場。

田川郡に隣接している田川市には2012年頃炭都劇場という大衆演劇場があったようですが2年たらずで閉鎖してしまいました。炭都劇場の名のとおり、田川はかつて炭鉱で栄えた町です。福岡県の中央部から北部にかけて広がっていた筑豊炭田は戦前から戦後しばらくにかけて日本一の石炭資産量を誇っており、炭鉱労働者とその家族が多く住んでいました。芝居小屋もたくさんあったようです。飯塚市の嘉穂劇場もそのような背景からできた劇場です。
炭鉱が非常に栄えた田川は旅芝居が大変な賑わいを見せた場所だったことでしょう。しかし、炭鉱はすべて閉山し、人口は減少し、人々の娯楽から旅芝居もなくなってしまいました。ところが近年になって、炭都劇場そして見聞劇場と大衆演劇場ができました。かつてこの地で旅芝居に親しんだ地元の方が生活しているうちに、つまり芝居文化が残っているうちに、大衆演劇場が復活したのはとても意義深いと思います。

しかも見聞劇場が、敷地も建物も大衆演劇場単独用途であることはとても喜ばしい。

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平屋の建物の道路側に見聞劇場n出入口があります。

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入口入って右が受付、左が靴箱。

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見聞劇場場内。

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後方は椅子席
床はフラットなので、後方の席の方は相当見えにくいでしょう。

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前方は座布団席、、、ん?

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座布団が隙間なく埋めつくされているのだけれど、これ、座布団ひとつが一人分のスペースということ?
気になって受付に置いてあった座席予約表を見ましたがやはりそういうことらしい。

お客さんがたくさんはいったときには、本当にこの座布団にお客さんを詰めて座らせるのでしょうか。
ちょっと信じがたいですね。

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花道

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劇場は飲食物持ち込み禁止。
そのかわりうどんやそばなどの軽食がとれるところがあります。

この日の公演は劇団勇舞。
勇 羅庵嘩 総座長
中村 時太郎 座長
の親子座長が率いる劇団。

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中村時太郎座長。

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勇羅庵嘩総座長

勇羅庵嘩総座長と中村時太郎座長親子の芝居のセリフまわしはリズムとメロディが心地よい。
日本の大衆演芸ならではの話芸だと思います。

この日のラストショーは、おお、「決闘!高田馬場」だ!

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幕を破って登場する安兵衛。

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〽のり屋の婆さんが差し出した~ 手紙を開く中山安兵衛~♪
ちっちゃなちっちゃなばあさん。

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「南無や八幡大菩薩、この安兵衛が行き着くまでは叔父の身の上守らせ給え!」
高田馬場を目指し、宙飛ぶごとく駆けてゆく安兵衛

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村上一門をやっつけてフィナーレ

見聞劇場の昼の部が終わり、今宵の宿泊地博多へ向かいます。
途中飯塚市の嘉穂劇場に寄って見学しようかとも思いましたが、見学時間に間に合わないかもしれないのでやめました。

夕方博多に到着し、小倉で借りたレンタカーを返しました。

大陥没したという博多駅前の道路の様子を見に行って、
夜は博多天神に繰り出して飲みました。

旅の6日目が終わりました。明日は最終日です。
(つづく)
(2017年1月)

■大衆演劇場と寺社仏閣をめぐる旅<山口・福岡・大分編> 旅日記 もくじ
1日目:映画シアターも大衆演劇場もあるサービス多彩な健康ランド 「くだまつ健康パーク」
2日目:山に囲まれた歴史ある温泉地の巨大娯楽施設付ホテル 「湯本観光ホテル西京 夢遊湯亭」
3日目:大衆演劇の灯を絶やさないために・・・ 小倉にオープンした待望の劇場 「宝劇場」
4日目:福岡と大分の境にある広大な複合施設の中の劇場 「湯の迫温泉 ぶらり劇場」
5日目:神仏習合の里 国東半島旅行記
6日目:かつて炭鉱で栄えた地に復活した旅芝居の文化 「見聞劇場」
7日目:博多の大衆演劇と十日恵比須
プロフィール

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Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
twitterアカウント:notarico

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