WIKIレンタル 大衆演劇探訪記 奈良・やまと座
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日常に溶け込んだ大和国の芝居小屋 「やまと座」

子供の頃からデパートや観光地に置いてあるスタンプを集めるのが好きだった妻は、私が持っている御朱印帳を見つけて目を輝かして以来、神社仏閣を訪ねて御朱印をいただくのが趣味になった。歩くことも好きだから、秩父34観音霊場は何日もかけて徒歩メインで巡拝した。この秩父札所めぐりはもう2回行っており、この先も私たち夫婦の恒例行事となりそうだ。そんな妻が自然と「奈良か京都に行きたい」と漏らすようになったが、私には国内旅行となると大衆演劇観劇を結び付けようとする癖がついていた。

私も妻も大衆演劇は好きだけれども、好みの劇団や楽しみ方はだいぶ違う。私は芝居の方が好きだが妻は舞踊ショーの方が好き。私は他の大衆演劇ファンの方のブログを読むのが好きだけれども、妻はそういうものには全く興味がない。私のこのブログも一切読まない。気になる役者のブログはたまに見ているようだけれども。
もちろん私と妻の好みが一致することもよくある。なかでも「すごく好き」という意見が珍しく一致している劇団がある。それが「剣戟はる駒座倭組」。

倭組が奈良の「やまと座」に乗ると知って、私と妻は奈良観光&観劇旅行の計画を立てたのでした。

6:37品川発の新幹線に乗って関西へ。9:35近鉄奈良駅着。
興福寺を拝観。予約していたイタリアンでランチした後、東大寺~春日大社を巡る。
16時過ぎに近鉄奈良駅へ戻る。そこから鉄道で南下。大和八木駅で近鉄大阪線に乗り換え。17:30頃榛原駅着。

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榛原駅

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駅のロータリーから東方面の線路沿いに細い商店街があります。

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商店街の入口のファミリーマート前にやまと座の看板が。「前売り券取扱い店」と書いてあります。

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ファミリーマートで前売入場券を入手しました。

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しばらく歩きますと道路の左側にのぼりがたっている建物が見えました。ここが「やまと座」です。

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やまと座正面。
ものすごくまわりの風景にとけこんでいます。

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入口脇に本日の演目が掲げられていました。

建物のたたずまいから「庶民的」な劇場であることはすぐわかりましたが、その中に入ってそのことがより一層強く感じられました。

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やまと座には売店兼休憩所のようなスペースがあります。
誰かの家の居間におじゃましたかのような、文字通りアットホームな雰囲気。

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ソファーの置かれた喫煙室。
その手前にバナナ、すいか、パンなどが陳列され値札が添えられている。
なんとも独特な、けれども親しみを感じてしまう風景。

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劇場内には、受付すぐからも入れるし、売店経由でも入れる。

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ショーケースのなかの果物。
普通の劇場には、大衆演劇場ならではの一抹のシュールさを私はそこに嗅ぎ取ってしまう。

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売店のメニューも充実

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劇場と売店との連絡通路。
木の壁、ちょうちん、積まれたひざかけ、「やきいも」ののれん、この劇場のアイデンティティがつまっているような景色。
もし庶民的な芝居小屋を舞台とした映画を作るのであれば、美術スタッフさんはこの写真を参考にするとよい。

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劇場内

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広角で撮っているので写真ではひろびろと見えますが、実際には、芝居小屋らしい密な空気が心理的な距離を縮めているのか、「ナマの舞台」を肌で感じることのできる距離感におさまっていると思います。

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庶民的=簡素・質素、というイメージがありますが座席はさにあらず。
快適な座席。

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全国の座席系大衆演劇場の方々に参考にしてほしい、座席背板裏ポケット。これは便利。

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緞帳

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奈良らしく鹿が描かれてします。

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本格的な花道。すばらしい。

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予告演題の貼り出し

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近くの旅館と提携した観劇パックもあるようです。

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櫓のような投光所。
これも味わいがある。

さてお待ちかね剣戟はる駒座倭組の舞台が始まります。
大和の国のやまと座で倭座長の公演。
いかにも近所からやってきたという感じのおじいちゃん、おばあちゃんが客席に集まっています。

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いつも明るい不動倭座長とその一行。

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勝小虎と勝彪華(ひゅうが)
小虎さんは座長より7つも年上なのに若くみえる。

大好きな倭組の公演を満喫して、楽しい旅の1日がもうすぐ終わります。
電車で宿へ移動します。

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榛原駅ホームの待合室。地元の手芸クラブが寄付したと思われるクッション。この町の庶民的な雰囲気がここにも見てとれます。


最近は大衆演劇業界が危機に直面しているという声をよく聞きます。
どの劇団も、劇場もどうしたら集客力をつけられるかを考えていることでしょう。
そのひとつの方向性として、若い女性客だけをターゲットとした演出が多くなっているように思います。

おじいちゃんおばあちゃんが肩の力を抜いていて見られるような公演が、やまと座のような「日常」の雰囲気に満ちている劇場で行われる。
私はこれをもって、日本の大衆演劇の存続の要件としたい。そのために、どのような変化が必要なのか、一ファンとして常々考えています。そんな私にとって剣戟はる駒座倭組の登場は嬉しい衝撃でした。倭組は新しい時代の大衆演劇の可能性をいろいろ試している劇団だと思います。

大衆演劇においては、劇場は「観る場」である以前に日常の延長上にある「くつろぐ場」でなければならないと思っています。
やまと座での倭組の公演は私にとって印象深いものとなりました。

(2014年6月探訪)

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Author:notarico
東京在住。大衆芸能(大衆演劇、落語、浪曲、講談等)が好きです。特に大衆演劇の世界に興味をもっています。
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